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連載を始めて5年。「内容は自由で」という話からスタートした。その時々で思いついたことをつらつら徒然と書き殴ることにした。
バンドマンの日常や映画の話。普段から頭にある自分なりの哲学めいた話。あまりにも書くことがなさすぎて書くこと自体を自問自答した話。なんでもあり。
ただ、たまには読者年齢層を意識したアドバイスもいいかなぁとも思った。でもやはり偉そうなことは書きたくないし、そもそも助言するほどの知恵は持ち合わせていない。だからなんとなく“のようなもの”をたまに書いた(気がする)。
というわけで最終回はこれから何かを成し遂げようとしているみんなに向けてアドバイス“のようなもの”を改めて書いておしまいにしようかと思います(かぶりあり)。
私は虫が苦手である。子どもの頃はバッタやコオロギを捕まえていたが今は触れない。バッタなんか腕に飛び乗ってきた日には川上洋平の名にふさわしいほどの大声で叫ぶ。
しかし面白いものでステージ上は恐怖を感じなくなる(この話前も書いた?)。以前、蛾がマイクの周りを飛んでいた。普段なら一目散に逃げるが「ここでひるんだら、さっきあれだけカッコつけて登場したのに申し訳が立たない」とスイッチが入った。手で優しく払いのけパフォーマンスを続けた。高所恐怖症もスイッチが入れば治る。足場の悪い高所でも登るまでは震えているが撮影が始まれば怖さが消える。カメラを向けられると「いい撮影にしたい」という気持ちが芽生え集中するのだ。
芝居の仕事も。少し前までは「芝居なんて無理」と自分たちのMVでも躊躇していたほどなのに。敬愛する方々からのお話を大切にしたい気持ち以上に心の奥底で「楽しいんじゃない? 一歩踏み出してみたら?」という思いに駆られた。バンドマン風情が…と言われるのは承知だったがなぜか「やってみたい」という気持ちが芽生えた。件のスイッチが入ったのだ。
いや、虫とドラマ出演を一緒にしているわけではなくてさ。どれだけ「違うかなー」と思っていたことでもスイッチひとつで意外と挑めるという話だ。虫を好きにはなっていないし演技の才能が開花したわけでもない。ただ「やってやる」という気持ちを発芽させることはできた。才能とか努力以前の割と大事なプロセス。何はともあれやってみようという気持ちづくり。その後のことはわからない。でもやってみないとわからないからやったほうがいいのだ。
自分はのんびり屋だし頭も固い。だから「あ、これはもしやいわゆるそのタイミングかも」と悟った瞬間、ためらわず飛び込むようにしている。
なんか啓発本みたいになってしまった。そう感じたなら謝る。が、そんなつもりはまったくない。
なぜなら人は人だから。どれだけ偉そうにアドバイスしようが一人ひとり違う。家族でさえも似てるけど違う人だ。だからアドバイスなんてほぼ意味がない。親だろうが、親友だろうが、先生だろうが、恋人だろうが。アドバイスなんてのは人の“経験談”にすぎない。
アドバイスは越えるべきものだ。唯一アドバイスというものを使える方法があるとしたらそれだ。のみ込むのでもなく、無視するでもなく乗り越えるべきもの。このアドバイス“のような”戯れ言も踏み台にしてもらえたら幸いです。
さて、これにて私はメンズノンノを卒業いたします。いつもとは違う少し気の抜けた己をさらけ出せる場を与えてくださったメンズノンノチームの皆さまには感謝しかありません。
何より読んでくださった読者の皆さま、本当にありがとうございました。また道の途中のどこかで。
川上洋平 PLOFILE
ロックバンド[Alexandros]のVo&Gt。1月20日にベストアルバム『Where’s My History?』を発売。また、ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系・毎週水曜22時〜/1月放送開始)にも出演。バンドの最新情報は公式HPへ。
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