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様々な競技で活躍する注目のアスリートにインタビュー。今回は、レスリングの藤波朱理さん。
WRESTLING
― レスリング ―
「大ケガも自分の糧に。
記録よりも理想の強さを
突き詰めていきたい」
女子レスリング界に圧巻の白星街道を突き進む選手がいる。日本体育大学レスリング部の藤波朱理だ。記憶に新しいのは今夏のパリ五輪。決勝でも攻めの姿勢を貫き、隙のない試合を繰り広げて相手に1ポイントも与えずに金メダルを勝ち取った。
「パリ五輪はほどよい緊張感とともに、会場の雰囲気を楽しみながら試合に臨めました。決勝の相手は昨年の世界選手権で苦戦したジェペスグスマン選手。彼女が得意としている両足タックルの切り方や距離の取り方などを常に頭に入れながら毎日練習していましたし、前の対戦での反省を生かして自分から先に攻め込もうと決めていました」
今年3月には練習中に左ひじ脱臼と靱帯(じんたい)断裂という重傷を負ったが、アクシデントをものともしない圧倒的なパフォーマンスで五輪を駆け抜けた。
「当時は五輪に間に合うのか不安になり、かなり落ち込みました。ただ、自分に起こることすべてに意味があると思い、すぐに気持ちを切り替えて食生活の見直しや走り込み、下半身トレーニングなど、できることから着実にこなしていきました。おかげで下半身の安定感が増し、以前よりもスタミナもつき、復帰直後からイメージどおりに体が動きましたね。振り返るとあのケガがもう一段自分を強くしてくれたのかなって。きっと金メダルをとるために必要な経験だったのだと思います」
最高の大舞台で強さを証明した藤波。中学からの公式戦無敗記録を継続中だが、彼女自身は連勝へのこだわりはない。追い求めるのは、理想とする強さを身につけることだけだと語る。
「シンプルに言うと、見ていて面白いレスリングがしたい。パワーのレスリングではなく、いろんなところから繰り出す技だったり、相手の力を利用した攻撃だったり、技術や動きで勝負するレスリングが理想です。今後はひとつ上の57㎏級へ上げることも考えています。4㎏の増量は未知の世界ですが、まだまだ『自分には強くなれる余地がある』と信じてチャレンジしてみようと。いけるところまで強さを突き詰めて、まずは2年後、地元に近い名古屋で行われるアジア大会の優勝をめざしていきます!」
藤波朱理 AKARI FUJINAMI
2003年11月11日生まれ、三重県出身。父と兄の影響を受けて4歳からレスリングを始める。小学生の頃から早くも頭角を現し、全国少年少女選手権で4度の優勝を果たす。その後も高校1年で53kg級のインターハイチャンピオンに輝き、2年時には全日本選手権で初優勝し、翌年も連覇を果たす。また高校3年生で初出場した世界選手権でもみごと優勝を飾る。日本体育大学進学後は全日本選抜選手権で2連覇、そして2023年の世界選手権、アジア大会、今年のパリ五輪と勝ち続け、現在、中学時代からの公式戦連勝記録を137まで伸ばしている。
Photo:Hiroki Oe Interview & Text:Sayako Ono Composition:Kai Tokuhara
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