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「どんなときだって、ごはんが幸せを運んでくれる」と語るごはん好きの上白石萌音さんと、世界の美食を巡る連載がスタート! 第1回は、彼女のルーツであるメキシコと日本の逸品を食べに行きます!
vol.1 JAPAN
小粋の名残
文・上白石萌音
世界を知るにはまず日本から! ということで、この季節にぴったりのお鍋をいただきに、「浅草一文」さんへ。
軒先で揺れる白い提灯(ちょうちん)に心躍らせ戸をくぐると、店内は和の情緒で溢(あふ)れ返っている。カラカラ廻(まわ)る水車、お手洗いの柄杓(ひしゃく)…まるで時代を駆けてきたみたい。
この上ない環境でいただく「ねぎま鍋」の起源は、江戸時代に遡(さかのぼ)る。それまで廃棄されていたマグロのカマトロという部位を、「もったいない」の精神で食べ始めたのだそう。見事な霜が降りた大間(おおま)の本マグロと色鮮やかな江戸東京野菜を、銅のお鍋でぐつぐつ煮込む。食べ頃を待つ間の焦(じ)れったさがたまらない。
遂(つい)に頬張った時、私はおいしさに思わず呻(うめ)いた。マグロから溶け出す上質な脂とその歯応えは、まさに肉と魚のいいとこ取り。江戸時代、思い立ってこのお鍋を食べた最初の人は、今日の私のように呻いたに違いない。「残さず美味(おい)しく食べる」日本人の心を感じるひとときだった。
古い日本家屋の戸をくぐると、昔ながらのぬくもりを感じる空間が広がる。さっそく江戸ねぎま鍋を頼むと、美しく盛りつけられた具材が到着。「せっかくだからきれいに作りたい」とご主人に尋ねながら、野菜、豆腐、マグロと慎重に入れていく萌音さん。しばらく鍋をのぞき込み、待ちきれない様子だ。
できあがったマグロをひと口食べると、おいしさのあまり「お〜ぃ△※□%」と言葉にならない。「ぜったい締めの雑炊もおいしいですよ! あ、うどんセットもある。悩んじゃう…けど、すごく幸せ〜(笑)」。
江戸ねぎま鍋
マグロとともに千寿ねぎや白菜、原木シイタケなどを味わうこだわりの鍋。濃厚なマグロの風味と野菜の甘みを楽しむ。2人前¥4,400〜(マグロと野菜の種類はメニューや季節によって異なります)。今回萌音さんが食べたのは「極上江戸ねぎま鍋」。
浅草一文本店
台東区浅草3の12の6
TEL:03(3875)6800
営業時間:18時〜22時、土日祝17時〜22時 無休(年末年始除く)
※営業に関する最新の情報は、店舗にご確認ください。
連載スタート記念。
萌音ちゃんと、湯気越し鍋トーク!
思い出と記憶にリンクする“おいしい”を体験したい!
メンズノンノで、しかも世界の料理を食べる連載が始まると聞いたとき、思わず「よっしゃ!」って言っちゃいました! どうやら私がごはん好きということを見抜いて、日本のレストランを巡りながら食を通して世界旅行をするというすてきな企画をくださったみたいで。しかも、今回は特別に2軒回らせていただき…よっしゃ!(笑)
私は、食べることが好きで、「今日は何食べようかな」って思いながら日々過ごしていて。おいしいごはんって、どんなに悲しいときもつらいときも、幸せな気持ちにしてくれるんです。敬愛する脚本家の坂元裕二さんがドラマ『カルテット』の中で書いた「泣きながらごはん食べたことある人は、生きていけます」という大好きなセリフのとおり、心とごはんと人生は切り離せないもの。ちなみに私は、仕事でうまくいかなくて、悔しさのあまり泣きながらカツ丼を食べたことがあります(笑)。それに、ごはんって気持ちと強く結びつくから、記憶ともリンクしますよね。思い出の味を食べたとたん、一瞬でそのときに戻れちゃう。
1軒目のフォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダでも、メキシコで過ごした家族との時間を思い出しました。店内は現地の雰囲気があって、撮った写真を見ても「私、メキシコに帰ってきた…?」って思ったくらい(笑)。思い出のごはんのひとつが、「ケソ・フンディード」。メキシコ風チーズフォンデュで、トロトロチーズに絡んだチョリソーをトルティーヤにくるんで食べます。口の中で濃厚なチーズが広がって最高。他にも、家族でリゾート地のカンクンに旅行したときに注文した魚介のマリネの「セビチェ」や、昔はチョコを使ったモレソースが苦手だったチキン料理の「ポジョ・コン・モレ・シルエラ」などなど、おいしさと懐かしさがあふれてる!
メキシコでも、よく日本の鍋を食べていました。父がブリ鍋を作るのが上手で、最後の雑炊までおいしくて! 上白石家は季節を問わず、運動会の前日や誕生日など、大事な日は必ずすき焼きを食べていて、鍋の出番が多い家(笑)。今もライヴや舞台の千穐楽(せんしゅうらく)にも鍋を囲みます。2軒目の浅草一文でいただいた「江戸ねぎま鍋」からも元気をもらいました。初めて食べたけど、ほっと安心する味。マグロの脂をしっかり感じながら、口当たりはあっさり。お野菜とも相性抜群です。メニューを見ると金額の単位が“文(もん)”で書いてあって、時代をタイムスリップした感じでワクワク。レトロな文化が若い人の中で再燃しているし、恋人や友達と来たら絶対楽しいですよね!
そして、この連載では、その国を連想させるような服を着たいと思っているんです。今回は、メキシコをイメージさせる配色の服に、デザイナーさんがメキシコの職人と制作しているネックレスを添えてタコスを食べ、日本の技術を生かした繊細な刺繍(ししゅう)やデザインを得意とするブランドのワンピースでねぎま鍋を味わいました。ファッションも含めて全身でその国を楽しみたいという気持ちでいます。この料理じゃないとこの食材と味は巡り合わないとか、同じ食材でもこんな使い方があるとか、“国ごとに違うこと”と“国が違っても同じこと”を発見していけたら楽しいなって。あと、その国の「おいしい」という言葉をどんどん学んでいきたいです!
MONE KAMISHIRAISHI
1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年のデビュー後、女優、歌手として活躍。近年の主演作は、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、舞台『千と千尋の神隠し』など。現在、ドラマ『記憶捜査3〜新宿東署事件ファイル〜』に出演。2023年にミュージカル『ジェーン・エア』が控える。
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Photos:Sodai Yokoyama Hair & Make-up:Tomoko Tominaga[Allure] Stylist:Lisa Sato[bNm] Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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上白石萌音と世界をガブリ!