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少年時代のきらめきと冒険の楽しさ。その底に流れる切なさが胸にしみる『マイ・フレンド・フォーエバー』【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.36】

少年時代のきらめきと冒険の楽しさ。その底に流れる切なさが胸にしみる『マイ・フレンド・フォーエバー』【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.36】

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鈴鹿央士 連載 鈴鹿央士の偏愛映画喫茶 
発表

 

みなさんは、今年の夏どんな風に過ごしましたか? この映画を観ながら僕は、「ああ、自分は本当に“ひと夏の冒険もの”や“ひと夏の友情もの”が好きなんだな、と気づきました。無意識に“何がいいかな?”と選んだのですが、以前もこのコーナーで少年少女が夏休みを過ごす『マイ・ガール』を紹介したことを思い出して。やっぱり季節柄、こういう作品を見たくなるのかな。『マイ・フレンド・フォーエバー』も、少年2人が夏休みに友情を深めながら、冒険を繰り広げる物語です。改めて見直して、やっぱりこの映画、好きだなって思いました。

鈴鹿央士 おすすめ 映画

『マイ・フレンド・フォーエバー』
Blu-ray: ¥5,280(税込) 
発売・販売元:マクザム
© 1995 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.


病気に向き合う寂しい少年と、
愛情不足で孤独な少年が意気投合

ファーストカットは、夏休み前日のホームルームの最中、少年エリックが自分の椅子をガジガジとナイフみたいなので削っているシーンから始まります。“何やってるんだろう!?”と思っていたら、周りの子たちから「ホモが移るからあっちいけ」と、だいぶキツイ感じでからかわれて。一種のイジリなのかイジメなのか、言葉の針ちくちくだなぁって心が辛くなるシーンの一つでした。

エリックが帰宅すると家には誰もいないので、庭に出て、隣家との間の高い塀の前で遊び始めるんです。向こう側でも同年代の少年が遊んでいて、エリックはいきなり、「お前のせいで、学校でホモって言われた」とヤな感じでつっかかります。そうしたら、隣家に引っ越して来たばかりの少年デクスターが「空気感染しないよ」って答えて、だんだんとデクスターがHIVに感染しているということがわかって来ます。

最初はそんな風にヤな感じだったのに、次の日あたりにはもう「一緒に遊ぼう」ってなって、エリックが高い塀を乗り越えていく。急に距離を詰めていく展開にはちょっと、“え!? 早っ!!”と驚きましたが、それだけ2人とも寂しかったんでしょうね。最初は素直になれなくて、「そっちに殴りに行くぞ!」なんて悪態をついていたエリックも、ほかに親しい友だちもなく、夏休みなのに家に独りぼっちで。病気のデクスターも友だちがいないので、お互いにすごく相手の存在を求めていたのかな、とも思いました。


男の子同士ならではの
おバカで大真面目な遊びが懐かしい

2人が庭でフィギュアの人形を使って、水を流したり泥を掘ったりして戦争ごっこをしている遊びが、すごく楽しそうだし、すごく懐かしくもありました。結構、男の子はみんな泥遊びってしたんじゃないかな。僕もトイストーリーの小さい兵隊さんを並べて、友だちとやったりしたな。さすがにエリックたちみたいに、火をつけて燃やしたりはしなかったけれど(笑)。泥んこになったデクスターが、お母さんに怒られるのも、可愛いなと思いながら懐かしかったです。僕も玄関前に立たされて、足を洗われてから家に入ったことが結構ありましたね。

背の高いエリックと小柄なデクスターという凸凹コンビみたいなのも可愛くて。なんか僕はこの映画を、2人を見守るような気持ちで観ていました。2人の置かれた立場の対比も効いているんですよね。エリックは身体が大きくて健康で、でもお母さんは仕事で忙しくて自分のことに無関心。デクスターはお母さんと仲が良くて、家の中は温かいけれど、健康な体が欲しい。それぞれ、欲しいものが自分にはなくて相手にはある、という。

2人が仲良くなってからの冒険もすごくいいんですよ。特に2人がゴムボートに乗って、どんぶらこどんぶらこ川を下ってスーパーに買い物に行くシーンが、すごく好き。2人を後ろから撮ったショットが、また良くて。2人ともお尻が濡れているんですが、“うわ、なんて可愛い撮り方をするんだろう!”と思いながら観ていました。

ショッピングカートに乗って、坂道を下っていくシーンも、本気で危ないから心配したけれど、あのハラハラ感もすごく面白かったですね。途中でお婆ちゃんが出て来たり、ゴミ収集車と衝突しそうになったり、うわ、やばいやばい~って。でも、すごいシーンじゃん、って思いました。ショッピングカートで坂を下りるのって、一度は絶対にやってみたいことですよね。僕、今でもやってみたい(笑)。本当に2人は色々とやらかしますが、いいなぁ、って羨ましくなりました。


終わりがあるからこその、
少年時代のきらめきが
この上もなく美しく描かれる

また、大真面目にバカバカしいことを本気でやっているのが、笑っちゃうけれど可愛くて。エリックが健康体なのは、デクスターは食べていないキャンディーのお陰だ、デクスターに足りないのはキャンディーだ、といっていろんなキャンディを食べて統計を取るためにスーパーに買いに行って。単純すぎて笑っちゃいましたが、本気なのがいい。しかもエリックが言い出したくせに、デクスターにお金を出させるっていう(笑)。ワルいフリをしているけれど、でもエリックって本当に優しい。ワルい感じの子が実は優しいって、それもあるあるだな、と思いました。

さらにキャンディーがダメなら植物だ、と雑草を試し始めるのですが、ちゃんとノートに草の種類とか煎じた温度とか書き込んでいて。大人からすると本当にバカバカしいけれど、エリックは本気でデクスターの病気を治したい、素直な思いからの行動なんです。だから僕も、“上手くいけばいいなぁ”と思いながら2人を見つめていました。しかも一番ヤバそうなトゲトゲの草を煎じて飲ませたら、それが毒草でデクスターが病院に運ばれちゃって。その時も、エリックのことを責めないデクスターのお母さんが、愛のあるスゴイ人だなって思いました。

初めてデクスターの家で、ご飯をご馳走になったシーンも印象的でした。デザートのサンデーをデクスターが残しちゃって、エリックが「残すなら頂戴」って手を出そうとするのですが、デクスターのお母さんが止めるんですよ。「本当は大丈夫だけど、家族以外は念のため止めておいて」って。そうしたらエリックが、「病気が治ったら、でっかいアイスクリームを一緒に食べよう」と言って。その言葉にお母さんも涙ぐんで。すごい優しい言葉だし、すごく嬉しかっただろうなって思いました。

二人のまっすぐな気持ちと
悲しい結末の予感が
いつも背中合わせで切ない

新薬が開発された記事を見つけて、今度は2人でニューオリンズまで、しかも例のゴムボートで向かうんです。無謀極まりないけれど、本当に大真面目で真剣で。途中で交渉して船に乗せてもらったり、そうかと思ったら追い出されてテントで寝たり。テントで寝た晩にデクスターの具合が悪くなって、エリックが自分のシャツを貸してあげるシーンも、すごく心に残っています。

デクスターが「自分は死ぬかもしれない。目が覚めた時に真っ暗だったら、もう死んだって思う」みたいなことを言うんですよね。その孤独や苦しみは、子どもが抱えるには大きすぎるよ、って思いました。エリックが隣で寝ながら、自分のスニーカーを「これを抱えて寝ろ」って渡すんです。「目が覚めたとき、こんな臭いスニーカーがあったら、生きてるって分かるから」と。ここもちょっと笑える、でもすごく優しいシーンでした。


観終わったあと胸に残る、
悲しいだけではない何かを
味わってほしい!

冒険のワクワクの中で忘れているけど、“いつ具合が悪くなるか分からない”とか“いつ死ぬか分からない”という現実にパッと戻される瞬間が何度もあって、それが作品全体に緊張感をもたらしています。例えば病院で、デクスターが死んだふりをする悪戯をしかけたら、本気にした看護師さんが「いずれこうなると思った」って口走ちゃう。楽しいシーンの途中で、死を意識させられる瞬間をフッと差し込んでくるのが、辛いけれど上手い。

悲しい物語ではありますが、デクスターのお母さんがエリックのお母さんに、話をするシーンもすごく良かったです。お母さん同士が家に入って、デクスターのお母さんが2つの要求をするんです。その言ってることに、僕的にはすごくグッと来たシーンでした。デクスターのお母さん、自分がデクスターを亡くしたばかりなのに、エリックにも愛情があってやっぱりスゴイなって。優しいし、包容力というか、受け止め力がスゴイ!

物語の背景――この映画が作られた95年当時は、まだエイズという病気をみんなよく知らなかったたし治療法も確立されていなくて、治せない病気で人に簡単に感染するとか、間違った認識を持っている人がすごく多かったこともよく分かりました。僕のイメージだと、よく分からない子供たちが、「バイキンだ~」みたいに騒いでいるのかと思ったら、むしろ周りの大人たちが過剰に反応していたんだな、と驚いて。僕たちもコロナを経験したばかりですが、やっぱり未知の病気に対する認識、意識、対処は、時代が随分と変わったのに同じようなものだなと感じさせられました。

この映画は、エリックが大人になる成長物語でもあって、エリックの前にいろんな辛いことが立ちはだかります。でも、それを包むような楽しさや笑いがあって、すごく良かった。単に悲しい映画でも、イヤな思い出が残るわけでもなくて、すごくポジティブな気持ちになりました。観終わって現実に戻った時に、不思議にヘビーな気持ちにはなっていないんですよね。

ハッピーエンドではないけれど、この2人から元気をもらえた気がします。これ、夏のお昼間あたりにダラッとしながら観て欲しい映画だな、と。ちょっと冒険したい気分の時に、この映画を観ればきっと冒険気分を味わえますよ。

    

実は観ていて僕が1番良かったのが、エリックの服。ちょっとオーバーサイズのボーダーTシャツを着てたり。地味でも色が入ってるボーダーが、すごくお洒落だなと思いました。今、僕自身がボーダーが好きな時期だから、余計に目が行っちゃったのですが、サイズ感も含めて、なんかいい参考になりました。下はスリムなジーパンとかじゃなくて、ダラッとした感じのズボンも大きめで、靴もコンバースのハイカットがいい感じで。これを今、スタイリストさんが再構築すると、かなりイケるんだろうな、なんて思いました。


『マイ・フレンド・フォーエバー』(1999年・米)
母親と2人暮らしのエリック(ブラッド・レンフロ)の隣家に、リンダ(アナベラ・シオラ)とデクスター(ジョセフ・マッゼロ)母子が越してくる。最初は、エイズに感染しているデクスターと距離を置こうとするが、言葉を交わすとすぐに意気投合。母が仕事で忙しいエリックは、デクスターの家に入り浸るように。そして、どうにかしてデクスターの病気を治そうと、色んな方法を試し始める。ニューオリンズで新薬が開発されていると知ったエリックは、デクスターを連れて旅に出る――。HIVに感染した少年と、孤独な少年の友情を描いた感動作。エリック役のブラッド・レンフロは、若手人気俳優として一世を風靡するも、25歳の若さで急逝した。

今年の夏は海外で少し長めに過ごして来たのですが、いろんなものを吸収できたのと同時に、外から見てみると、やっぱり日本っていいな、と思うこともたくさんありました。日本語っていいな、というのをはじめ、日本の文化や教育もユニークだし、美しいものなんだなと感じて。思っていた以上に、自分って日本のことを好きっぽいです。

Text:Chizuko Orita

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