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[kudos(クードス)デザイナー]工藤司 スペシャルインタビュー

[kudos(クードス)デザイナー]工藤司 スペシャルインタビュー

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祖母の影響でファッションに興味を持ち、大学卒業後は服づくりを学ぶため、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学し、その後はパリ、ロンドンでファッションを学んだ。フォトグラファーになるつもりで帰国したところ、服づくりをすすめられ、2017年に自身のブランドであるkudos(クードス)をスタート。デザイナーだけではなく、フォトグラファー、スタイリストとしても活動し、最近は出版レーベルも立ち上げた。そのクリエイティブに多方面から注目が集まるこの人にインタビュー。

工藤 司さん

FASHION DESIGNER

1987年、沖縄県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学。在学中にパリのジャックムスでデザインアシスタント、Y/プロジェクトではパターンアシスタントとして経験を積む。その後渡英し、JW アンダーソンのデザインアシスタントを経て、2017年に自身のブランドであるkudos(クードス)を立ち上げる。18年にはウィメンズラインにあたるsoduk(スドーク)をローンチ。20年には出版事業としてTSUKASA KUDO PUBLISHINGも始動。

毎日こんな格好して学校とか行きたくない

――洋服に興味を持ったきっかけはなんだったのですか?

 僕、沖縄出身なんですけど、沖縄って暑いので、あんまりファッションの文化とかないんですよ。そんな中でも、うちのおばあちゃんはオーダーメイドで洋服をつくるような人で、子どもの頃はおばあちゃんに連れられてよく仕立て屋さんに行っていたんです。最初は1枚の布だったのに、2か月後にはおばあちゃんにピッタリの服になっていることが子ども心にもすごく面白くて。そこから洋服に興味を持つようになったんですけど、僕自身が着たいというよりかは、姉に着せたりして遊ぶのが好きでしたね。

――スタイリングするほうが好きだったんですね。

 あの頃はそうでした。それで中学生になると学校では制服だけど、休みの日とかは私服になるじゃないですか。その格好を見て、「この人、こっちのほうが似合うのにな」とか「こういう服があったらいいのにな」って勝手に頭の中で考えたりしてました。高校生になると当時はスキニーが流行っていたので、制服のズボンをスリムにつくり替えたり、シャツを少しタイトにしてみたり、ちょっとした改造をしてましたね。


――高校卒業後は服飾系の学校ではなく、早稲田大学に進学します。これはどうしてですか?

 高校時代にアメリカに留学していて、そのときにアメリカのファッションの大学に進みたいなと思っていたんですけど、両親は日本の学校に進んでほしかったみたいで、一度帰ることにしたんです。それで文化服装学院のオープンキャンパスに見学に行ってみたら、なんかむちゃくちゃ派手な人がいっぱいいて、毎日こんな格好して学校とか行きたくないなと思ったんですよね(笑)。つくるのとか着せるのは好きだけど、自分へのおしゃれの関心度はあまりなくて、むしろすごくノーマルでいたいんです。だから、ここはちょっと無理だなと思って、早稲田にも有名な服飾サークルがあるのは知っていたので、べつに勉強も嫌いじゃないし、そっちに行くことにしたんです。でも、そのサークルも見学に行ったんですけど、結局入りませんでした。当時はあまり友達がいるタイプじゃなくて、誰かと一緒に何かをつくろうという気がなかったんですよね。

ヨーロッパで学び、帰国後なぜか即デビュー

――大学卒業後にベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学したのは、やはりファッションを本格的に勉強したくなったからですか?

 そうです。一応リクルートスーツとかも着て、就職活動もしたんですよ。集英社も受けました(笑)。でも、やっぱり服をつくりたいなと思って、大学を卒業して数か月ほど美術予備校みたいなところに通って、アントワープに入学しました。さっき言ったように、日本にいるときはあんまり友達がいるタイプではなかったんですけど、アントワープに行ったらなんかヘンな人たちがいっぱいいて、自分って超普通じゃんと思って、それがすごくうれしかったですね。友達もいっぱいできたし、自分の中でムダにとがっていた部分が取れていったような気がします。ただ、アントワープは1年で辞めちゃったんですよ。

――どうしてですか?

 アントワープはどちらかというとデザインのための学校で、それよりも僕は服をつくりたいなと思ったんです。なので、パリのパタンナーとメカニシャン(裁断・縫製の専門家)を養成する学校に入り直しました。デザイナーを諦めたというよりは、デザイナーとして足りてない部分がすごく明確になったので、前に進むために辞めたという感じです。手を動かすことで服をつくり上げるという工程を一度きちんと経験しなきゃいけないなと思ったんですよね。


――パリではどういう生活を送っていたんですか?

 JACQUEMUS(ジャックムス)というブランドがあって、そこがすごく好きだったので、インターンで働きたいって何回もメールを送って、5回目ぐらいのときにやっと返事が来て、採用してもらいました。その仕事が面白くて、特にパリコレのシーズンの直前とかは学校よりも全然学べることがありましたね。学校だと課題が終わらなくてもちょっと怒られるぐらいじゃないですか。でも、仕事だと明日までにこれが終わらなかったらショーに出せなくなるわけです。そのときは胃が痛かったけど、めちゃくちゃ楽しかったし、勉強になりましたね。あの頃のパリは、ジャックムスがあって、VETEMENTS(ヴェトモン)が出てきて、Y/PROJECT(ワイ・プロジェクト)もあって、スモールブランドのトレンドがメゾンに影響を与えるような状況が起き始めた頃だったので、いろんなことが刺激的だったし、そこで学んだものはものすごく大きいですね。

――自分のブランドをつくろうと思ったのはいつですか?

 そうやって僕が働いているときに、学校の友達はみんな卒業コレクションとかをつくって、評価されたりしているんですよね。その姿を見て落ち込んだというか、自分も何かつくらないといけないなと思って、仕事の合間とか週末にいろいろとつくり始めたんです。自分のブランドを立ち上げるぞということではなくて、パーソナルな卒業コレクションみたいな感じで、すべて自分で撮影してスタイリングしたんですけど、そのときに撮影した写真が自分でも気に入って、デザイナーじゃなくて、フォトグラファーになるのもいいかなって思ったんですよ。それで日本に戻って、『FREE MAGAZINE』の編集長だった山﨑潤祐さんにブックを見せに行ったときに、「いや、キミは絶対に服をつくったほうがいいよ」と言われて。その場で展示会も決まって、いきなりデビューすることになりました(笑)。予想外の展開だったから、まだブランド名もなくて、とりあえずTSUKASA KUDOにして、kudos(クードス)にしたのは少したってからでしたね。


アジアの子だってすごくセクシーだと思う

――2017年にクードスがスタートして、18年にはウィメンズラインにあたるsoduk(スドーク)をローンチしました。どういう意図だったんですか?

 クードスのお客さんの半分ぐらいが女性だったので、レディースがあったらいいなと思って、スドークを始めたんです。今はクードスの半分が女性のお客さんで、スドークの半分が男性のお客さんなんですよ。なんか面白い状況になってますよね。僕自身は、男らしくつくろうとか、女らしくつくろうといったことは何も考えてなくて、その基盤のなさが逆に広く受け取ってもらえることにつながっているのかなって思います。

「男らしくつくろうとか、
女らしくつくろうといったことは
何も考えてなくて」

――そして、最近になって、TSUKASA KUDO PUBLISHING(ツカサ クドウ パブリッシング)も新たに立ち上げました。出版レーベルをやろうと思ったのはなぜですか?

 僕自身、服づくりを始めるより前に写真をやっていたことがあって、写真家とかアーティストに対するリスペクトがすごくあります。ファッションデザイナーの友達はあまりいないんですけど、写真家とかアーティストの友達は多くて、いろいろな形で影響を受けています。ただ、みんなすごくいい作品をつくっているのに、そこまでフィーチャーされてない状況があって、それに対する憤りというか、わかりやすいものがよしとされる社会への違和感がずっとありました。第1弾がフィッシュ・チャンという人の写真集で、彼女は亡くなったレン・ハンの友達で、エディトリアルとかで活躍しているんですけど、彼女の写真をまとめたいなと思ったのが出版レーベルをつくろうと思ったきっかけですね。僕のことを知ってくれている人に、こんなすばらしいものもあるんだよってことを伝えられたらと思っています。


――デザイナーとしてだけではなく、フォトグラファーやスタイリストとしても活動し、出版レーベルも手がけています。将来の夢というか、最終的にはこうなっていたいという目標は何かあったりするんですか?

 そこですよね。自分でもどうなっていきたいのかよくわかっていなくて。ただ最近はよくコラボレーションをやっていて、そういうときにいつも思うのは、すごい人とやりたいなってことです。「この人には絶対かなわないわ」っていう人との仕事はやっぱり面白いですよね。これは自分のいいところだと勝手に思っているのですが(笑)、すごいなと思った人に対してはすぐに負けを認められるんです。自分よりも適任な人がいたら、その人がやったほうがいいと素直に思える。だから、クリエイティブディレクターみたいな役割で、プロジェクト全体を考えて、「ここはこの人」「ここはあの人」というふうに、それぞれのスポットに才能ある人をアサインしていくような仕事にも興味ありますね。

――それは面白そうですし、ぜひ見てみたいです。

 あと、僕、普段ルックを撮るときに決めているのがその土地の人を使うってことなんです。ヨーロッパにいたときはヨーロッパの子をキャスティングして撮影していたんですけど、日本に帰ってきてからはずっとアジアの子というか、日本に住んでいる子で撮っています。日本でつくっているのに、当たり前のように白人のモデルを使うのがイヤなんですよね。「この服、この白人は着ないよな」って思うから、そこにあんまりウソを持ち込みたくないんです。なんでもかんでも欧米ではなくて、アジアの子だってすごくセクシーだと思うんですよ。

――ほんとそう思います。最近のK-POPの世界的なヒットとかはそういうことですよね。

 僕、韓国アイドルも大好きで、その衣装とかもめっちゃやってみたいんですよ。アジアからの発信みたいなことはめちゃくちゃ興味があるので、チャンスがあれば何かやってみたいですね。

kudos 2021 春夏コレクション「we DID it!」

Photos:Takahiro Idenoshita Composition & Text:Masayuki Sawada

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