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昭和の薫りがぷんぷんただよう「ザ・レトロ」な世界を堪能してきたが、僕らが生きてきた平成にだって、振り返ってみると懐かしい文化が数多くあるんだ。
山下メロさん
平成文化研究家
10年ほど前、地方の土産店でよく見かけた「ファンシー絵みやげ」にほれ込んだのをきっかけに、消えつつある平成文化を研究する。投じた私財は1,000万円以上に。
Twitter:@inchorin
Instagram:@mero.yamashita
エビアンホルダー
「90年代初頭の日本で小型のペットボトルは希少。見せびらかしでホルダーに入れるおしゃれな若者は"オアシス小僧"と呼ばれました」
ポケベル(センティーA)
「1995年発売のセンティーAという機種。もとは数字を文字に変換して読んでいたけど、この頃にはもう、きちんと文字を受信できました」
ポケベル(モーラ)
「もとは会社員のために作られたポケベルが、思いがけず女子高生のカルチャーとして広がっていったことを象徴するデザインです」
武富士のポケットティッシュ
「ギャル全盛期の90年代後半は、武富士はじめ消費者金融も全盛。ギャルも街中でしょっちゅうこれを受け取っていた。平成の象徴です」
スケルトンの「写ルンです」
「1998年にスケルトンのiMacが発売されると、日本にはスケルトンブームが到来しました。あらゆるものをひたすら透明にしたんです」
銀玉迷路
「いわゆる"ファンシー絵みやげ"。旅行先で買って、子どもが学校に持ち込み、先生の目を盗んで遊べるものが多く作られました」
占いルーレット
「これも"ファンシー絵みやげ"。買えばすぐ遊べる作りから、子ども自身が遊び方を考えることより売り上げ重視の時代背景を感じます」
愛の伝言板
「真ん中の部分に入る言葉を替えて、いろんなお誘いができるキーホルダー。コンプライアンスぎりぎりなワードチョイスが当時っぽい」
豆本
「今でもたまにサービスエリアで売ってます。昆虫図鑑のほうは最後のほうがプリクラ帳になっていて、意味不明だけど平成らしさ満載」
記憶にあたらしい平成文化こそ
積極的に守っていかないと
もともとはバブル期に盛んに作られて全国の土産店で販売された、「ファンシー絵みやげ」を中心に集めていました。二頭身の動物やポップな文字が描かれたキーホルダーなどのグッズです。1個300円から3,000円程度のもので、2万種類ほど持っていますね。厳密にいうと昭和期から存在しますが、平成にもっとも流通しました。今はそれを足がかりに、「平成レトロ」という概念についても、提唱しているところです。
「平成がレトロなの?」とよく言われます。でもデジタルが普及した時代だから、現物ではモノが残りづらい。昭和レトロみたいに重要視しなければ、平成初期の文化は忘れ去られてしまいます。それに危機感を覚えてから、当時流行ったものをコレクションするなど、文化を保護する活動を自分なりに始めました。
今はSNSのおかげで個々に好きなものを追求できる代わりに、世代間のギャップが広がりやすい。でもまだテレビの力が大きかった平成初期は、「みんなが好きなもの」が存在しました。若者が生み出したトレンドが、全世代に共有される時代だったといえます。
私は、今あらためて見ると懐かしく感じられる、そのわかりやすい例を示しているにすぎません。だから、「平成レトロ」が広く認知されてほしいという意味も込めて、この言葉をたくさんの人に使ってもらいたいです。
(山下メロさん)
Photos:Naomi Ito(still) Stylist:Masashi Sho Illustrations:Nao Hashibiro
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