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メンズノンノウェブ限定の連載「ウィークエンド・インタビューズ」では編集部が気になる人に会いに行き、仕事からプライベートまで、じっくりインタビュー。第2回目は、各メディアから引っ張りだこの成田悠輔さんが登場。夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社の代表という異色の経歴を持つ彼の知られざる素顔を紐解きます。
子ども政策から和菓子まで
ボーダーレスにアドバイス
−テレビやYouTube、雑誌とボーダーレスにお顔を拝見しますが、最近はどんなことをされていますか?
TVやYouTubeといった動画メディアでいうと、ニュースや報道番組で真面目なことをコメントしたり論争ごっこをしたり。お笑い番組に出て、ひな壇芸人みたいなことをやってプロの芸能人に「やる気あるのかお前」と叱られることもあります。やる気はないですよ(笑)。
それ以外のメディアだと文学の雑誌やマニア向けの業界誌や学術誌、あとはファッション誌に出たり、自分の本を執筆したり。最近は焚き火についてのエッセイを書いたり、和菓子について取材を受けたりもしました(笑)。大学では研究や教育っぽいこともやっていて、講義したり、学会や学術誌を運営したり、論文を書いたり、大学生や大学院生の研究指導をしたり。そんな日陰なこともチョロチョロやっています。あとはビジネスとか、ちょっとだけスタートアップ投資も。最後に政策に関わることもやっている。とまぁ、そんな感じです。
―政策にも携わっていらっしゃるんですね。少し具体的にお聞きしてもいいですか?
たとえば子ども政策に関することをやっています。日本って困っている子どもさんが増えているってよく言いますよね。子どもの貧困や不登校、虐待件数も増えていると。問題は、そんな困っている子どもたちって本当に困っていても「助けて」と声を上げられないことが多いんですね。役所の窓口とかはあるんですけど、一番困っている人たちって、そもそも窓口に駆け込んでくることもできないくらい追い詰められていたり忙しかったりするじゃないですか。窓口を作って待っているだけだと、あんまり意味がないわけです。
―助けが必要な子に支援が届きにくいですよね…。
はい。ただ、その子たちの生活状態についての情報とかのデータって、実はいろんなところから漏れ出しているんです。学校での出席状況やテストの点数、先生からのメモ、児童相談所からの情報もあるし、学童や公園、子ども食堂で子どもたちをサポートするNPOなど、この子の状況、ちょっとヤバいかも…みたい情報が日々溜まっていっているわけなんですよね。それを上手く組み合わせて、本当に困っていても声を挙げられない子どもたちに、もっと積極的に救いの手を役所やNPOが差し出すことができるかもしれない。データで子どもたちのSOSの予知・予測ができるようにしようっていう話があるんですよね。データの量や質も限られていますし、プライバシーの保護も必要ですし、できるかどうかわかりませんが、できないならどうできないかの理由を知りたい。いくつかの自治体と組んで、そんな社会に必要そうで、ちょっと真面目で、ちょっと意識高そうなこともやっています。
―ご多忙な毎日かと思いますが、オンとオフのスイッチングはどのようになされていますか?
オンとオフ….(少し考えこんで)まぁ、ずっとスリープ状態みたいなものなので常にオフなんですけど(笑)、自分の頭をパッと切り替えるのが苦手なので、己でどうのというより何か自分の外側にあるものを頼ってスイッチを入れ替えるというのをやるんですよ。さっき焚き火について書いたと話しましたが、焚き火もそのひとつ。とはいえ都会のド真ん中で焚き火をやるのはちょっと難しいので、真っ暗な部屋で一本の線香を焚いて眺めています。一粒の光とスッと上がる煙を眺めていると、ちょっとスイッチが変わる気はしますね。ぶっちゃけ、焚き火をしてサウナでも入っていれば、それでいいって感じなんですよね。
頭を休めたい時は焚き火とサウナで
オフモードに強制スイッチ
―サウナもお好きなんですか?
まぁまぁ好きですね。都心の有名どころは全部行ってますし、仕事なのか遊びなのかよく分からない用事みたいなのを無理やり作り出して、地方都市へ遠征もします。金沢の香林居や福岡のウェルビー、神戸のサウナ&スパ、御船山楽園ホテルのらかんの湯なんかも好きですね。サウナは97度ぐらいの熱めで火傷しそうになるのが好きですね。というかよく火傷してますね(笑)
お金持ちの知り合いだとプライベートサウナを買ったり作ったりする人も増えています。ただ、私はよくわからん自慢話をしている気持ち悪いおっさん客を観察して軽蔑できる民間施設の方が好きですね。
埼玉とか茨城とか千葉の方にある、大きめのスーパー銭湯に行ったり。ゆっくり岩盤浴に入って、じっくり考えを深めようとしていたら単にただ昼寝して一日ドブに捨てるみたいなのは多いですね。あ、あと地方にあるいぶし銀の温泉旅館とかに泊まるのも好きです。カップルや親子しかいないようなところに一人で泊まって、すごい心配されるっていう。
―あのお客さん、ちょっと注意して見ておこうみたいな(笑)。
最後の晩餐に来たのかと(笑)。宿の人が腫れ物に触るように異常に心暖かく接してくれますから(笑)。なので高温サウナで劇薬を打つか、岩盤浴と温泉で緩めるかのどっちかって感じで、その時のモードによってという感じですね。家だと酒ばっかり飲んじゃって気づくと気絶してるので。
―お酒お好きなんですね!ちょっと意外かもしれないです。
眠れないタイプなので、眠るためという名目で毎晩フラフラになるまで飲んでますね。どうにかしたいと思い続けて10年以上どうにもなってない感じ。ウイスキー、ジン、ラム、焼酎、ブランデーあたりをよく飲みます。炭酸水メーカーで炭酸の強さを微調整しながら、テネシー州の安いウイスキーでハイボールを作ったり、人からもらった響17年をストレートで飲んだりっていうのを行ったり来たりしてる感じです。
成田悠輔 YUSUKE NARITA
夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟株式会社代表。専門はデータ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の創造とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。
『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書)
Photos:Kiyono Hattori Interview & Text:Kohji Ogata
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