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REVIEW
BOOK
『リボルバー』
原田マハ
幻冬舎/¥1,760
パリの弱小オークション会社に、錆(さ)びついた1丁の拳銃が持ち込まれる。誰もが知る画家、ゴッホが自殺に使ったものだという。しかも拳銃の持ち主はゴッホの友人だった画家、ゴーギャンだというのだが……。ゴッホとゴーギャンの交流を研究する女性、冴が美術史に残るミステリに挑む。謎を探るうち、二人の画家の素顔が見えてくる。
『Arc アーク』
ケン・リュウ
早川書房/¥1,760
SF界をリードする作家の短編から、日本独自編集で秀作ばかりを選(え)りすぐった。表題作は芳根京子主演で映画化されたことでも話題の作品。不老不死の技術を手に入れ、若いまま人類史上最高齢に達した女性の半生を描く。科学の発展は人間の夢や希望をかなえるが、同時に果てしのない欲望をあらわにする。哲学的問いのある作品集だ。
『ケッペキゲーマー』1巻
あまの
小学館/¥650
強迫性障害を患い、自宅に引きこもって5年になる20歳の黒田公正は、手足が不自由なプロゲーマー、足立歩と出会う。ゲームの中では自由だ、と言い切る歩に刺激され、公正はプロゲーマーの世界に興味を持つ。社会で居場所をなくした公正が、どうやって新たな世界に飛び込んでいくのか。物語は始まったばかり。早く続きが読みたい。
MUSIC
STUTS & 松たか子 with 3exes
『Presence』
話題を呼んだTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』のエンディング曲がCD化。STUTSの洗練とせつなさが一体化したトラックに、伸びやかな松たか子のヴォーカルが加わり、バージョンごとに入れ替わるドラマの登場人物である、3exes(岡田将生、角田晃広、松田龍平)らの演技とは異なるゲストヴォーカルも楽しめる。さらにリミックスも収録。
(ソニー・ミュージックレーベルズ) 発売中
ビリー・アイリッシュ
『ハピアー・ザン・エヴァー』
デビュー作である前作でグラミー主要4部門を独占、また日本のTVドラマの主題歌に起用されるなどし、現在世界で最も注目される彼女の最新作。最近は政治や社会問題に対しても積極的にメッセージを発信しているが、アルバムでは未来に対する希望、そして現在の絶望が、感情を抑えた声でありながらも、しっかりと刻まれていそうだ。
(ユニバーサル) 7月30日発売
DYGL
『A Daze In A Haze』
洋楽インディー・ロックの影響を感じるキレのあるサウンドで、海外からの評価も高い彼らの3rd。TVCMソングに起用された「Sink」を含む全12曲は、ストレートに心に突き刺さるロックから、現代の状況だから生まれたであろうダークな印象の楽曲まで、どれもバンドの息遣いが伝わってくる内容。ひたすらギターロックにしびれる1枚だ。
(HardEnough) 発売中
MOVIE
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
アカデミー賞脚本賞受賞。#MeToo以降、ウーマンパワーの流れにおけるひとつの記念碑と呼べる快作だ。主人公は医大を中退し、カフェ店員として働く30歳目前のキャシー(キャリー・マリガン)。彼女は毎夜バーやクラブで、女性を食いものにする男たちに制裁を下す危険なミッションにいそしんでいた。猛毒のブラックユーモアも満載な復讐(ふくしゅう)劇。まさに強烈な一撃!
●7月16日より、TOHOシネマズ 日比谷、シネクイントほか全国公開
©2020 Focus Features
『子供はわかってあげない』
数々の漫画賞で話題を呼んだ田島列島の同名コミックを、上白石萌歌の主演で映画化。元気でマイペースな高校生のヒロイン・美波が、行方不明の父親を捜すという風変わりな冒険を繰り広げる。監督は『南極料理人』などの沖田修一。ひとりの女の子が直面する甘酸っぱい体験を通して、心の成長をみずみずしく描く。夏にぴったりな珠玉のハートフルムービーだ。
●8月20日より、全国公開
©2020「子供はわかってあげない」製作委員会
©田島列島/講談社
『ドライブ・マイ・カー』
『偶然と想像』でベルリン映画祭銀熊賞に輝いたばかりの俊英監督・濱口竜介が、続けてカンヌ映画祭に正式出品。村上春樹の短編を原作に、妻を亡くした俳優兼演出家の男(西島秀俊)が、ある過去を持つ専属ドライバーの若い女性と出会う。深い孤独を抱えた二人がたどり着く場所とは? 濃厚かつ圧巻の179分。世界に轟(とどろ)く日本映画の新しい傑作を目撃せよ!
●8月20日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
[BOOK]Text:Kenji Takazawa
[MUSIC]Text:Takahisa Matsunaga
[MOVIE]Text:Naoto Mori
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