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様々な競技で活躍する注目のアスリートにインタビュー。今回は、スケートボードの吉沢 恋さん。
SKATEBOARDING
― スケートボード ―
「ビッグスピンを磨き、
私にしかできない技に
進化させていきたい」
2021年の東京五輪を機に、いまや日本のスケートボード界は世界屈指の実力者たちがしのぎを削るハイレベルな競技シーンへと変貌を遂げている。そして24年夏のパリ五輪ではまた新たなスターが誕生。14歳で女子ストリートの金メダルを手にした吉沢恋だ。世界大会に出場するようになってから、たった2年ほどで頂点に立った若きスケボーアイコンの素顔に迫った。
「テレビで東京五輪を観ていたら、西矢椛さんがビッグスピン・フロントサイド・ボードスライドをメイクして優勝していたのでもしかしたら(その技ができる)私にもチャンスがあるんじゃないのかなって思い、そこから次のパリ五輪を意識するようになりました」
当時の彼女は小学6年生。その時点で、金メダリストが繰り出した大技をすでに習得済みだったというから驚きだ。幼少の頃から、家族のサポートを受けながら自宅近くのスケートパークでひたむきに技を磨いてきたという。
「父に動画を撮ってもらいながら、うまくいったときとできなかったときを見比べて何が駄目だったのかをお互い意見を出し合いながら常に研究しています。小さい頃はみんながすぐできるようなトリックの習得に時間がかかったり、私は決してスケボーの才能があるわけではないんです。だからこそ、ひたすら反復練習。同じ練習量ではみんなに追いつけないので」
そう、パリ五輪で彼女が見せた技の完成度と成功率はまさに地道な努力のたまもの。自身のスケーターとしての強みを「諦めずに続けられる」ところと言い切れるほど、とにかく練習の虫だ。
「昔から負けず嫌いで、難しいトリックも『ここでやめたら悔しさしか残らない』という思いで挑戦を続けてきました。ここまでうまくなれたのは練習あってこそ。でももっともっとレベルを上げていきたいので、これからもその姿勢で頑張っていきたいです」
15歳らしい、まっすぐなまなざしで将来のビジョンも語ってくれた。
「地元のパークに、滑っているだけで自然とスケーターたちが周りに集まってくるようなすてきなお姉さんがいるんです。その憧れの先輩のように、誰にでも優しく、スケボーをやっていない人からも慕われるようなスケーターになりたいです。そして競技では、今回の五輪で『吉沢恋といえばビッグスピン』というイメージになりつつありますが、その得意技を進化させながら、どんどん新しい技につなげていきたいと思っています」
吉沢 恋 COCO YOSHIZAWA
2009年9月22日生まれ、神奈川県出身。兄の影響で7歳のときにスケートボードを始める。地元・相模原市の公園やスケートパークで練習を重ね、2021年のストリート日本選手権、2023年のストリート世界選手権でそれぞれ5位に入賞。その後も着実に主要大会での上位入賞を続け、2024年のパリ五輪予選シリーズの上海大会で3位、ブダペスト大会では優勝を飾る。パリ五輪本大会では大技「ビッグスピンフリップ・フロントサイド・ボードスライド」を成功させ、大会最高得点の96.49をたたき出してみごと女子ストリートの金メダルに輝く。ACT sb store所属。
Photo:Kento Mori Interview & Text:Sayako Ono Composition:Kai Tokuhara
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