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スニーカーはおしゃれ男子の必須アイテム。名品スニーカーの歴史や変遷を解説する連載の第7回は、日本が世界に誇るハイテクスニーカーの傑作、ゲルライト スリー。ゲルライト同様、世界にファンの多いゲル カヤノの歴史もダイジェスト!
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アシックス
ゲルライト スリーの歴史
世界のスニーカーショップから別注される傑作!
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1990年に発表された当時のゲルライト スリー。30年の長きにわたり世界で愛され続けている。
アシックスは1949年に鬼塚喜八郎が設立した鬼塚商会がルーツ。世界のシューズブランドにも負けないアイディアで次々と斬新なスポーツシューズを開発し、1964年の東京オリンピックをきっかけに世界に進出していく。現在使用されているアシックスストライプは、メキシコオリンピックに向けて1966年に開発され(当時は「メキシコライン」と呼ばれた)以後、ブランドを象徴するアイコンになっていく。
1977年にオニツカ、ジィティオ、ジェレンクのスポーツメーカー3社が合併してアシックスが誕生。鬼塚喜八郎の創業哲学にもなった古代ローマの風刺作家ユベナリスによる「Anima Sana In Corpore Sano(もし神に祈るならば健全な身体に健全な精神があれかしと祈るべきだ」という言葉の頭文字からASICS(アシックス)と名付けた。
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ゲルテクノロジーを最初に搭載したランニングシューズGT-Ⅱ。ミッドソールにシリコーン製の「αGEL」を装備。
1980年代にスニーカーのソールテクノロジーの開発競争が起こる中、1986年にアシックスはシリコーン製緩衝材「αGEL(アルファゲル)」を搭載したGT-Ⅱ(ジーティーツー)とフリークスα、2モデルのランニングシューズを発表。これ以降、ゲルはアシックスを代表するテクノロジーとして進化していく。翌1987年にはゲルライトシリーズの初代モデルGEL-LYTE(ゲルライト)が登場。
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海外向けに製作されたことを物語る英語で商品説明が書かれたボックス。
初代ゲルライトは高速ランニングトレーニング用に、海外向けに企画された軽量のランニングシューズ。レーシング用の細いラストを採用し、さまざまなテクノロジーで安定した着地とスムーズな足運びを実現し、国内外のシリアスランナーに好評を博した。
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1990年当時の海外の雑誌広告。「ゲルライト スリーはこの雑誌よりも軽い」のコピーとともに、ゲルの機能も解説。
その3年後、1990年に誕生したのがシリーズ3代目のゲルライト スリー。ゲルの軽量性やクッション性に加えて、スニーカー通に支持されるもうひとつの特徴が「スプリットタン」。走行中にシュータンがずれるという長距離ランナーのストレスを解消するための独自設計だ。
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スプリットタンはシュータンを縦に分割して履き口周りの部品と一体化させるアシックス独自の構造。最初はGEL-LD RACER(ゲルLDレーサー)に採用された
ゲルライトスリーを筆頭に海外に向けたランニングシューズは、発売当初はあくまでパフォーマンスシューズとして弁護士や医者といった富裕層に受け入れられた。1990年代、スニーカーがカルチャーのど真ん中に躍り出て、次々とヒットモデルが生まれては消費されていったが、アシックスの製品ははそれに迎合することなく、支持層を広げていった。
この稀有な存在に、ニューヨークの有名スニーカーショップKITH(キース)を立ち上げたロニー・フィーグなど現代のクリエイターが注目。ロニーは前職のデビッドZ 時代にゲルライト スリーの別注を手がけ、大ヒットさせている。2000年代後半にはスコットランドの HANON(ハノン)、ロンドンの FOOTPATROL(フットパトロール)、オランダの PATTA (パッタ)やスウェーデンの SNEAKERSNSTUFF(スニーカーズエンスタッフ)など ユーロ圏を中心に、ニューヨークの KITHも含め有名なスニーカーセレクトショップの別注が盛り上がり、ワールドワイドな名品として躍進する。
この流れに加えて、チャンキーなランニングシューズが大きなトレンドとなり、2015年、25周年という節目も重なりライフスタイルシューズとして「アシックスタイガー」レーベルから復刻モデルが発売に。以後、ゲルライト スリー OGとして定番化されている。
※2020年からはレーベル名が「アシックスタイガー」から「アシックス スポーツスタイル」に変更されている。
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アシックス ゲルカヤノの歴史
デザイナーの名前をモデル名に採用!
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1993年に発売された「ゲルカヤノ」シリーズの第1号。アウトソールの稲妻のようなラインが、左右そろうとクワガタのハサミのように見える。
ゲルライトとともに海外で人気が高く、逆輸入で日本でもジワジワと火が点いたのが「GEL-KAYANO(ゲルカヤノ)」シリーズ。日本人よりも体格の大きい欧米人ランナーに向けて開発されたオーバープロネーター(着地の際に足部が回内する人)向けのランニングシューズだ。クッション性、安定性、サポート性に優れたシューズとして、1993年にGEL-KAYANO TRAINER(ゲルカヤノ トレーナー)が発売された。アシックス社員のデザイナー榧野俊一(かやのとしかず)が、「クワガタ」からインスピレーションを得てデザイン開発し、名字をモデル名に冠した。13代モデルまでは榧野がデザイン開発を担当。
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2008年に発売されたゲルカヤノ14。写真は現在復刻されているモデルのアーカイブ。
初代モデルはスポーツジムなどでも使えるマルチトレーニング向けのシューズだったが、その後は長距離トレーニングのランニングシューズとして発売された。2000年代に入ってからは、スポーツ工学研究所の科学的な研究開発を導入し、パフォーマンスモデルとして飛躍的に進化。2008年発売のゲルカヤノ14は、影響力のあるアメリカのランニング専門雑誌『Runner’s World(ランナーズワールド)』のインターナショナルエディターズチョイス賞を受賞した。
パフォーマンスシューズとして、現在まで27モデルが登場しているが、科学的根拠に基づく機能性を取り入れ、18代目以降はエシカルな視点も生かしてアップデートされている。
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ゲルライト スリー OG
1990年に発表され2020年に30周年を迎えたゲルライト スリー。衝撃緩衝材ゲルによるクッション性とスプリットタンのフィット感をキープしながらデザインをブラッシュアップして、発売当時のオリジナルカラーがライフスタイルシューズとして昨年復刻されたことは記憶に新しい。
そのゲルライト スリー OGの新作は、トレンドカラーのベージュ(オイスターグレー)と安定のブラックのワントーンモデルをラインナップ。コーデュロイ風の畝のあるアッパーに軽快なホワイトソールで、コーディネート力の高い一足に仕上がっている。
スニーカー(アシックス)各¥13,000/アシックスお客様相談室
ゲルカヤノ14
アシックスのデザインチームに今をときめくデザイナーのKiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)がキュレーターとして今年から参加。彼が初めて手がけたシューズがUB1-S GEL-KAYANO 14(ユービー1 エス ゲルカヤノ 14)だったことからも、ゲル カヤノ14が名品として世界に認められている事実がうかがえる。
今年はこのゲルカヤノ 14の新作がライフスタイルシューズとしてコンスタントに発表される! 2008年に榧野俊一にかわってデザインを担当した山下秀則(やましたひでのり)は当時、インスピレーションとなった“閃光”をランナーのモーションの連続に見立ててデザインに投影したという。展開色の中でも、閃光感のあるゴールドは注目カラー。
スニーカー(アシックス)¥14,000/アシックスお客様相談室
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ゲルカヤノ14は、せん断変形(物をずらして生じる力と形状)のGEL構造を、アシックスで初めて取り入れたシューズとしても、後継モデルに影響を与えた。新作のカラーバリエーションではソールまでブラックのオールブラックモデルも展開される。
スニーカー(アシックス)¥14,000/アシックスお客様相談室
問い合わせ先
アシックスお客様相談室(TEL:0120-068-806)
※価格は全て税別です。
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西澤祐哉さん
(スタジオファブワーク プレス)が
最新モデルをコーディネート!
本誌スナップ企画などでもおなじみの西澤祐哉さんは、プレスルームスタッフとしてアシックスやほかのファッションブランドのPRに携わる。今回紹介した2モデルのおすすめ春コーデを紹介してもらった。
ゲルライト スリー OG
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「アシックスのスニーカーはどれも、とにかく履き心地がよくて、ライフスタイルを豊かにしてくれるシューズです。ファッションとしても履くだけで感度が上がる、そんな印象も。ゲルライト スリー OGは90’sらしい、丸みを帯びたボリューム感が魅力。太めのパンツとの相性が抜群です。ヨークのオーバーサイズメッシュニットとヨークのワイドスウェットパンツとのシンプルなコーディネートも、ゲルライト スリー OGを合わせることでこなれ感が演出できるので気に入ってます」
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「デザイン要素の多いゲルライト スリー OGはグレー×ブラック×白のモノトーンをセレクト。この配色は抜け感も入れられてて、どんな着こなしにもハマる万能カラー。タンと足首部分が一体化したスプリットタンは本当に履きやすくて、手を使わずとも脱ぎ履きできるイージーさも備えています。皆さんにもこの感動をぜひ味わってほしい!」
ゲルカヤノ14
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「ゲルテクノロジーはもちろん、閃光からイメージされたメタリックカラーとメッシュのコンビネーションにもハイテク感が漂います。機能とデザインを高いレベルで両立しているゲルカヤノ14を、スポーティなファーストダウンのフリースプルオーバーとユハのパンツでコーディネート。ワントーンスタイルにもエッジが添えられて、ファッション的な見え方になります。フリースとスニーカーのスポーティな組み合わせは、シルク混ウールのドレッシーなパンツを合わせることで上品に仕上げています」
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「シルバーにメタリックブルーの閃光をイメージしたデザインが秀逸です。ブルー系のアクセントカラーはモノトーンやネイビー、カーキ、ベージュといった定番色ともなじみがよく、ワントーンの上品なアクセントにもぴったり。ほどよいハイテク感のあるデザインは海外の名品といわれるハイテクスニーカーにも負けていません!」
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おしゃれ男子が選んだ
MYアシックス&コーディネート
高橋正典さん(スタイリスト)
キコ コスタディノフ × アシックス ゲルキリル
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「キコ コスタディノフとのコラボでウロコっぽいデザインが新鮮に感じて1年ほど前に買いました。もともと黒好きで、オールブラックのほうが洋服にも合わせやすいので迷わず黒をチョイス。きょうはプラダのジャケットにリパーパスのパンツ、フーディはキャンバーというハイブリッドなコーディネートです。キコは洋服ではワークウエア風の提案が多いので、ジャケットのポケットは大きめ、パンツもディッキーズの874を彷彿とさせるようなシルエットで、ワークオマージュでまとめました」
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「アシックスは本気のスポーツシューズというイメージが強かったのですが、キコとのコラボがスタートしてからファッション寄りのイメージが出てきました。このモデルもアッパーの二重構造のチェッカーパターンが斬新で、ファッション性が高いですよね。キコがディレクターになって、これからどんなデザインのものが出るのか楽しみ。履き心地も文句なしなので、独自性の強いデザインのものがあれば、また買いたいです」
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中島和弥さん(RUNO美容師)
アシックス ゲル フジトラブーコ 8 ゴアテックス
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「トレランシューズが流行り始めた2019年頃に買いました。オールブラックでスタイリッシュで、しかも歩きやすそうだったので、一目惚れです。ロトルのコートとユニクロのパンツのようなブラックのワントーンコーディネートによく合わせていますが、インナーやキャップのロゴなどで色を差すようにしています。きょうもエンジニアドガーメンツのクレイジーチェックのパーカとニューエラのキャップで色を添えました」
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「ソールのボリュームもゴツすぎず、どんなシルエットにもマッチするオールマイティな一足。基本黒のパンツに合わせています。2017年に発売されたアシックスタイガーとポーターのコラボ、ゲルカヤノトレーナー“ザットブラックナイロン”をこのゲル フジトラブーコの前に買っていて。そちらはライナーやロゴ、ソールにちょっとしたイエローアクセントがありますが、基本ブラックなので今も愛用しています。アシックスは履きやすさも最高で、買ってハズれがありません!」
Composition&Text:Hisami Kotakemori
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