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今夏、パリで開催される第33回夏季オリンピックで、新たな競技種目に追加される「ブレイキン」(ブレイクダンス)。肉体の限界に挑むようなダイナミックな技にダンサーそれぞれの個性が光る、見応えたっぷりの1on1バトルは世界中にファンを持つ。
パリ五輪代表は惜しくも逃したが、国内外の大きな大会を席巻し注目を集め続けるBBOY ISSINさんに、貴重なインタビューの機会をいただいた。小学生で運命的な出会いを果たし、全身全霊で挑み続けるブレイキンの魅力やダンスに対する思いとは。
BBOY ISSIN SPECIAL INTERVIEW
初めて優勝したとき感じた
“勝ちの感覚”が成長を後押しした
──ISSINさんがブレイキンを始めたきっかけは何ですか?
自分が8歳の頃、当時お姉ちゃんが通っていたヒップホップ・ジャズのダンス教室に、興味本位で遊びに行ったのが、ダンスに興味を持つきっかけでした。そこで踊ってみたらすごく楽しくて、他のダンスもやってみたいと僕が言ったみたいで、父親がブレイキンの教室を見つけてきてくれたんです。そこで見たダンスが、踊りながら逆立ちもするし、しかもそこから回るし、本当にカッコよくてハマっていきました。
それまでサッカーをやっていて、途中まで両立していたんですが、次第にダンス一本に。小学校から帰ってきたらランドセルを置いて、そのまま床に手をついて踊り始めるみたいな毎日。そのまま夜寝落ちするまで練習していましたね。いま思えば、それほど自分の人生にカチッとハマる、夢中になれるものに巡り会えて、すごく恵まれているなと思います。
──そこまでのめり込んだブレイキンの魅力って?
ブレイキンって本当にたくさんの技があって、追求しようとすると終わりがないんです。立ち踊りにはじまり、“フットワーク”と足を使って魅せる踊りや、“パワームーブ”という背中や頭でくるくる回転する踊りがあります。それに加えて、アクロバットも他のジャンルのダンスを入れてもいい。一つ一つの技の難易度が高いので、決まったときに大きな達成感を得られます。
また、バトルを勝ち上がるためには、“オリジナル”と言って、その人しか持ってない技が必要になるんです。その人を象徴するような技を“シグネチャー”とも言うのですが、その人しか出せない技やその人にしか出せない雰囲気を持つことで、自分というものをダンスで表現でき、勝ちやすくなる。むしろ、“オリジナル”や“シグネチャー”がないと勝てないと言っても間違いない。だから、新しい技に挑戦すればするほど、厳しい壁に当たれば当たるほど、ダンスの幅が広がるし、B-Boy(ブレイキンの男性ダンサー)としてレベルアップすることができます。
キツい技をこなすために体力をつけないといけないのはたまに「嫌だな〜」って思いますけど(笑)、終わりのない挑戦をし続けられるブレイキンは、やっぱり楽しいんです。始めてからずっと楽しい(笑)。
──人生を通して夢中になれるブレイキンに出会い、続けてきた中で、ターニングポイントになったバトルや大会はありますか?
ターニングポイントと思えるときが2つあって、一つは、小学6年生で参加したU-15の日本一を決める大会(2017年の「バトルオブザイヤー」U-15部門)で優勝したときです。その頃、周りにはブレイキンが超うまいB-Boyがいっぱいいて、僕は全然勝てなかったんです。そんな中、お父さんに「小学6年生までに大きいタイトルを獲らなかったら、ダンスをやめさせる」と言われていたので、どうしても続けたいからめちゃくちゃがんばって、「誰もやっていないことってなんだろう」とより考えるように。結果、バトルの中で出したオリジナルのムーブがすごく評価されて、優勝することができました。
その“勝ちの感覚”を掴めてから、徐々に勝てるようになっていって、2つ目のターニングポイントを迎えます。それは、2022年の「Red Bull BC One World Final」という舞台でTOP4になったとき。この世界大会では、デビュー戦のような気持ちで、世界にBBOY ISSINを知らしめるためにカマして、結果はTOP4だったけど、優勝したんじゃないかっていうくらい、いろいろなメディアで取り上げられて。友達からも「もしかして優勝した?」って連絡が来ました(笑)。「Red Bull BC One All Stars」というクルーに参加させていただいたり、海外の人の目に留まっていろいろな大会に呼んでいただいたりするようになるなど、自分の環境がガラッと変わりましたね。
手の指先から足のつま先まで
イメージできたら絶対に踊れる
──激戦を乗り越える中で、ブレイクスルーする瞬間があったんですね。踊っているときは、どんなことを考えているんでしょうか?
練習をして、ムーブを探っているときは、どうすれば見ている人を裏切れるだろうか、どうすればみんなが盛り上ってくれるかを考えています。そのために、誰もやったことないことを積極的に挑戦していて。僕自身19歳で若く体力もあるので、いまの歳にしかできないダイナミックな技をコンセプトとして考えていて、体に負荷のかかるちょっと危ない技を取り入れることも。それがちゃんと形になったときは、会場全体が一気に自分のものになるし、爆発力を発揮する自分のスタイルでBBOY ISSINというのを表現できると考えています。
──その爆発力に観ている人は、目も心も奪われます。複雑かつレベルの高い技は、どうやって生み出しているんですか?
簡単に言うと、「誰もやっていないことを自分の中でどれだけ探れるか」を常に考えていて。「ここでこっちに飛んだら面白いな」とか、常に頭の中で“裏切る動き”を想像しています。高校生のときは、何かを思いついたら忘れないように、ノートの下に棒人間でアイデアを描いて、それをちぎって財布に入れて持ち帰って、家で練習していましたね。僕の学生の頃のノートはだいたい下がギザギザになってるんです(笑)。
──ブレイキンに対する熱量がわかります。ギザギザのノート、見てみたいです(笑)。
(笑)。あと、練習をしている中で見つける“もうちょっとのところで技にならなかった動き”をヒントに技を発展させます。“技にならなかった”というのは、自分でも予想していないことが起きているということなんです。そういう動きをぐっと突き詰めていったら、誰も想像してない“オリジナル”が生まれるんじゃないか、と思っています。
──それを一つの技として完成させるのは難しそうです。
そうですね、たくさんの練習は必要です。でも、どんな技でも、頭の中で手の指先から足のつま先まで一度完璧にイメージできたら、だいたい体でも表現できるんです。逆立ちして手を軸に回転する「1990(ナインティ)」という技も、頭の中で自分を軸にしてグルっと回るイメージを取れたときって、本当にきれいに回れる。逆に何回イメージしても失敗しちゃうときは、全然うまくいかないんです。だから僕はイメージすることを大事にしています。バトルが始まる前はいつも、自分のブレイキンを見て会場の観客が沸いていることを想像しますね。
肌がきれいだと気分がいいし
ブレイキンにもっと集中できる
──日本のみならず世界から注目されているISSINさんですが、人からの見え方に気をつけていますか?
ダンスを始めたり楽しんだりするのに、ファッションなど見た目から入るのはめちゃくちゃ大事だと思っていて。カッコよく思われようというわけではないけど、ダンスは服のシルエットひとつでうまく見えるし、自分が好きな格好で練習に行くとテンションが上がって、新しい技のネタができることも多いんです。だから、新しいTシャツや靴を着ている日はけっこう調子がいい(笑)。自分らしくカッコよくいるために、服にはちょっと気を遣っています。
──いまはどんなコーディネートが気分ですか?
最近は、上をちょっと小さめに、パンツを大きめにした着こなしにハマっています。自分の体以上に動きを大きく見せるために、もうちょっと脚を長く見せるためにって考えて、このバランスに行き着いて。普段の格好もダンスをするときとあまり変わらなくて、今日もはいているY-3のカーゴパンツはかなりお気に入り。ゆったりしているし、動きやすい。サイドのポケットの形とかディテールもすごく好き。あと、体格のいい海外のダンサーが着こなす、ピタッとしたジャストサイズの服装も見ていてカッコいいから、いつか挑戦したいなって思っています。
──人前で踊ることが多いですが、身だしなみについて考えることは?
ブレイキンに注目が集まってきたことで、メディアの取材で映像や写真を撮っていただき、いろいろな人に自分を見ていただく機会が増えました。そんな中、改めて自分の姿を見て、「身だしなみに気をつけないと」と思ったんです。それまでは「ニキビなんて四つくらいあってもいいでしょ」って感じで、自分自身の見た目に対して気にすることってなくて。今回の撮影が決まってからも「絶対ニキビつくりたくない」って思っていました(笑)。服と同じですが、顔の肌が荒れているより、すっきりと整っているほうが、単純に気分がいいし、撮影もテンションが上がるんですよね。
──肌、すごくきれいですね。
うわっ、うれしいです。いま僕の活動をサポートしてくださっている「バルクオム」のおかげだと思います。「バルクオム」の洗顔料や化粧水などのスキンケアアイテムを使わせてもらうようになってから、きれいになったんですよね。国内外での遠征が多いのですが、必ずトラベルセットを持って行っています。これがないと落ち着かない…(笑)。
あと、肌の感じがよくなって気分もいいのですが、うれしいことがもうひとつあって。練習でもっと集中できるようになりましたね。ブレイキンはおでこをつけて踊ることも多いので、練習中に床に顔のニキビが当たると本当に痛くて…。その点いまはニキビがないので、練習がはかどる(笑)。肌がきれいになることで、新しいムーブがどんどん生まれるかも!?
──スキンケアがISSINさんのブレイキンにそんな影響を与えているなんて(笑)。「バルクオム」には顔以外に、髪や体のケアアイテムもあります。これからやってみたいケアは?
最近、香りも意識してみようかなと思っています。バトルが終わってめっちゃ汗臭いのも、本気で戦った証拠だからすごくいいと思うけど、たくさん踊ったのにいい香りがするのもいいなって。ボディウォッシュに気を遣えばできそうですよね。
あとヘアケアも気になっています。ブレイキンが髪の毛を床に擦りつける動きも多くて、頭皮へのダメージが大きいんですよ。「ハゲたくない!」と思って自分は頭を避けて、ずっと手や肘、背中を使った技をメインに踊っていたのですが、世界の強い相手と戦うためにそうも言っていられなくて(笑)。頭を使う技を解禁したので、これからはストレスのかかる髪の毛や頭皮を健康な状態にキープできるようにヘアケアもちゃんとやりたいですね。バルクオムの方にまず相談してみます!(笑)
PROFILE
ISSIN
2005年生まれ岡山県出身。本名は菱川一心。8歳のときにブレイキンに出会う。2017年に行われた「バトルオブザイヤー」のU-15の部門に出場し、小学6年生で優勝。その後、2022年の「Red Bull BC One Cypher Japan」での優勝を皮切りに、「Red Bull BC One World Final」に2年連続出場し、TOP4の成績を収め、一気に世界にその名を知らしめる。オリンピック予選シリーズへの出場をかけたワールドシリーズ最終戦で、強豪を打ち破り金メダル獲得。2024年2月に開催された「全日本プレイキン選手権」では、当時世界ランキング1位のShigekixを準決勝で破り初優勝を飾る。2024年、『ALL JAPAN BREAKING CHAMPIONSHIP』で初優勝という快挙を成し遂げた。現在の世界ランキングは1位。
公式Instagram:https://www.instagram.com/bboyissin/
Photos:Teppei Hoshida Hair & Make-up:Toru Sakanishi Interview &Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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