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『カメラを止めるな!』の監督・上田慎一郎さんインタビュー!まだまだたくさんあるやりたいことって?

『カメラを止めるな!』の監督・上田慎一郎さんインタビュー!まだまだたくさんあるやりたいことって?

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中学生のときに、『パルプ・フィクション』と『マグノリア』と『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』を観て、決定的に映画の魅力に取りつかれた。自主映画を撮り始め、高校卒業後も独学で映画づくりを続け、初の劇場用長編『カメラを止めるな!』(2018年)が異例の大ヒットを記録し、一躍人気監督の仲間入りを果たした。最新作は11月22日より公開される『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』。「やりたいことはまだまだたくさんある」と語るこの人にインタビュー。

FILM DIRECTOR/上田慎一郎さん
COMPOSER, MUSICIANCOMPOSER, MUSICIANCOMPOSER, MUSICIAN

 

クランクアップのとき、
自然と涙があふれてきた

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』、とても面白かったです。予測不能のだまし合いが痛快で、めっちゃ楽しめました。大ヒット作『カメラを止めるな!』(2018年)の公開前から動き出した企画だそうですが、どういった経緯で始まったのですか?

上田 『カメ止め』の試写を観たプロデューサーさんから、「ちょっと一緒にやってみたい企画があるんですよ」と声をかけていただいたんです。それで、原作となるドラマ『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』のDVDを貸してもらって、観たらめちゃくちゃ面白くて。僕は『オーシャンズ11』とか『スティング』のようなケイパーもの(強盗映画)だったり、詐欺師ものが昔から好きで、いつか自分でもつくってみたいなと思っていました。公務員と詐欺師というギャップのある組み合わせは自分の資質にも合っていますし、これまで長編の実写で原作ものを手がけたことがなかったので、一度トライしてみようと思って、お引き受けすることにしました。

―原作ものは初めてということですが、脚本づくりはどうでした?

上田 ドラマは全16話あって、それを2時間の映画に変換するのは苦労しました。しかも、企画自体はコロナ前に始動したので、最初は東京オリンピックが派手に開催されて外国人観光客が増え、インバウンド収入が爆増して国内にカジノができて……という設定だったんです。あまりにも世の中の状況が変わっていったため、最終的に14稿まで改稿しました。

―そんなに!

上田 でも、ちょっとヘンな言い方ですけど、そういうトラブルを取り込むのが好きなんですよ。段取りどおりに進んだものよりも、そのときどきに起きたことを取り込みながらつくったほうがスペシャルなものになるという感覚がありますし、その結果、今のこの映画があると思うので。

―特に印象に残っている出来事は何かあったりしますか?

上田 今までは無名の俳優たちと一緒にリハーサルを重ねながらつくっていくというスタイルが多かったので、今回のようにメジャーな俳優を迎えて同じようなつくり方ができるのかなという不安があったんです。ただ、主人公の熊沢役をお願いするために初めて内野聖陽さんとお会いしたときに、「一緒にものづくりできるならぜひ」とおっしゃっていただいて、そこからほぼマンツーマンの形で何度も脚本打ち合わせを繰り返して、「これだけ主演ががっつり一緒にやってくれているのだから、絶対によい作品になるぞ」という自信を撮影前に持てたのはとてもありがたかったです。

―登場人物が多く、緻密なだまし合いバトルというストーリー展開なので、撮影は大変だったのでは?

上田 はい。すごく大変でした(笑)。そのシーンに登場するキャストの数が多くなると、単純に難易度は上がります。みんなに演出が必要になってくるので。例えば、あるキャストに「ここではこうしてほしい」と伝えたら、他のキャストから「では、私はどうしたらいいですか?」「私はどうしましょうか?」と聞かれます。それを瞬時に判断して、「こうしてください」「あなたはこうです」と伝えないといけない。登場人物が多いというだけでもう大変なのに、今回の出演者の皆さんは本当に歴戦の猛者たちばかりなので、現場でいろいろなアイデアが出てくるんですよ。なかには、自分のプランを超えてくるものがあって、そうなると再構築してシーンをつくり直さないといけなくて、とにかくめちゃくちゃタフな現場でした。

―クランクアップのときは何を思いました?

上田 泣きました。「涙は知っている」という感じで、自然と目からあふれてきました。それだけ大変だったということですね(笑)。

 

映画を撮って生活していけたら、
それ以上いいことはない

映画との出会いは、さかのぼるといつ頃になるのですか?

上田 小学生の頃から映画はよく観ていました。ただ、その当時は『タイタニック』とか『インデペンデンス・デイ』とか『アルマゲドン』みたいな、みんなが観ている大ヒット作を観ていた感じですね。本格的に映画好きになったのは、中学生のときに、『パルプ・フィクション』(監督:クエンティン・タランティーノ)と『マグノリア』(監督:ポール・トーマス・アンダーソン)と『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(監督:ガイ・リッチー)の3本に出会ったのが大きいです。いわゆる作家性の強い映画に出会って、映画の魅力というか、面白さにハマっていきました。

中学時代から自主映画を撮っていたんですよね?

上田 親父のハンディカムを借りて、毎日放課後に友達と映画のようなものを撮っていましたね。とはいえ、その時点で映画監督をめざしていたわけではなくて、あくまでも遊びのひとつという感じです。「今日は何を撮る?」から始まって、「じゃあ、『レオン』みたいなのを撮ろうぜ」とか「ちょっと『グラディエーター』みたいなのを撮ろうぜ」というノリで楽しくやっていました。脚本なんてなくて、カットごとに次の展開を決めて、日が暮れてきて帰る時間になったら、そろそろ撃ちあって死のうかって(笑)。

はっきりと映画監督になりたいと思ったのはいつですか?

上田 高校の進路相談のときに、初めて意識しました。映画監督になるという道があるのかと。映画を撮って生活していけたら、それ以上いいことはないと思ってめざすようになりました。

でも、大学や専門学校に進むのではなく、独学で映画づくりを学ぶんですよね。学校に行くという考えはなかったのですか?

上田 そうしたほうがいいのかなと思ったことは何回かありますけど、基本的になかったです。中学生の頃から自分でつくっていますから。学ぶよりもとりあえずつくっちゃおうという精神ですね。「つくること以上の学びがあるのか?」とも思っていましたし。なので、体系的に本を読んで学んだりするようになったのは30歳頃になってようやくという感じです。

やりたいことがあれば、まずはとにかく動いてみることが大事だと思いますか?

上田 はい。ただ、これは性格もあるでしょうね。僕は割と見切り発車なタイプなので。仕事柄、映画を撮りたいとか、脚本を書いてみたいという人たちと知り会う機会が多いんですけど、数年後に会っても「映画撮りたいんですよね」「もうちょっと準備できたら脚本を書きたいと思っているんですよね」ってずっと言っているんですよ。「いやいやいや、もうやれよ」と。最初から完成度とかを求めずに、まずやってみるということはすごく大事だと思いますね。特に若いときは。

やっぱりそうですか。

上田 今どきはスマホで簡単に映像が撮れちゃいますから。何かつくりたいという強い気持ちがあれば、すぐに始められる状況にあるわけですよ。ちなみに、僕は高校3年のとき、文化祭で上映するために120分のアクション映画を撮ったことがあります。ハンディカムひとつで。

120分ってもう立派な大作じゃないですか!

上田 現代の高校生4人が第二次世界大戦中にタイムスリップしちゃうというストーリーで、最初のほうは脚本を書いていたんですけど、途中からちょっと間に合わなくなって、現場で撮りながら次のシーンを伝えていました。どういう着地になるのか自分でもよくわからないままでしたが、何とか形にはなりました。勢いと情熱でとりあえず何かはつくれるんですよ。


上田慎一郎さん

「失敗を集めるくらいの気持ちで
生きたほうが人生は前に進む」

 

100万円もらえる仕事よりも、
100万円払ってでもやりたい仕事

映画づくりの道のりは、常に順風満帆というわけではなく、うまくいかないときもあったと思います。そういうときはどうしていました?

上田 僕自身、若いときは失敗の連続だったんですよ。20代の前半で2回ほど借金を200万円くらい抱えたことがあって、代々木公園で野宿生活をしたこともあります。けれども、振り返ると、その経験が30代になって利子がついて返ってきている感覚があるので、10代、20代は失敗を集めるくらいの気持ちで生きたほうが人生は前に進むんじゃないかなと思うんですよね。ただ、ひとつ言っておかないといけないのは、僕、すごく好奇心が旺盛で、あらゆることをやったんですよ。バンドもやったし、漫画も描いたし、お笑いのコントをつくったこともあります。その中で映画がいちばん褒められたんですよね。他のことは映画ほど褒められなかった。結果的に自分が得意なことだったから、こうして何とかなったわけで、誰も彼もが勢いで映画を撮ってうまくいくわけではないということは一応言っておきます(笑)。

映画をつくるときに大事にしていることは何ですか?

上田 うーん、何だろう。やっぱり自分が楽しむということですかね。映画をつくっているクリエイターではあるんですけど、イチ映画ファンでもあるじゃないですか。だから、自分の心が動いたかどうか、自分が面白いと思えているかどうか、みたいなことはとても意識しています。仕事なんですけど、仕事だけになっていたらダメだなと思います。経験上、100万円もらえる仕事よりも、100万円払ってでもやりたい仕事のほうが実になるんですよね。お金を払ってでもつくりたいものがあるなら、そっちのほうがよいものになる可能性が高い気がするんです。

では、「これを撮ったらもう思い残すことはない」というものはあったりしますか?

上田 ないですね。仮にそういったものを撮ったとしても、また次につくりたいものが出てくると思います。

温めているアイデアはいくつかあるんですか?

上田 あります。実際、今ちょうど次の長編の脚本を書いているところです。映画って公開に至るまでにすごく時間がかかったりするんですよ。今回の『アングリースクワッド』も6年前から走り出していて、その間に他の作品をつくったりしていました。実現するにはタイミングもあったりしますが、幸いやりたいことはまだまだたくさんあります。

自分自身の青春時代、それこそ映画づくりに明け暮れていた日々を作品として撮ってみたいという気持ちはないんですか?

上田 自伝的映画みたいなことですよね。もうちょっと年をとったら、いいかもしれないですね。今はまだ思い出すとどうにも恥ずかしくて、客観視できないので(笑)。

 

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』

『アングリースクワッド 
公務員と7人の詐欺師』

11月22日(金)より全国公開


監督:上田慎一郎
出演:内野聖陽、岡田将生、川栄李奈、森川 葵ほか 
配給:NAKACHIKA PICTURES 
JR西日本コミュニケーションズ


税務署に勤めるマジメな公務員・熊沢二郎(内野聖陽)。ある日、熊沢は天才詐欺師・氷室マコト(岡田将生)が企てた巧妙な詐欺に引っかかり、大金をだまし取られてしまう。だが、ひょんなことからタッグを組むことになった2人は、クセ者ぞろいの詐欺師集団「アングリースクワッド」を結成し、壮大な税金徴収ミッションに挑む――。


©2024アングリースクワッド製作委員会

FILM DIRECTOR / SHINICHIRO UEDA
上田慎一郎

1984年生まれ、滋賀県出身。高校卒業後に独学で映画を学び、2009年に映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を結成。『お米とおっぱい。』『恋する小説家』『テイク8』『ナポリタン』など10本以上を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。18年、初の劇場用長編『カメラを止めるな!』が異例の大ヒットを記録。主な監督作に、『イソップの思うツボ』(19年、共同監督)、『スペシャルアクターズ』(19年)、
『ポプラン』(22年)など。23年、縦型短編監督作『レンタル部下』が第76回カンヌ国際映画祭「TikTokShortFilm コンペティション」にて最高賞グランプリを受賞。

Photos:Kanta Matsubayashi Composition & Text:Masayuki Sawada

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