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スキージャンプ髙梨沙羅「変化を恐れず、チャレンジしてきた」#2022年北京五輪「冬の主役」たち、オリジナルインタビュー

スキージャンプ髙梨沙羅「変化を恐れず、チャレンジしてきた」#2022年北京五輪「冬の主役」たち、オリジナルインタビュー

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昨夏の東京五輪の記憶が色褪せない中、2月4日から北京冬季五輪がスタート! そこで、4年に1度のウインタースポーツの祭典でまばゆい輝きを放つスキージャンプ界の若きレジェンドを大フィーチャー! 冬だけれどとびきりアツい、秘めたる五輪への思いとは!?

髙梨沙羅/Sara Takanashi
Competition:Ski Jump

変化を恐れず、チャレンジしてきたことで視野が広がりました

15歳でのFISワールドカップ初優勝以来、これまで男女通じて同大会最多の61勝、110回の表彰台を記録するなど女子スキージャンプ界を牽引し続けている髙梨沙羅。北京冬季五輪を間近に控えた1月某日、ヨーロッパ滞在中の彼女にオンラインでインタビューすることができた。

「記録に関しては、普段から意識して試合に出ているわけではないので周りの方々から『おめでとう』と言われて初めて気づくことも多いんです。だから自分にとってはそれほど重々しいことではなくて、今までがむしゃらにやってきたことに対してついてきてくれたものだと考えています」

輝かしいキャリアを歩みながら、髙梨沙羅がいまだつかめずにいるのが五輪の金メダル。悲願に向けて、彼女はこの4年、自身のジャンプをゼロからつくり直すことに心血を注いできた。

「平昌五輪が自分の持てる力をすべてぶつけての3位。その結果を受けて『この先は世界で戦っていけない』と痛感したんです。だから思い切ってすべてを変えてみようと。スキージャンプはスタートから着地まで一連の動きの連動性が重要な競技なのですが、まずスタートとアプローチの方法を変えたことで自然とテイクオフ、空中での姿勢も大きく変わっていきました」

トップアスリートが培ってきた技術やスタイルを変えることは実に勇気がいる。もちろん葛藤はあったという。

「とくに最初の1、2年は試行錯誤を繰り返す中でイメージと体がリンクしない時期が続いて苦しかったです。一時は元に戻すべきなのかと考えたこともありました。それでも自分が本当になりたい姿を追求するためには変化が必要だと信じてやってきました」

4年の歳月を費やして追い求めた理想型は、外国人選手たちとの体格の違いをスピードで凌駕するジャンプだ。

「この小さな体でどうやってより高く、より遠くへ飛ぼうかと考えたときに、いかにスピードを殺さずにテイクオフにつなげられるかがカギになると考えました。年明けのワールドカップで勝てたことで、思い描く形ができあがってきた手応えを感じています」

向上したのは技術のみならず。思考の幅も大いに広がったという。

「以前は確立したスタイルを少しもずらしたくないという考え方でした。それまでやってきて結果につながった練習以外は切り捨ててしまっていましたから。しかしそれだと『今のジャンプを守ることはできてもこれ以上の上積みはない』ととらえ、より広い視野を持ったことで新しい引き出しを蓄えることにつながったのかなと思います」


「オフは自然の中で写真を撮ったり、部屋で本を読んだり、たまにスニーカーのお手入れをしたり」と、欧州遠征中は制約が多い中でもうまく切り替えながら自然体で過ごしたという。

25歳にしてこの北京大会が3度目の五輪出場となる。2014年のソチ五輪は4位、2018年の平昌五輪では銅メダル。髙梨自身はその経験を原動力にしてきた。

「ソチは勢いに任せて臨んだ結果、本大会になってあれこれ考え始めてしまって飛べなくなってしまいましたし、平昌では『自分のやるべきこと』に固執しすぎて視野が狭くなりすぎました。その2大会の結果が今の自分を生かしてくれています。だからこそ北京ではこの4年間で成長した姿というものをしっかり見せたいと思います」

静かだがじわりと熱を帯びるその語り口から、まさにキャリアの集大成に挑む意気込みが伝わってくる。

「北京をめざしすぎていて(笑)、実はその後のことは何も考えていないんです。とにかく北京五輪を全力で突っ走りたいと思います」

スキージャンプ女子ノーマルヒル決勝は2月5日。はたして髙梨沙羅はひたむきに追い求めてきた高みへと到達できたのか。この号が発売される頃にはその答えが出ている。

Profile
1996年生まれ、北海道出身。小学2年でスキージャンプを始め、15歳の頃にFISワールドカップで日本人女子初優勝。以来、個人総合優勝を4度達成し、歴代最多61勝・110度の表彰台記録を持つ。2014ソチ、2018平昌、2022北京と冬季五輪3大会に出場。クラレ所属。

Photos:Getty Images(competition) Tomaz Druml(portrait) Composition&Text:Kai Tokuhara

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