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梅雨明けと同時に酷暑を迎えたこの夏。新型コロナウイルスによってマスクが手放せなくなった今、熱中症へのリスクはさらに高まっているという。いざというときに慌てない対処法をしっかり学んでおこう。
熱中症対策アドバイザー
辰巳知之さん
暑い環境で開催される夏季のイベントや熱中症発生リスクの高いシーンで適切な指導を行う、熱中症対策のプロ。官民一体で取り組む「熱中症予防声かけプロジェクト」に従事。
Q.熱中症ってどうして起こるの?
人間の体は、通常、体温調節が自然と行われていますが、暑くなると体から熱がうまく逃げなくなります。周りの温度が高くなり、汗の蒸発などによる熱の放出とのバランスがくずれてしまうと、血流が滞り、体温調節機能が働かなくなって体温が著しく上昇し、さまざまな症状が表れることに…。このような状態が熱中症です。
Q.熱中症になりやすい場所やコンディションは?
熱中症になりやすい原因は、「直射日光」「温度」「湿度」「運動など自分自身で熱をつくり出す状況下」の主に4つがあります。屋外の日差しや照り返しの強い場所はもちろん、温度・湿度が高い室内でも熱中症に陥るリスクはあります。また、環境要因だけでなく、体調のよしあしや年齢、持病の有無など他の要因も関わってきます。
Q.「熱中症かも」と疑うべきサインは?
- 大量の汗が出る
- めまいや立ちくらみがする
- 手足がしびれる
- 吐き気をもよおす
- 足がつる
- 気分が悪い
- 頭痛がする
- 失神した
暑い環境が原因で起こる体調不良は、すべて熱中症といえます。熱中症の悪化を食い止めるためには、できるだけ早く体の異変に気づくことが大切です。上記の症状が発生したときに「いつものこと」と慢心せず、迅速に対処しましょう。
Q.熱中症になったときの対処法は?
呼びかけに応える?
YESの場合→
●涼しい場所に移動して、着ている服をゆるめる
木陰やエアコンが効いた涼しい場所へ移動しましょう。衣服をゆるめ、ベルトなど体を締めつけるものをゆるめます。足を少し高くして寝ると、脳の血流が増え、めまいや頭痛などが緩和されます。
●体を冷やす
体の熱をすばやく取るためには、首筋、脇の下、足のつけ根の前面(そ径部)など、太い静脈が通っている部分を冷やすのが効果的。保冷剤や氷のう、冷えたペットボトルなどを当てよう。
●水分・塩分を補給する
理想はスポーツドリンクや経口補水液ですが、なければお茶や水、ジュースなど、とりあえずは手持ちのもので水分補給を。一気にではなく、少しずつ飲むことがポイント。
NOの場合→
すぐに救急車を呼ぶ
呼びかけに応えず意識がなかったら、一刻も早く救急車を呼んでください。可能であれば涼しい場所へ避難を。気を失っていて水が飲めないとしても、口のまわりを水分で湿らせるなどして脱水症状の軽減を。無理に水を飲ませてはいけません。
Q.マスクをしていると体温が上がりやすいって本当?
暑い場所でマスクをしていると、顔の表面の温度や、吐く息、吸う息の温度が上がりやすくなります。マスクによる加湿で口の渇きも感じにくくなるため、熱中症に気づくのが遅くなる危険性も。周囲の環境や人との距離に配慮しつつ、マスクを適宜外して休憩を取りましょう。
Q.熱中症予防のための服選びのコツは?
素材はポリエステルなど通気性と速乾性に優れたものがおすすめ。吸水性が高い素材の場合、汗が乾きにくいので、汗をかいたらこまめに着替えるように。形状は、ぴったりしたものより、少しゆとりがあるものがよいでしょう。黒などの濃い色・暗い色は熱を吸収しやすいので、薄い色・淡い色のほうがベター。
例えば…
通気性のいいストローハット
ゆるめのTシャツ
速乾性のあるショーツ
Q.エアコンの設定温度は何℃ぐらいが適温?
部屋に温度計を置いて、28℃以下に保つようにするといいでしょう。ただしこれはあくまでも目安。日中は自分が過ごしやすく、夜はぐっすり眠れる温度を見つけて、調整することが大切です。
Q.アルコール分が少ない飲料なら水分補給になりますか?
どのような種類のお酒でも、アルコールは尿の量を増やし、体内の水分を排泄してしまいます。いったん吸収した水分も、それ以上の水分がその後に尿で失われてしまうので、水分補給には不向きです。
Q.熱中症の発生を防ぐためには何が大事?
基礎的な体力をつけることが大事です。バランスのよい食事を心がけ、しっかり睡眠を取るようにしましょう。また、のどが渇いていなくても、水や麦茶などでこまめな水分補給を忘れずに。多量のカフェインが入っているもの、アルコールはNGです。
Illustrations:Isamu Ozeki Composition&Text:Masato Nachi
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