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昨夏の東京五輪の記憶が色褪せない中、2月4日から北京冬季五輪がスタート! そこで、4年に1度のウインタースポーツの祭典でまばゆい輝きを放つスキージャンプ界のスノーボード界の次世代ヒーローを大フィーチャー! 冬だけれどとびきりアツい、秘めたる五輪への思いとは!?
戸塚優斗/Yuto Totsuka
Competition:Snowboarding
自分がやりたい技を完璧に決めきる。
北京ではそこにフォーカスしたい
近年、競技レベルが加速度的に進化しているスノーボード・ハーフパイプ。それを牽引しているのは間違いなく戸塚優斗である。ハーフパイプといえば五輪で3度の金メダルに輝いているアメリカのショーン・ホワイト、そして4年前の平昌五輪でそのショーンとスポーツ史に残る金メダル争いを繰り広げた平野歩夢を真っ先に思い浮かべる人が多いだろう。しかし平昌以降、彼らが東京五輪をめざして雪山を離れていた間、戸塚は急成長を遂げてシーンのトップコンペティターへと躍り出た。圧巻だったのは2020年から2021年にかけての1年間。USオープン初優勝を皮切りにLAXXオープン、X-GAMES、FIS世界選手権と「4大大会」で4連勝。「フロントサイド・ダブルコーク1440」(らせん状に縦2回転+横4回転)や「キャブ・ダブルコーク1440(逆足スタンスから縦2回転+横4回転)といった超高難度の技を惜しげもなく繰り出すアグレッシブなスタイルでシーンを席巻したのだ。
「とくにX-GAMESが心に残っています。ずっと、常に一歩先を行くショーンや歩夢くんを見ながら早く追いつきたいという思いでやってきた中で、あのX-GAMEでは4本のライディングすべてで自分のやりたい技をパーフェクトに決めることができたので納得のいく大会になりました。みんなができる同じ技であっても、ルーティンの順番だったり、ジャンプの高さだったり、自分なりの個性を表現することをより強く心がけるようになったことがいい結果につながったんじゃないかなと思います」
飛躍の糧になっているのは、16歳で出場した平昌五輪でのリタイア。2回目の滑りで転倒して負傷し、3回目に臨むことができずに失意に暮れた。
「3本滑り切ることができずに終えてしまったことが何より悔しかったです。だからこの4年間は、平昌で自分に足りていなかったところを徹底的に強化しつつ、新しい技をどんどん取り入れながら同時にジャンプの高さを出すことにもこだわってきました。ずっと課題だった『スイッチバック』(逆のスタンスから後ろ向きの踏み切りで技に入ること)ができるようになったことでルーティンの幅も広がりました」
語り口は常に淡々としていて表情を変えることもあまりない。しかしそのクールな佇まいの裏に秘めたあくなき向上心が、新時代のハーフパイプモンスターをつくりあげようとしている。
「競技レベルは今後もどんどん上がっていくと思うので、僕自身、さらに誰もやったことのない技にトライし続けながら、これからのハーフパイプシーンを引っ張っていきたいんです」
圧倒的な高さと完成度を誇る彼のルーティンがミスなく決まれば、金メダルの可能性は十分にある。しかし慢心は一切ない。北京では“あの2人”がハーフパイプに戻ってくるからだ。
「歩夢くんがスノーボードに復帰してから練習を見させてもらったんですけど、相変わらず『すげぇな』っていう滑りをしていましたし、ショーンも久しぶりに大会に戻ってきてさらっとレベルの高い技を出していて自分ももっと頑張らなきゃって身が引き締まりましたね。北京では何より3本しっかり滑り切りたい。その中でやりたい技がすべて決まったとして結果がどうなるかはわかりませんが、逆に完璧に滑ることができて金メダルに届かないのなら納得ができる、そのくらいの気持ちで思い切ってトライしたいです」
レジェンド強しか、世代交代か。北京五輪のハーフパイプ決勝は4年前を超える激闘になるかもしれない。
Profile
2001年生まれ、神奈川県出身。3歳でスノーボードを始め、高校1年時に初参戦となったFISワールドカップでハーフパイプ総合優勝。2018年平昌五輪は無念のリタイアだったものの、2020年のUSオープン、2021年のX-GAMESと世界屈指のビッグトーナメントを立て続けに制覇。
Composition&Text:Kai Tokuhara Photos:AFLO Getty Images
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