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映像ディレクターの松本壮史さんが、好きな青春映画を毎回1本取り上げ、作品の解説をしながら青春映画そのものの魅力を一緒に見つける本誌連載。2024年2月から紹介された10本の青春映画をまとめてお届け。
1作目
山下敦弘
『リンダ リンダ リンダ』
©『リンダ リンダ リンダ』パートナーズ
監督/山下敦弘 出演/ぺ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、松山ケンイチほか 販売元:バップ DVD¥5,280
舞台は地方都市の高校。高校生活最後の文化祭の直前、ガールズバンド崩壊の危機に陥った女子高生3人は、韓国からの留学生ソンを半ば強引にメンバーに引き入れる。ザ・ブルーハーツのコピーバンドを結成し、文化祭当日に向けて練習を重ねるうちにたどたどしくも絆が生まれていくが…。女子高生たちの奮闘ぶりや何でもない日常、もどかしさをリアルに描いた青春映画。
青春とその距離。
最初に取り上げる青春映画は、『リンダ リンダ リンダ』です。卒業を控えた女子高生たちが文化祭でブルーハーツの曲を演奏するというシンプルなストーリーで大きな事件も起きないのに、僕の中で一番星のように、今も輝き続けている傑作青春映画です。
これほどまでに“空気”の記録に成功している作品を、僕は知りません。大きな特徴のひとつは、「登場人物とカメラの遠さ」かなと思います。序盤の、彼女たちが文化祭でカバーする曲を探すシーン。軽音部の部室には3人だけ。あれでもない、これでもないと段ボールをひっくり返してカセットテープを漁(あさ)った挙げ句、ふと再生ボタンを押すとブルーハーツが流れてくる。テンション低めだった3人が一気に「これだ!」と盛り上がります(彼女たちが陽気なタイプではないのでこれまたグッとくる)。
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2作目
デヴィッド・フィンチャー
『ソーシャル・ネットワーク』
監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ジェシー・アイゼンバーグほか 販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント Blu-ray ¥2,619
2003年、ハーバード大学に通う19歳のマークは、親友のエドゥアルドとともに学内の友人を増やすためのネットワーキング・サービスを開発する。そのサービスはすぐに他校でも評判となり、「ナップスター」の創設者であるショーン・パーカーとの出会いも経て、社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへと急成長を遂げる。一躍、時代の寵児(ちょうじ)となった彼らだったが…。
主人公が超嫌なやつでも。
本作は、Facebookの創設者、マーク・ザッカーバーグ氏の半生を映画化したものです。彼が大学在学中、恋人にフラれた腹いせにつくったサイトが学内でバズって、それをきっかけに仲間たちとFacebookを立ち上げていくというTHE成り上がりモノです。主人公は孤高の天才型なので葛藤なんてしないし、気難しくて嘘(うそ)つきで基本的に何を考えてるかわからないので、全く感情移入できないキャラクターです。なのに目が離せない。
そんな彼の、というかこの映画全体の魅力は最初のシーンに詰まっています。主人公と恋人がダイナーで口論になり、恋人が愛想を尽かして主人公を振るまでのたった5分25秒。舞台設定、主人公が何を敵としているのか、人との会話におけるいやらしさ、賢さとカッコ悪さ、あらゆる情報が散弾銃のような早口でまくし立てられます。なんと99テイクも撮ったらしく、確かにその執念というかとんでもないものが刻まれています。編集も最高。多くの人が「この主人公のことは嫌いだけど、絶対面白い2時間が始まる」と思うはずなので、ぜひこのオープニングだけでも観てください。Netflixにあります。
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3作目
ガス・ヴァン・サント
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
©2021 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
監督/ガス・ヴァン・サント 出演/ロビン・ウィリアムズ、マット・デイモンほか 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント Blu-ray¥2,075
清掃員として働くウィルは、幼い頃のトラウマが原因で周囲に心を閉ざし、非行を繰り返す。ある日ウィルは、職場のマサチューセッツ工科大学で数学の難問をいとも簡単に解いたことをきっかけに、同大学の教授にその天才的な頭脳を発見され、心理学者のショーンを紹介される。妻を亡くして失意の中にいるショーンと交流していくうち、ウィルはしだいに心を開いていき…。
別れこそ青春映画の醍醐味(だいごみ)
誰かと親密になるって、すごく大変な作業ですよね。相手にとってのNGを慎重にかいくぐりながら、質問を重ね、共通点を見つけつつ自分のよさも(いい塩梅(あんばい)で)アピールする必要がある。恋愛もですけど、それ以上に誰かと友情を育む難しさについては常々考えてしまいます。
今回は、人とどう向き合うかっていうことがテーマのひとつである、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』について書いていきます。
天才的な頭脳を持ちながらある問題を抱えている青年ウィルと、ウィルのカウンセリングを担当することになる心理学者のショーン。親子ほど年の離れた2人の心の交流によってウィル自身が成長していく青春ストーリーです。
他人と話すときはきまって、自分が傷つかないように自らのことを語らずに本で得た知識をしゃべり倒すウィルを、ショーンは強く批判します。対してショーンは、相手を知るために、自分の話をします。自分の言葉で、何げないおしゃべりや完璧ではない自分をさらけ出すことによって、ウィルの心が解きほぐされていき、少しずつ距離が縮まっていく。年齢や性別、役職にとらわれず、こんなふうに人と対話できたらと心底思います。
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4作目
細田 守
『時をかける少女』
©「時をかける少女」製作委員会2006
監督/細田 守 声の出演/仲 里依紗、石田卓也、板倉光隆、垣内彩未ほか 販売元:株式会社KADOKAWA Blu-ray¥7,260
時間を飛び越えて過去に戻れる「タイムリープ」の力を手にした、女子高生の真琴。その力を繰り返し使って、自分の過去をやり直すうちに「人生のかけがえのない時間」の意味を見つけていく…。1983年公開の大林宣彦監督&原田知世主演映画版を筆頭に、あらゆる形でリメイクをされた『時かけ』。こちらは、細田守監督の手によって初めてアニメーション映画化された作品。
台詞(せりふ)が作り手のもとを
離れるとき
10代の終わりに観たアニメーション映画『時をかける少女』(細田守監督)は、特別な映画体験となった。
夏、三角関係、初恋、進路――。青春の定番モチーフでいっぱいにしながら、そこにSFの要素が絡んでくる本作には、自分の長編デビュー作『サマーフィルムにのって』でも、隠せないほど大きな影響を受けている。
ひょんなことからタイムリープの能力を身につけた真琴は、カジュアルに時を戻しては、同じような日常を繰り返す。
本作では、タイムリープがモラトリアムの延長装置として機能しているのが面白い。友情が恋愛という形になってしまいそうな瞬間に、エイヤッと過去に逃げたりして、真琴は大人になることを拒み続ける。しかし、モラトリアムには必ず終わりがくる。
真琴がタイムリープできる残りの回数を知ったとき、物語は動きだす。青春映画といえば、タイムリミット。このあたりから、今まで何度もリメイクされてきた『時かけ』をアニメーション映画にした意義がだんだんと見えてくる。
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5作目
グレッグ・モットーラ
『スーパーバッド 童貞ウォーズ』
©2007 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
監督/グレッグ・モットーラ 出演/ジョナ・ヒル、マイケル・セラほか 発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント デジタル配信中
卒業を2週間後に控えた男子高校生のセス、エバン、フォーゲルは冴(さ)えない童貞3人組。ふとしたきっかけで、人生で初めて女の子からパーティに誘われたセスだったが、思わずその場にお酒を調達していくことを約束してしまう。高校生には難しいミッションだが、夢見た初体験への絶好のチャンスを逃すまいとする3人は、お酒をゲットするためにあらゆる行動に出て…。
お前に泣かされるとは
『スーパーバッド 童貞ウォーズ』。日本版でつけられたこの謎の副題のせいで、本作は男子たちによるおバカで下品なB級映画というイメージがついてしまっている。許せない。本作は青春映画の最重要作だ。気だるそうに車を運転しながら登場するジョナ・ヒルのファーストカットから、ラストカットまで毎秒青春で埋め尽くされている。
本作では、卒業を2週間後に控えた男子3人が初めてパーティに参加する一夜が描かれる。後悔ばかりの高校生活に終止符を打つべく、その晩、意中の女子とセックス致すことをめざし奮闘するのだ(あらすじだけ書くと下品でバカっぽいことは否めない…)。
まずメインの3人組がちゃんとみっともなくて、青春そのものの顔をしているところがいい。ルックスも性格も、キャラクターとしての3人のバランスが秀逸だ。3人そろえば最強!…ってわけではないけど最高なのだ。最強じゃなくていい。僕は「3人組」が大好きで自作でもたびたび描くのだが、『スーパーバッド』の3人はいつでも最初に思い浮かべる。
なんだかんだあり(その過程がいちいち面白い)、結局セックスには至らなかったが、それぞれが学びを得る。
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6作目
デヴィッド・ロバート・ミッチェル
『アメリカン・スリープオーバー』
©2011 Roman Spring Pictures
監督/デヴィッド・ロバート・ミッチェル 出演/クレア・スロマ ほか 販売元:Gucchi’s Free School + PHASE OUT INC. デジタル配信中
舞台はアメリカ・デトロイトの郊外。新学期を目前に控えた夏の終わり、自分の夏休みにどこか物足りなさを感じている、中学3年生の少女マギーが主人公。彼女は乗り込んだパーティ会場で、昼間プールで見かけた年上の男性と再会する。ほかにも、街ではいくつかのスリープオーバー(お泊まり会)が開かれており、それらが影響し合って、登場人物それぞれのひと夏の物語は動きだしていく…。
淡い期待のゆくえ
あの頃の「淡い期待」ほど叶(かな)わなくて、切ないものはないと思う。
本作は、新学期直前のとある1日を過ごすアメリカ・デトロイト郊外に住む若者たちの群像劇。彼らの新学期は9月に始まるので、夏の終わりの物語でもある。“お泊まり会”が街のあちこちで開かれるその夜、男子も女子もそれぞれが「今夜、何かあるかも」と何かに期待してしまう。「何かを探す」それだけの映画だ。それだけなのがひたすら愛(いと)おしい。そんなあの頃のソワソワを生々しく切り取っているので、突き刺さる人も多いはず。
自分は成人式の夜を思い出した。
一次会が終わって、誰もが二次会を期待していたが結局解散となってしまい、男だけでの宅飲みと相なった。いつもの面子(メンツ)でこたつを囲む。それでも、「今夜は何かあるだろう」という思いは捨てられないので誰かの「コンビニ行こうぜ」という提案に乗っかって、深夜0時すぎの寒空へ繰り出した。買い物を終えた後も遠回りして女子の家の方角へ向かって、男7人でゾンビのように歩いた。全く同じようなシーンが本作にもあるので、初めて観たときは恥ずかしくてたまらなかった。
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7作目
沖田修一
『キツツキと雨』
監督/沖田修一 出演/役所広司、小栗 旬、高良健吾、臼田あさ美、古舘寛治、黒田大輔、嶋田久作ほか 発売・販売元:KADOKAWA DVD(通常版)¥5,170
映画の撮影で、ある山村へやってきた撮影隊一行。25歳の新人映画監督・幸一(小栗旬)はその気弱な性格ゆえに、現場をまとめきれずにパニック寸前になりながらデビュー作の撮影を進めていた。そんなある日、彼は60歳の木こり・克彦(役所広司)と出会う。最初は無理やり撮影を手伝わされていた克彦だったが、徐々に映画の面白さを知り、幸一は克彦との交流を通して成長していく。
初めての感情に出会うこと
沖田修一監督の映画が纏(まと)うユーモアがたまらなく好きだ。面白いことをして笑わせるのではなく、人が必死に生きているだけで笑いを起こす。カッコつけたり、ズルかったり、間違えてしまったり、その人間くさい可笑(おか)しみに僕たちの心は動かされる。
本作では、ある村に映画の撮影隊がやってくる。地元の武骨な木こりの克彦(役所広司)と若手映画監督の幸一(小栗旬)が出会って、なんだかんだ映画を一緒に撮ることになっていく。
映画なんて1mmも興味のない克彦が、巻き込まれる形でエキストラ出演(しかもゾンビ映画)し、ラッシュ(撮影した素材をみんなで確認すること)を観たり、脚本というものを初めて読んでみたらつい感動してしまったり―。序盤、創作の世界に初めて足を踏み入れた克彦のワクワクが描かれていく。
主人公が「初めての感情」に出会っていくというのは青春映画の醍醐味(だいごみ)のひとつだ。そこに年齢は関係ない。だんだんと前のめりになっていく克彦と村人たち。呼応するように、やる気がなさそうだった映画スタッフたちにも活気が出てくる。出演者のほとんどがおじさんとおばさんなのに、何故(なぜ)ここまで創作の喜びを瑞々(みずみず)しく描けるのかと感動してしまう。
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8作目
ドリュー・バリモア
『ローラーガールズ・ダイアリー』
©2009 BABE RUTHLESS PRODUCTIONS,LLC All Rights Reserved.
監督/ドリュー・バリモア 出演/エレン・ペイジ マーシャ・ゲイ・ハーデン クリステン・ウィグ ドリュー・バリモアほか U-NEXTにて配信中
田舎町でさえない生活を送る女子高生のブリス。母から美少女コンテストへの出場を強いられる日々に嫌気が差していたとき、親友と出かけた隣町で、“ローラーゲーム”に出会う。ローラースケートを履いた2チームがスピードを競い、体を激しくぶつけ合って相手選手の間を素早く駆け抜けて点を稼ぐスポーツだ。その競技に魅了されたブリスは、母親に内緒でチームに加入して──。
青春映画の軽やかさとは
自分は、青春映画が持つ「軽やかさ」については一家言ある。「軽やかさ」とは、リズミカルな語り口にユーモアを織り交ぜて、エンドロールまで映画を推進させる力だとしよう。…軽やかじゃなくてもすぐれた青春映画というのも勿論(もちろん)ある。だがしかし、青春映画だけに許されたその軽やかさにはどうしても惹(ひ)かれるし、自分自身もそこを強みとしている監督でもあるので語らせてほしい。
今回取り上げる『ローラーガールズ・ダイアリー』の持つ軽やかさは、それはもう極上だ。
17歳の主人公ブリスは、母親から常に品行方正を求められ、美少女コンテストに無理やり出場させられている。冒頭、お姫様のように着飾ったコンテスト出場者たちが映される一方、控室では、手違いで髪を青く染めてしまったブリスがギャーギャー喚(わめ)いている。ずぶぬれの青髪のせいで、この時点では視聴者には顔も見えていないその主人公のことを大好きになってしまうはずだ。初手から実に手際がいい。
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9作目
ロブ・ライナー
『スタンド・バイ・ミー』
©1986 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
監督/ロブ・ライナー 出演/ウィル・ウィートンほか 権利元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
Blu-ray¥2,619 デジタル配信中
1959年の夏、アメリカ・オレゴン州の田舎町が物語の舞台。12歳の仲よし4人組であるゴーディ、クリス、テディ、バーンは行方不明になった見ず知らずの少年の“死体探し”の冒険に出る。発見してヒーローになるための旅の道中、性格も家庭環境も異なる彼らは、歌ったり、ときにケンカをしながらも力を合わせてその歩を進めていき―。
大人になることを描く
今回は青春映画の金字塔である『スタンド・バイ・ミー』。まずどうしても言及したいのが、リバー・フェニックス演じるクリスの衣装だ。ジャストサイズのヘインズ白T(汚れ方が絶妙)をリーバイスにタックイン。足もとは履きつぶしたコンバース。どの角度から見ても格好よくて、キャラクターに見事にハマっていてため息が出る。このスタイリングは、本作を永遠に輝かせている大きな要因だと思っている。
さて本題。この映画、爽やかさがほぼなく、むしろ全編にわたって死の雰囲気が漂っている。
4人の少年たちが親に黙ってとある死体を探しに行く物語だが、主人公ゴーディはひと月前に兄を交通事故で失っている。さらに、親友のひとりが後に亡くなることも明かされたうえで物語は進む。3人の死が重なり合うことで何とも言えないダークなイメージが常につきまとっている。
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10作目
相米慎二
『東京上空いらっしゃいませ』
©ディレクターズカンパニー/松竹/バンダイ
監督/相米慎二
出演/中井貴一 牧瀬里穂 笑福亭鶴瓶 毬谷友子 出門 英 竹田高利 藤村俊二 工藤正貴 谷 啓 三浦友和ほか Leminoにて配信中
17歳の高校生で、化粧品会社のキャンペーンガールを務めるユウ。ある日スポンサーの専務に関係を迫られ、そこから逃げ出す際に交通事故死してしまうが、天国で会った死神をうまくだまして地上に舞い戻ることに成功。だが、家にも帰れず学校にも行けないユウは、広告代理店の社員・雨宮と同居することに。アルバイトをしてみるなど、ひたむきに生き直すユウだったが―。
わからないことを愛す
キャンペーンガールとしてブレイク前夜の17歳の高校生ユウは、不慮の事故で死んでしまう。そんなユウがある手違いによって、一時的に現世に舞い戻ることに成功し、「普通」の17歳として生き直していく。
せっかく生き返ったんだからと、ユウがバーガーショップでバイトをするシーンが印象的だ。店内をしっちゃかめっちゃかにしながら走り回って、ドリンクを注ぎ、ハンバーガーを作る。一生懸命さがキュートでたまらないのだが、ユウは既に死んでいていつかあの世に帰らないといけない。だからこそ、その何げない瞬間に生のエネルギーが爆発しているようでとてもまぶしい。
この連載でたびたび触れているが、終わりが迫っている、その「期間限定の特別な時間」というものは青春映画の持つ儚(はかな)さと輝きをより際立たせる。
ユウが死を受け入れ、別れが間近に迫る終盤、唐突にダンスシーンが始まる。誰かの結婚式の二次会で、ユウが歌を歌いながら踊りまくる。夢か現実かすら定かではない、急に始まる祝祭。躍動するユウの姿をカメラは長回しで捉えていく。理解が追いつくより先に、会場の空気はクライマックスになり、映画自体が遥(はる)か遠くまでスウィングする。わけはわからないけど、とてつもないエネルギーに心が動かされ、一生忘れられないシーンになった。
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松本壮史
2021年『サマーフィルムにのって』で長編監督デビュー。その他作品に、映画『青葉家のテーブル』、ドラマ『ながたんと青と』(WOWOW)、『親子とりかえばや』(NHK)、『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)など。第13回TAMA映画賞 最優秀新進監督賞、第31回日本映画プロフェッショナル大賞 新人監督賞受賞。
Photo:Masanori Ikeda(for Mr.Matsumoto) Title logo & Illustrations:Tsuchika Nishimura Text:Soushi Matsumoto
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