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WEB SPECIAL EDITION
昨年春、宮沢氷魚がインカ王・アタワルパという大役に挑んだものの、コロナ禍でわずか10回という幻の上演となった舞台『ピサロ』。この作品がアンコール公演として再演されることに! 5月15日(土)の初日を前に、PARCO劇場で前日会見と公開ゲネプロが行われ、我らが宮沢氷魚が主演の渡辺謙さんと登壇した。
会見と公開ゲネプロの様子はこちら!
そして、今日からの再演を記念して、特別短期連載がスタート。昨年、宮沢氷魚が表紙を飾った際のインタビューの未公開部分と、未公開カットをたっぷりプラスしてお届けする。
第1回は、キャリアをスタートさせた「モデル」の仕事と、目覚ましい勢いで活躍の幅を広げている「俳優」という仕事について。そして、自身の仕事にも大きな影響を与えている「コロナ禍」についても語ってくれた。
モデルの氷魚と、俳優の氷魚。
―――順調にキャリアを重ねていて、さらに演技の仕事もどんどん増えているよね。その2つって氷魚の中でどんなふうに作用しあってるのかを教えてもらってもいい?
「まずそもそもこの世界に入って最初の仕事が、メンズノンノモデルだったんですよ。いろんなオーディションに34連敗して、初めて受かったのがメンズノンノなんです。そこからも急に仕事が増えるわけじゃないですし、狙っていたものが決まらなくて悔しくて電車に乗れなくなったこともありました」
――そこからの5年というのは、あっという間だった?
「そうですね。でも今でも覚えてますよ、メンズノンノのオーディションのことは。集英社のスタジオに呼ばれて行ったら、大人がずらーっといて、腕組みして見ていて(笑)」
――オーディションを振り返る話題になると、モデルたちがみんな「怖かった」と言うよね(笑)。
「緊張してるとそう見えるんですよ(笑)。でも、モデルになってメンズノンノの撮影現場に初めて立ったときは本当に感動しました。僕にとっては、モデルの現場がルーツというか、自分はモデル出身だと思っているし、実際そうだし、だからその他のお芝居の現場だったりとか、バラエティとかに行っても、メンズノンノの現場に戻ってくるとなんだか安心します。家に帰ったような感じがありますね」
――ホーム感?
「まさにそうですね、ホーム感はやっぱりあります。お芝居を始めてまだ2年半とか、3年経たないくらいなんですけど、すごく僕自身は試行錯誤している最中で、迷ったり、失敗したりすることがまだまだあります。自分が試される場では、どうしても精神的にも体力的にもちょっとまあ、疲れちゃって、いっぱいいっぱいになる時もあるんですけど、そういう時にメンズノンノの現場がひとつ入っていると、テンションが上がります。そこでストレスを発散することができるという感じなんですよ」
――それは編集部としても嬉しい。
モデルの経験培ったものが、俳優の仕事で生き、そしてまたホームに戻る
「だからその、僕にとってはすごくバランスがいいというか、メンズノンノのモデルじゃなくなったらどうなるんだろうっていう不安がちょっとあって。動画と静止画という意味での違いなどはありますが、お芝居とメンズノンノの撮影とを比べると、何かを表現するっていう意味では僕は一緒だと思っています。モデルの現場だったら服をいかにカッコよく見せるか、それと、自分をいかにカッコよく見せるかっていうバランスを考えたりします。で、お芝居も自分のキャラクターどう見せるか、感情・気持ちをどう見せるかっていうことを考えるので、そこは結構似ているところがあると思っているんです。だからドラマの現場とかに行くとよく“慣れているから、すごくカメラ映りがいいよね”と言われます。それは間違いなくメンズノンノで培ったもので、撮られた写真とかをいろいろ見返して、“ああ自分のこういう角度がいいんだ”とか、見せ方を研究したからこそドラマや映画でもプラスになっているんじゃないかなと思います。そしてワンクールドラマをやってメンズノンノに戻ってくると、今度はスチールのカメラマンの方に“すごい変わったね、めちゃくちゃいいよ”って言われることが多くて、そうやって両方がお互いにプラスに動いている気がしていて」
――すごくいい形で影響しあっているんだね。
「そうなんです。映像の現場は映像の現場で、モデルの仕事では見せない顔をするので、そういう意味ではきっと表情とか見せ方が豊かになっていると思うんです。この間もメンズノンノの現場で言われました。“なんかワンクール終わって、別人になったね”って。“自信みたいなものもすごく見えて、最高だよ”って。そういう時がもう一番嬉しくて、どちらもやっててよかったなと思います」
――去年はメンズンノンノの6月号を撮影していた頃、舞台『ピサロ』の公演をしていたよね。別冊付録の『MEN’S NON-NO HAIR BOOK』のカバーを撮った日も、公演が終わったパルコ劇場から飛び出してきてくれて…。
「そうそう! 劇場とスタジオが近くて、終わってすぐに行きました」
――あのときもそういえば、その場にいたスタッフたちが“氷魚の雰囲気が全然違うね”と話していたよね。キレがある感じだったというか。
「そうですね、役をひきずるとかではないと思うんですけど、何か意識の問題というか、舞台中は常にアンテナがどこかに張っていて。そういうことって普段の生活ではなかなかない分、何か作品に入ると雰囲気が変わるというのはあると思います。それぞれいい形で作用しあうのが、自分にとってはバランスがいいですね」
コロナ禍の中で実感した「当たり前」のありがたさ
―――舞台『ピサロ』の話が出たけれど、新型コロナの影響で残念ながら公演中止になってしまったよね。雑誌も、撮影で人数制限がされたり、安全の条件を満たさない場所では撮影ができなくなったりと、とにかく前とは違った環境になっているのだけど、そういう中で氷魚が感じたこととか、考えたことはある?
「そうですね。僕たちが今まで普通に生活をしてきたことが、当たり前だと思っていましたけど、こういうことになって当たり前じゃなかったんだなぁって。そういう日々を思い返すと、僕たちはすごく恵まれていて、幸せに自由に毎日過ごしていたんだっていうのを改めて感じたというか。でも人間て不思議なもので…コロナがいつか落ち着くことが前提で話してますけど、落ち着いたときに、ちょっと時間が経つとその時のつらさっていうのを忘れてしまうんではないかと。それをちょっと心配しています。これまでも、疫病が原因のパンデミックというのは起きていますよね。スペイン風邪とか、ペストとか。でも、今生きている僕たちのほとんどは、初めて今回世界的なパンデミックを経験しています。だから落ち着いた後に、それをどう今後に生かしていくべきなのかということを、すごく考えますね。表に出て表現する僕たちとしては、それができなくなるっていうことがやっぱりつらかったので…」
――そうだよね。みんな初めてのことだったね。
「その時に僕たちの無力さを感じて。何もできないし、何も表現できないっていうつらさを感じました。でもその分、ありがたみというか、責任感というものを日々感じていますね」
――自粛期間中はどう過ごしていたの?
「それこそ公演中の舞台だった『ピサロ』が中止になって、予定していた別の舞台も中止になっちゃったんで、そういう意味ではその期間は無職というか、どん底っちゃあどん底とも言えたんですけど、もう前向きに考えるしかないなと思っていましたね。今はやっと、上演方法などいろいろ工夫をすることで、希望の光がなんとなく少し見えてきたような気がしています。油断はしていないですが、コロナと共存する方法を考えないとな、と。ほんと4月、5月あたりは今後どうなるかわからなかったし、いろんなニュースも飛び込んできて、ちょっと落ち込みましたけど今は前向きに頑張ろうと思っています」
――前向きでいることを、意識している?
「どちらかというと、僕は前向きなほうだとは思います。でも前向きだからこそ、まわりにそう見られちゃうのがしんどいこともありますね。常に前向きってわけじゃないじゃないですか、人って。どんなに前向きな人でも。だからどうしても落ち込むことがあったときに、そこで “前向きだよね”って言われると、どんどん落ちていっちゃう可能性は、やっぱり誰にでもあると思うんですよね。今のところ僕はまだそこまでは体験していないですけど、そうなる可能性も十分にあると頭に置いておいたほうがいいなとは思っています。だから“ストイック”っていうのも、いい面もあるし悪いところもあるんですよ。息抜きはうまくしていく必要があるというか、バランスをつねに保たないとなと感じています。特に今はSNSで何が拡散してしまうかわからないですし、それが原因で傷つく人も多いですよね。自分はそうならないでしょうって思わずに、無理をせずいきたいですね」
――特にこういう状況下では、自分を労ることは大切だよね。
「本当にそうですね!」
――昨年好評だった『氷魚美容』の特集の時も、自分に心地いい時間や空間をつくるのを意識的に大事にしているって言っていたよね。
「そうですね、僕はリラックスする時間をすごく大事にしてて。でも、その後考えたんですよね。リラックスする時間を欲しているってことは、裏を返せばけっこう普段ストレスたまっているのかなって(笑)」
――な、なるほど…。
「だからそこで、まだリラックスをしたいって思えてるうちはいいですけど、それでできなくなった時が怖いなーと思って。どんどんそのストレスなりプレッシャーなりが合わさっていって、本当の自分がなくなっちゃったら大変だなぁと。だからこれまでは、もうがむしゃらにやってきたんですけど、最近は“今自分のできるパフォーマンスとできないパフォーマンス”ってものっていうのが、結構はっきりわかってきたんで、無理をしないようにしています」
――すごくいいことだね。
「もちろんなるべくできるようにはしているし、今だめでもいつかはできるように…って、段階を上がって辿り着きたいんですけどね。でも0から100はやっぱり難しいんで、そこは自分にあまり無理をさせずに、“ああ、こういう要望がきたから、今はできなくても次会うまでにはできるように”っていうスタンスにしていますね」
『ピサロ』公演情報
PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』
日程:2021年5月15日(土)~6月6日(日)
会場:PARCO劇場
作:ピーター・シェーファー
翻訳:伊丹十三
演出:ウィル・タケット
出演:渡辺謙 宮沢氷魚 栗原英雄 大鶴佐助 首藤康之 外山誠二 長谷川初範 ほか
※公演スケジュールは変更になる場合があります。感染症拡大予防に対する取り組みなど、最新情報は下記から
PARCO劇場公式サイト『パルコステージ』
第2回は、メンズノンノ専属モデルとしての5年間について。5月16日公開、お楽しみに!
※このインタビューは、メンズノンノ2020年11月号の、宮沢氷魚表紙撮影時に行いました。
Photos:Saki Omi[io] Hair & Make-up:NOBUKIYO Stylist:Yoshiaki Komatsu Model:Hio Miyazawa
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