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昨夏の東京五輪の記憶が色褪せない中、2月4日から北京冬季五輪がスタート! そこで、4年に1度のウインタースポーツの祭典でまばゆい輝きを放つスノーボード界の次世代ヒロインを大フィーチャー! 冬だけれどとびきりアツい、秘めたる五輪への思いとは!?
村瀬心椛/Kokomo Murase
Competition:Snowboarding
初めて五輪のスタート台に立って、
どんな景色が見えるのか楽しみです
初めて筆者が村瀬心椛のライディングを目にしたのは、2018年3月にコロラドで開催されたUSオープン。ジェイミー・アンダーソンやアンナ・ガッサーら平昌五輪メダリストたちに囲まれながらも物おじしない滑りで4位に入賞した13歳を目の当たりにし、すごい逸材が出てきたと身震いした。2か月後、彼女は女子選手として初めて成功させた「バックサイド・ダブルコーク1260」(縦2回転・横3回転半)をひっさげX-GAMESオスロ大会を史上最年少で制し、一気に脚光を浴びる。そこから約4年、17歳になった彼女は金メダル候補としてついに初めての五輪に挑んでいる。
「五輪は小さい頃からの夢だったので、4年前は平昌五輪に年齢制限で出られなくてすごく悔しい思いをしていました。そこから『次は必ず出場する!』という気持ちを強く持って自分の技を磨くことに集中してきました」
出場するのは1本の大ジャンプで技を競う「ビッグエア」と、レールやキッカーなど様々なコース上の障害物をテクニカルにクリアしていく「スロープスタイル」の2種目だ。
「ビッグエアは一発集中、スロープスタイルはいろんなセクションがあるので常にワクワクしながら滑る感じですね。初めての五輪なので、どちらもスタート台に立ったときにどんな景色が見えて、そこでどんなことを感じるのかがとても楽しみです! メダル、メダルと気負わずに、いつもどおりのテンションで挑戦したいです」
しかしながら、ここまでの道のりは決して平たんではなかった。2018年12月、海外での練習中に右膝蓋骨を骨折、つまりひざの皿を割ってしまい、長期の治療とリハビリで1年近く雪上に立つことができなかったのだ。
「初めての大ケガ。スノーボードができない期間はとてもつらかったですし、焦りもありました。でも友達からたくさん励ましのLINEをもらったり、同じ時期にケガをした選手がSNSでトレーニング姿をアップしているのを見て、このケガを次にどうつなげよう、ケガする前よりも強くなるにはどうすべきかなどを考えながら『必ず治して、もう一度スノーボードを滑る』という気持ちを強く持とうと心がけました」
思わぬアクシデントによって1シーズンを棒に振ったが、そのことで得られたことも大きかった。
「復帰してからは他の選手よりも『自分に勝つ』という気持ちで試合に挑むようになり、そういうふうな考え方に変わってから表彰台に立てることが増えたと思います。負けず嫌いな性格もより生きるようになりました」
スノーボードに対してはとことんストイック。しかし素顔はまだまだあどけない17歳の高校生。海外の雪山を飛び回るシーズン中は家族とのコミュニケーションも欠かせないという。
「オフの時間は音楽を聴いて過ごしたり、大好きな両親や妹と電話で話したり。ときには妹がギターを弾いて私が歌を歌う、みたいなことをオンラインでしたりもします(笑)」
そんな彼女が人知れず、日本にいるときも海外でも肌身離さず持ち歩いているのが小学4年生の頃から書き続けているという「ノート」だ。
「練習の後に気になった点や、大会の目標とそこに向けて何をすべきかなどを毎日書いていて、試合のときはそれを読み返したりしています。実はひざをケガしたときはそのノートを日本に忘れてきてしまっていたんです。それ以来、やっぱり私はこれを常に持っていないとダメなんだなと思って、より大切にするようになりました」
北京五輪の後、その「心椛ノート」にはどんな言葉が書き込まれるのだろうか。実に楽しみである。
Profile
2004年生まれ、岐阜県出身。4歳でスノーボードを始め、小学5年でプロに。2018年には13歳でビッグエアのX-GAMESオスロ大会を制覇し、世界ジュニア選手権ではビッグエアとスロープスタイルの2冠に輝く。今季は両種目でFISワールドカップ初優勝。ムラサキスポーツ所属。
Photos:Monster Energy(competition) Lee Ponzio(portrait) Kyodo News/Getty Images(podium) Composition&Text:Kai Tokuhara
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