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WEB SPECIAL EDITION
現在、パルコ劇場にて『ピサロ』に出演中の宮沢氷魚。昨年、新型コロナウィルスの影響で上演中止になってしまったこの作品の再演を記念して、宮沢氷魚のロングインタビューを短期連載でお届け。
前回までで、モデルとして、俳優として、仕事にかける熱い思いを語ってくれた氷魚。ここから趣味や好きなものについて詳しく聞いていきます。第5回は、人生で忘れられない旅の経験について。
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氷魚と、アメリカロードトリップ
――メンズノンノでも紹介した『FAVORITE and HISTORY』。氷魚を知るうえで外せない10のことをピックアップするというコーナーだったんだけど、そこから特に聞いてみたいことをさらに詳しく聞いていきます!
「了解です! 楽しそうですね。頑張っていろいろ思い出します」
――――撮影前に編集部で“氷魚を構成するものではずせないのは?”という話をしたときに、『ロードトリップ』のことを熱心に語ってくれて、それが大きなウェイトを占めてるなと思ったのだけど…。
「あぁ、そうですね。これはぜひ紹介したかったです。僕は大学の2年間をアメリカで過ごしたんですが、いつかロードトリップがしたいと思っていたんです。それで18、19歳くらいのときかな、車を買ったんですよ、中古のやっすい車を。この仕事をすることになり、日本に帰ることが決まっていたので、じゃあもうアメリカでの最後の夏になる大学2年生の夏休みを使って、いろいろ周ろうと思って」
―――本当に青春という感じだね…!
「はい! それで、同じ大学の友達と2人でロードトリップを計画しました。2か月くらいけっこうずっと計画を練っていましたね。地図なんかも買って、“ここにこうやって行って、この店に寄りたいね”とか、“この道通りたいな~”とか、すごく盛り上がりました。でも考えたら、アメリカってやっぱりかなり広いから、全部周ろうとなると単純に2か月半かかるんですよ(笑)」
――たしかにそうだね(笑)。
「予算も全部計算しました。僕らは学生でお金はあんまりありませんでした。ガソリン代とか宿代とか、計算するといろいろ必要経費がかかることがわかったんで、行けて2週間かなってことになったんですよ。てなると、本当に西海岸しか行けないんですよね。カリフォルニアと、ネヴァダとアリゾナ。でも“それだけでもやろう!”って。2人で1日10時間くらい運転して、まずはカリフォルニアのヨセミテとか、そのあたりから旅は始まりましたね」
――ロードムービーみたいだ。
「そうなんですよ! もう、すっごく楽しくて。道順的に、けっこう危険なところを通ったりもしたんです。ちょっと治安が悪いエリアとか。そういうところでやっぱり一晩過ごすと、“生きてる”って実感がわくんですよね。よく言うじゃないですか、こう、死を前にして、初めて生きてることを実感するみたいな」
――うん、よく聞くよね。
「“いやそんなことあんのかな?”って思ってたんですけど、本当にそうで(笑)」
――朝起きて、“僕生きてる!!”みたいな?(笑)
「まさに。旅の中で、一晩3~40ドルの安いモーテルに泊まったことがあったんです。LAの治安が悪いと言われるエリアで、セキュリティもそんな全然しっかりしてないところに。それで友達と2人で寝ていたんですけど、急に夜中に“ダンダン!”ってドアをノックする音がして…すごい怒鳴ってるんですよ。“お前出てこいよー!!”みたいなことを。“いるの知ってんだぞー!”って」
――こわいこわい(笑)。
「ほんとに、覗くのも怖い。銃とか持っててもおかしくないじゃないですか。だから開けるのは絶対に危険だなと思いましたよ。ずっと叫んでるし、ドアを蹴ってるし。で、その人は部屋を間違えていることに気づいたのか、最終的には立ち去ったんですけど、そしたら今度は隣の部屋のドアをバンバンやって大騒ぎしだして。そこから思いっきりケンカが始まってましたけど…“こわっ!!”て感じでしたね本当に」
――無事でよかった!
「あとは、炎天下の何もない道でタイヤがパンクしたこともあります。デスバレーの近くだったかな。この間もニュースで気温が57度になって、アメリカの記録更新みたいなことを言ってましたね。そこを通った時に、タイヤが溶けちゃって」
――え、パンクってタイヤが溶けてっていうこと?
「そうです(笑)。路面が熱すぎて。写真を撮るためにちょっと停めていただけなんですけど。あ、誌面にも載せた地図を持ってる写真ですね。走り始めたら車が傾いていて、何だろうと思ったらタイヤが溶けて空気が抜けていたんです。本当に運よくガソリンスタンドがあったんで、そこで手伝ってもらってスペアタイヤに替えることができました。
――運よくガソリンスタンドがあってよかったね。
「そう、やばかったんですよ、なかったらどうなってたんだろうっていう。そういう命の危機みたいなものを旅する中でいくつか感じたので、もうなんかその、価値観みたいなものは変わりましたね」
――たしかに、経験値がぐんと上がりそう。
「お金がない中、そうやっていろんなところ行きました。野宿したりとか、知らない人とご飯食べたりもしましたね。東京にいると、わりとどこに行ってもそこそこ安全だし、きれいだし、街から街をドライブするだけで命がけみたいなことはないじゃないですか。でもそうじゃなくて、それこそトイレを見つけるだけでも一苦労というロードトリップって、生きていくことについていろいろ考えるんですよね。つらいし、しんどいんですけど。そこで得たものに勝るものが、いまだにないんですよ。あの2週間の濃い時間以上に、ああ、すごくためになったなっていう時間が今のところなくて」
――生き方にも影響を与えるような、すごく大事な思い出だったんだね。
「はい、それを学生のうちにできてよかったですね」
『ピサロ』公演情報
PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』
日程:2021年5月15日(土)~6月6日(日)
会場:PARCO劇場
作:ピーター・シェーファー
翻訳:伊丹十三
演出:ウィル・タケット
出演:渡辺謙 宮沢氷魚 栗原英雄 大鶴佐助 首藤康之 外山誠二 長谷川初範 ほか
※公演スケジュールは変更になる場合があります。感染症拡大予防に対する取り組みなど、最新情報は下記から
PARCO劇場公式サイト『パルコステージ』
第6回は、今の自分を作ったヒストリーや環境について。5月20日公開、お楽しみに!
※このインタビューは、メンズノンノ2020年11月号の、宮沢氷魚表紙撮影時に行いました。
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Photos:Saki Omi[io] Hair & Make-up:NOBUKIYO Stylist:Yoshiaki Komatsu Model:Hio Miyazawa
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