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10代の頃に訪れたフランスで憧れを感じた、ファッションも生活も、その人自身=素材を生かして楽しむという感性。「料理はどうなの?」と、今回都内で人気のフレンチビストロを訪れてみた。
vol.16 France
素材の魅力を余すことなく感じる、洗練されていて親しみやすい味。
代々木上原駅西口から歩いて数分の場所。隠れ家のようなビルの1階のドアを開けると、広く静謐(せいひつ)な空間が現れる。店内を進みながら隅々に見惚(みと)れる萌音さん。「初めて来たけどすごく落ち着く雰囲気。家具や小物の選び方から置き方までセンスを感じます」。
奥のソファ席に着き、人気の「前菜の盛り合わせ」をいただく。「さまざまなおいしい味と食感が並んでいて、拝みたくなるほどありがたいひと皿(笑)。知っている味、初めて感じる味、慣れ親しんだヨーロピアンな味、新鮮なエキゾチックな味など、いろいろな要素がミックスされていて、食べながらずっとワクワクしていました!」。
続く「仔牛のタルタル」も、食べて思わず笑顔。「もうおいしいというのは当然なので横に置いておいて(笑)、まず言いたいのは牛肉の甘みをすごく感じるということ。菊芋のサクサク感が歯応えを楽しくしてくれるし、お肉の味を際立たせてくれている」。
そして料理はメインへと進み、「メダイのポワレ」をオーダー。運ばれてきた皿を見て驚いた様子。「白で統一されていて美しい! 見た目はシンプルだけど、ひと口食べると第一印象から想像がつかないくらい、とても奥深い味が広がるんです。きっと最小限の工程で、最大限のおいしさを引き出しているのでは。さまざまな食感も楽しめて、素材へのリスペクトを感じました」。
最後は、鴨肉(かもにく)好きの萌音さん待望の「鴨肉のロースト」。「さっぱりした味わいの奥から、たっぷりの肉汁とともに鴨のうま味がにじみ出てくる。つけ合わせの野菜も含めて、焼き加減が絶妙なんです。素材のよさを生かしているから、洗練されているのに威圧感がなく、親しみやすさを感じる。あ、だから、たくさん食べられちゃうのか!(笑)」
TODAY’S MENU
フランス料理の手法をベースにした親しみやすい料理に巡り合える「メゾン サンカントサンク」。洗練された盛りつけと繊細な味が、料理を口に運ぶごとに癒しをくれる。
Hors-d’œuvre variés
前菜の盛り合わせ
「前菜の盛り合わせ」(¥2,500)は、お店の創業当時からの看板メニュー。柑橘(かんきつ)とスパイスの爽やかな味わいが口に広がる“オレンジとクミンのキャロットラペ”(下写真の中央)や、甘みのあるクランベリーのサブレと白レバーによる味と食感の奥行きを楽しむ“白レバーペースト、クランベリーのチュイルとジャム”(同手前左)といった定番と、季節ごとに変わる前菜を提供する。そのほか、挽(ひ)き割り小麦と旬の葉物野菜を使った“ブルグルと季節の葉物野菜のジェノベーゼ”(下写真の手前)、ツナをベースにしたトンナートソースを絡めた優しい味の“自家製ハム”(同奥)など、計8種類の一品を味わえる。
Entrée
仔牛のタルタル
フランスのビストロでは定番の「仔牛のタルタル」(¥2,200)。やわらかい仔牛のもも肉を、インゲンやアンチョビ、ケッパーと混ぜ、ミルキーな肉の味を塩味と酸味で引き立てている。上にスライスして揚げた菊芋のチップスを加えて、サクサクしたアクセントを添えた。
Viande
鴨肉のロースト
「鴨肉のロースト」(¥3,900)は、クセのない国産の鴨を採用。肉本来のうま味と風味を残すように丁寧に火を入れている。さっぱりとした粒マスタードのソースとの相性は抜群。根セロリのピューレと、チンゲンサイや新玉ネギ、ジャガイモ、ヒラタケのローストを合わせ、見た目も実に華やか(野菜は季節によって変更あり)。
Poisson
メダイのポワレ
メダイをじっくりと蒸し焼きした「メダイのポワレ」(¥2,800)。白ワインとバターを使った、まろやかな甘みを持つブールブランソースといただく。下に敷いた、ホワイトアスパラとハナビラダケと一緒に食べることで、優しい食感と風味が増す。
アラカルト以外にも、ランチ、ディナーそれぞれに、おすすめを食べられるコースも用意している(ランチコース¥4,000〜、ディナーコース¥8,500[事前予約制])。
MAISON CINQUANTECINQ(メゾン サンカントサンク)
渋谷区西原3の12の14 1F
TEL:03(5738)8068
営業時間:ランチ:12時〜15時(L.O.14時) ディナー:18時〜23時(フードL.O.21時30分)
水曜休
呑気(のんき)と本気………文・上白石萌音
「ノンシャラン」。のんきなさま。無頓着なさま。ファッション界では気張らないお洒落(しゃれ)さ、きめていないかっこよさ、という意で使われる用語だそう。
私はスーパー無頓着な人間だという自負がある。素敵なものや美味(おい)しいものは好きだけど衣食住にあまり拘(こだわ)りがないので、良くも悪くも疑問を抱かず通過できてしまう。良くも、悪くも。
このどちらにも転べる言葉の決め手は、芯があるかどうか、な気がする。好きで狙ってそうしているのか、つまり気張らない小さな気合いを秘めているのか。拘らないという立派な美学。いざという時に大切なものが際立つように、それを守れるように、普段は大きな器で物事を感じておくということなのでは。はてさて私はどこまで拘った無頓着か。
言語化を放棄したくなるほど美味しかったフレンチの味を舌に思い出す。アスリート並みに拘り抜かれた料理なのに、それはほのぼのとしたお味だった。さらさらした手触りの本気。憧れのノンシャラン。
まるでなじみのあるビストロに来たように肩肘を張らず、まさにノンシャランな雰囲気で料理を楽しんでいる萌音さん。「お洋服も、お料理に合わせてフランスのブランドを使いながら、かっちりしたジャケットとスカートのセットアップで、爽やかなフレンチシックをイメージ。鮮やかな赤のボーダーTシャツで遊びを入れてかわいく仕上げてみました!」
PROFILE
1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年デビュー。女優、歌手としても活動中。千尋役を務める舞台『千と千尋の神隠し』が、現在英ロンドン・コロシアムで公演中。全国7都市を巡った「『yattokosa』Tour 2023」の東京公演を収めたLive Blu-ray&DVDと、ツアーを振り返るアフターパンフレットが発売中。
ジャケット¥88,000・スカート¥44,000/A.P.C. CUSTOMER SERVICE Tシャツ/スタイリスト私物
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Photos:Sodai Yokoyama Hair & Make-up:Tomoko Tominaga Stylist:Lisa Sato[BE NATURAL] Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y] Director:Taro Usuda Movie Camera:Satoki Nakazono
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上白石萌音と世界をガブリ!