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DEC.
interview
田川市の温もりとともに
若者が共感できる物語を紡ぐ
Elaiza Ikeda
池田エライザ
PROFILE
1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年にモデルデビューし、11年より女優としてのキャリアをスタート。近年の代表作に、映画『ルームロンダリング』や『貞子』『一度死んでみた』『騙し絵の牙』、Netflixオリジナルドラマシリーズ『FOLLOWERS』などがある。
女優をはじめ、モデル、エッセイスト、歌手など、さまざまな才能とともに活躍している池田エライザに新しい顔が加わった。映画『夏、至るころ』で原案、監督を初めて務める。
「ある取材で映画監督をやりたい気持ちを、勇気を出して告白したんです。その記事を読んだ映画会社の方が声をかけてくださり、『ぼくらのレシピ図鑑』というプロジェクトの第2弾として、映画製作が始まりました。『地域』『食』『高校生』に密着した青春映画を撮るというテーマをいただいていたので、常にめざす方向が見えていました」
舞台は、池田の出身地の福岡県にある炭坑の町、田川市。池田は「みんなが誇れる、町にとっての宝物をつくりたい」と、2年前の冬に現地を訪れ、住んでいる人々の話をじかに聞き、物語を紡いでいった。
「今作を作るうえで大事にしていたことは、観る人を操作しようとしないこと。田川市の人々や土地柄から感じた温もりを取り入れながら、まっすぐ感情に突き刺さる、ある意味王道な物語をめざして撮っていきました。主人公の翔は、いまの若者が共感できる子をイメージして、現地に取材に行った日の夜にキャラクターが完成しました。ふと立ち止まって、将来や幸せを考えて『いま自分で決めないといけない瞬間かも』と思い始めている少年です。そして親友の泰我は、『安定した公務員になりたい』と語ったある中学生の男の子から広げて人物像をつくりました。その子はしっかりしていたけど、多くの若者にとって、いまは夢や希望を見いだすのも難しい情報過多な世の中だと思います。『がんばっても報われない』と考えてしまう彼らに、私たち大人は何ができるかと考える中で、翔と泰我の関係性が生まれていきました」
幼い頃から慣れ親しんだ和太鼓に打ち込みながらも、何をしていけばいいか悩む翔。一方で、自分なりの幸せを見いだし、好きなものを諦めることを選んだ泰我。そこに現れた、夢破れて帰郷した歌手の女の子、都。隣にいる人が眩しく見える青春の一瞬を切り取り、言葉にできない不安や葛藤を鮮烈に描き出している。
「他人が眩しく感じるのは、しっかり立ち止まって自分で考えられている証。ちゃんと納得していることを実行に移すことは将来の宝になります。なんでもいいやって前に進むことはできるけど、後で記憶にすら残らない。その時点ではストレスがかかるけど、『あのとき決断してよかった!』と思えることは人生で大事です。今回主演を務めてくれた若い俳優たちを通して、そのことを伝えられたらいいなと思います」
『夏、至るころ』
原案・監督:池田エライザ
出演:倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、
高良健吾、リリー・フランキー、原 日出子
●12月4日より、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開
高校3年生の翔(倉悠貴)は、親友の泰我(石内呂依)と幼い頃から一緒に和太鼓の訓練をしてきた。しかし、夏祭りを目前に泰我は、受験勉強を理由に太鼓をやめてしまう。翔は愕然とし、自分は何がしたいのかを考えるが、わからない。そんな折、音楽を諦めて故郷に戻ってきた少女、都(さいとうなり)と出会い、過ごす中で、しだいに生きる道や幸せを見つけようとする。©2020「夏、至るころ」製作委員会
ジャケット(オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™️)¥216,000/イーストランド 中に着たトップス¥47,000/FETICO ピアス(シャルロット シェネ)¥67,000[参考価格]/エドストローム オフィス
Photo:Toshiyuki Tamai Hair & Make-up:Chie Toyoda Stylist:Riku OshimaInterview & Text:Hisamoto Chikaraishi
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