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BL・GLドラマやホラー映画などのグローバルヒットが続き、世界中から熱い視線が注がれるタイのエンタメシーン。作品のヒットを機にスターダムを駆け上がったタイの俳優たちは世界各国でイベントを開催したり、ハイブランドのアンバサダーに続々と起用されたりと、ボーダーレスに活躍している。
日本でもタイエンタメの人気は年々上昇しており、今年1月には、タイの大手制作会社で、芸能事務所でもあるGMMTVを代表する人気俳優たちが集結した大規模なコンサート「GMMTV FAN FEST 2025 LIVE in JAPAN」が開催された。来日した俳優6人のインタビューが実現し、3日連続、3回に渡って記事をお届けする。
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第一弾は、「タイBLの金字塔」と呼び名の高い『SOTUS /ソータス』の主役ペア、Krist Perawat(クリス・ピーラワット)&Singto Prachaya(シントー・プラチャヤー)。本作を通じてグローバルスターとなり、日本でも何度もファンミーティングを開催してきた。
2016年に放送された本作は、タイで大きな議論を巻き起こした大学の教育制度をテーマにし、異例の大ヒットを記録。やがて人気は海外でも広がり、タイBLを世界に知らしめた名作の一つだ。主人公2人を演じたKristとSingtoは、実はもともと同じ大学の先輩・後輩で、本作のテーマとなった教育制度を通じて知り合ったという。
インタビューでは、二人の出会いから学生時代の思い出、タイにおける社会の変化までを、じっくり質問。ジャケット×デニムのリンクスタイルに身を包んだ2人をとらえた、メンズノンノだけの撮り下ろしカットも見逃せない!
タイBLの金字塔『SOTUS』の成功は
すべてが奇跡のようだった
――大学の先輩・後輩として出会い、2016年に放送されたドラマ『SOTUS /ソータス』で初共演したお二人。MEN’S NON-NO初登場ということで、改めて、出会ったときの第一印象を教えてください。
Singto 大学の後輩だったKristの第一印象は、アクティブな人気者。イケメングループの一人で、いつも大勢の人に囲まれていたから、すごく目立っていました。Kristは僕の友達と同じ部活でドラマーをしていて、友達からも熱心な後輩だと聞いていたし、学内のアクティビティに積極的に参加していたので、印象はとても良かったです。
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Krist タイの大学には当時、SOTUS(※)と呼ばれる制度があり、P’Sing(Singtoさんの呼び名)はそのリーダーを務めていました。キリッとして近寄りがたいオーラを放っていたから、僕は怖くて話しかけられなかったんです。しかし翌年、今度は僕がSOTUSのリーダーに就任することに。アドバイスをもらうために勇気を振り絞って話しかけたら、P’Singはとてもフレンドリーな人でした。見た目と違って話しやすく、全く怖くなかった!
※SOTUSとは、Seniority(序列)、Order(秩序)、Tradition(伝統)、Unity(統一)、Spirit(精神)の頭文字をとった言葉。主に4年生がリーダーシップをとり、新入生の学校生活のサポートや、学生同士の交流を育むための活動を行なっていた。
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――SOTUS制度は『SOTUS /ソータス』の題材にもなっており、とても厳しい上下関係が描かれています。タイには、今も同様の制度があるのでしょうか?
Krist 僕がリーダーを務めた年を最後に、タイ全土の大学で廃止されました。作中でも描かれていますが、SOTUS制度には良い面もあれば悪い面もあった。先輩がリーダーの立場を利用して後輩に嫌がらせをする、といった事例が次々と明るみになり、問題視されるようになったんです。
――お二人は『SOTUS /ソータス』をきっかけにブレイクし、世界的な知名度を獲得されました。改めて、本作に対する想いをお聞かせください。
Krist 『SOTUS /ソータス』の反響は、いい意味で予想外でした。タイでヒットした時点で、僕らにとっては十分すぎるほど嬉しい結果だったんです。海を渡って世界中で愛される作品になるなんて、想像もできなかった。
Singto うん、本当にビックリした。
Krist それによって僕らは海外を訪れる機会が増え、さまざまな国のファンと会うことができました。世界中に友達ができた感覚です。日本の友達、インドネシアの友達、中国の友達…友達が増えれば増えるほど、色んな知識や経験を得ることができた。『SOTUS /ソータス』で、僕らの人生は180度変わりました。
Singto ドラマに出演できたことも含めて、全てが奇跡のように感じる。ファンミーティングをするようになると、ステージで歌ったりトークをしたり、できることが増えた。それによって、僕の人生はとても豊かになりました。『SOTUS /ソータス』を通じて得た出会いも経験も、全部かけがえのない宝物です。
個々での活動を経て、ペア復活
「二人のほうが何倍も楽しい」
――2021年、SingtoさんがGMMTVとの契約終了とともに独立し、お二人は別の道を歩むこととなりました。個々での活動を経て、関係は変化しましたか?
Singto 独立した理由は、自分がやりたいことに挑戦してみたかったから。その後もKristとはずっと連絡を取り合っていたし、会って一緒にゲームをしたりしていたので、環境の変化はあまり感じませんでした。変わったことといえば、仕事の話をしなくなったことくらい。一緒に活動していたときは二人での仕事について話し合っていたけれど、共演することがなくなり、自然と仕事の話をする必要がなくなったんです。
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――2023年にSingtoさんがGMMTVと再契約し、新たな共演作『The Ex-Morning Series』が発表されました。また一緒に活動することが決まったときの心境を教えてください。
Krist ファンの皆さんにいいニュースを届けられることが何よりも嬉しかったです。本当に長い間、お待たせしました!と。僕らのファンは、『SOTUS /ソータス』というたったひとつのシリーズで僕らを愛し、10年間も一緒に歩み続けてくれた。新しい作品を届けられることになり、ようやく恩返しができるとホッとしています。
Singto 次回作について、僕はKristよりもかなり早い段階で知っていたんです。僕がサプライズで伝えたかったのに、いつの間にかKristも知ってしまって。その点だけ、ちょっぴり残念でした(笑)。
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――『The Ex-Morning Series』の撮影はすでに始まっていますか?(※取材は1月中旬に行われた)
Krist&Singto (声を合わせて)まだです!
Singto 脚本を作っている途中なんですよ。少し先になりますが、楽しみにしていてください。
――久しぶりに一緒に仕事をして、お互いの変化や成長を感じますか?
Krist 感じます。今日もテレビの収録をしたり、雑誌のインタビューを受けたりする中で、お互いに成長したな!と思った。二人ともできることが増えたよね?
Singto そうだね。僕は、久しぶりにKristと仕事をして、やっぱり楽しいな!と感動しました。個人で仕事していたときの何倍も楽しい。
どちらかの我慢で成り立つ関係は
絶対に続かない
――出会ってから10年ほどのお付き合いになると思いますが、良好な関係を継続する秘訣は? 正直な気持ちを伝えられなかったり、仕事で忙しく友人と距離ができてしまったりと、友人関係に悩むMEN’S NON-NO読者に向けてアドバイスをください。
Singto 真逆といえるほど性格の違う僕らが良い関係を保てているのは、たくさん話し合っているからだと思う。コミュニケーションを重ねながら、僕はKristのことを、Kristは僕のことを深く理解し、信頼関係を築いてきました。信頼する相手ならば嫌われることを恐れず、どんなことも伝えられるはずです。
Krist (深く頷きながら)うんうん。シンプルだけど、共通の趣味があると会う機会が増えるんじゃないかな。僕とP’Singはどちらもゲームが趣味で、家で過ごすのが好き。そういった共通点がひとつでもあれば、自分から誘いやすいですよね。
Singto それから、不満を溜めないことも大事! どちらかが我慢することで成立するような関係は、絶対に続きません。お互いに歩み寄りながら解決策を見つける過程で、信頼がさらに深まりますよ。
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――お二人が『SOTUS /ソータス』で演じたアーティットとコングポップも、何度も衝突しながらお互いの理解を深めていきましたね。お二人は大学在学中、上下関係で悩むことはありましたか?
Singto 先輩の命令に従いたくなくて、反抗したことがあります。これは一例ですが…タイの大学には制服があり、先輩が後輩の身だしなみをチェックしては、「きちんと着ろ」と指示していたんです。そう言う本人は制服をだらしなく着ていて、全く説得力がなかった。自分のことは棚に上げて他人にダメ出しするような人は尊敬できないし、従いたくなかったんです。
Krist その通りだと思う。
Singto だから僕は、自分ができないことは後輩にも求めないと心に決めました。僕自身が尊敬できて、従いたいと思えるようなリーダーになろう、と。
Krist 僕も3年生になるまでは、先輩が怖くてビクビクしていました。でもSOTUS制度を通じて先輩と話さざるを得なくなり、そのおかげで先輩と仲良くなれた。怖いと思っていた先輩は僕を気にかけて、困ったときには相談に乗ってくれたり、様々なアドバイスをしてくれました。
Singto そうそう、良い面もたくさんあったよね。
Krist SOTUSが廃止された後の世代に話を聞くと、先輩と後輩が交わる機会はほとんどないそう。先輩と話したくなければ話さなくていい、という考えを否定する気はないのですが…僕自身は先輩から学ぶことがたくさんあったし、それらが今に活きているとも感じる。少し複雑な気持ちです。
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KristSingtoが思う、タイの社会で
変わってほしいこと、ほしくないこと
――日本でも上下関係がとても厳しい時代がありましたが、時代の流れと共に変化し、「年長者が偉い」という意識は弱まってきています。タイでは、そういった風潮はありますか?
Krist タイも日本と同じように、すごく変化したと思います。
Singto 昔と比べて、「年長者が偉い」という感覚はだいぶ薄れてきたよね?
Krist うん。最近は年齢よりも、人間性や才能が重視されているよね。「リスペクトできない先輩ならば、遠慮しなくてもいい」という社会のムードを感じます。とくにZ世代以降の若者は、そういう意識が強いんじゃないかな。
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――上下関係のように、時代によって文化や風習が変化することもありますが、お二人が「変わってほしくない」、もしくは「変わってほしい」と感じるタイの文化や風習があれば教えてください。
Singto タイでは、挨拶がわりに相手の外見的な変化を指摘する人が多いんです。文化というよりも、クセというのが正しいかな。よく聞くのが、「あれ、太った?」といったネガティブな言葉。そんなことを言われて嬉しい人はいないですよね。ポジティブな言葉を掛け合うほうが、お互いに気持ち良くなれるのに…と悲しくなります。他人の外見を自分の基準で判断しないこと、そして相手が傷つく可能性のある言葉を発しないことの重要性が広まり、人々の言動の変化につながることを強く願います。
Krist 僕は、人間性や才能で評価される現代の風潮がもっともっと広がってほしい。年齢や立場、地位によって尊敬されるような文化は、人の成長を止めてしまうから。評価基準が変われば、人はより良い人間になろう、自分の才能を高めようとするはずです。そして年齢や立場といったしがらみに縛られずに、自由に豊かなコミュニケーションが取れるようになる。高みを目指す人同士がお互いをリスペクトし合い、支え合っていくことで、社会はより良い方向に進めると信じています。
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Singto Prachaya(シントー・プラチャヤー) さん
1994年7月28日生まれ、タイ・バンコク出身。2016年、Kristとダブル主演した『SOTUS/ソータス』で俳優デビュー。2021年に当時所属していたGMMTVとの契約終了とともに独立することを発表し、個人で俳優活動を続けたのち、2024年にGMMTVと再契約。Kristとの再共演作『The Ex-Morning Series』が発表され、今年放送を予定している。Kristとの共演作以外での代表作に、『Friend Zone』(2018年)、日本の漫画原作ドラマ『西洋骨董洋菓子店』のタイ版リメイク『Baker Boys』(2021年)など。
Photos : Teppei Hoshida Stylist : Takumi Urisaka Translation : Sijutha Navawongse Composition & Text : Ayano Nakanishi Thanks to : TV Asahi Corporation
【Kristさん】ジャケット(トーガ ビリリース)¥108,900/トーガ 原宿店 ゲームシャツ(ザ・ダファー・アンド・ネフューズ)¥28,600/イーライト パンツ(モンキータイム)¥19,800/ユナイテッドアローズ 池袋店 靴(フット・ザ・コーチャー)¥64,900/オーセンティック・シュー&コー
【Singtoさん】ジャケット(タロウ ホリウチ)¥103,400/TARO HORIUCHI Inc. プルオーバー¥15,400・パーカ¥14,300(ともにオークリー)/ルックスオティカジャパン カスタマーサービス パンツ¥42,900/スティーフショールーム 靴(ティンバーランド)¥28,600/VFジャパン
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