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第5回
創業54年! 「KENZO」創設者・
高田賢三の軌跡。ファッション好きには
たまらない回顧展!
\ここに注目!!/
東京オペラシティ アートギャラリー
「高田賢三 夢をかける」
2020年の没後初めての大回顧展! アイデアの源泉となるデザイン画、写真映像などを通して多角的に彼の生涯を体感できる!
無一文で夢を追ってパリへ。
日本で男性デザイナーの地位を
確立したパイオニア!
これまでアーティストによる展覧会や、彼らが参加している大型の国際展覧会などを取り上げてきましたが、今回はひとりの日本人ファッションデザイナーが残してきた偉大な生涯を回顧する展覧会「高田賢三 夢をかける」を紹介します。チャレンジ精神もさることながら、実は今のファッション業界で「普通」と思われることを生み出してきたすごい人。
日本人ファッションデザイナー、と聞くと、皆さんは、おそらく80年代に「DCブランドブーム」という名のもと、国内外に旋風を巻き起こした「コム・デ・ギャルソン」の創設者・川久保玲や、「ヨージ・ヤマモト」の山本耀司を思い浮かべるかもしれません。しかし、彼らより先にファッションの本拠地・パリに衝撃を与えたのが、ファッションブランド「KENZO」の創設者である高田賢三でした。
いまやファッションデザイナーというと、性別問わず活躍し、ユニセックスウエアも当然なものになっています。しかし、高田氏が文化服装学院に入学時は、男性の入学がやっと解禁された、という時代。インターネットも存在しない中で、日本以外のカルチャーに触れながら、ファッションの本場・パリで切磋琢磨(せっさたくま)する日々がいかに刺激的なものだったか。当時の思い出やブランド経営の裏側については、彼の著書『夢の回想録 高田賢三自伝』に赤裸々につづってあるのでぜひ。
現在のKENZOのアーティスティック・ディレクターには、「A BATHING APE®」創設者でもあるNIGO®が就任。高田氏が1999年にKENZOを離れてからというもの、今まで数々の海外デザイナーがKENZOのディレクションを担ってきました。カラフルでポップなムードをまとったKENZOのイメージは、さまざまなデザイナーを迎えても創業時から一貫して変わりません。そのルーツには、高田氏が1965年に船旅で各国の民族衣装や景色に触れながら、パリに渡ったことがインスピレーションになっていると言われています。80~90年代に発表した、日本や中国、ルーマニア、ロシア、アフリカなどの世界各国の民族衣装に着想を得たコレクションは、ファッション界の中で「フォークロア」というジャンルが確立されるきっかけにもなり、パリ現地のデザイナーにも大きな影響を与えました。
著書でも当時を振り返り、売り上げ関係なく自分の興味の赴くままに、ショーを通して常に「航海」を続けていたと楽しげに語っています。また、スタイルとしても、当時はクリスチャン・ディオールをはじめ、女性の体のシルエットを強調するスタイルが流行っていた中で、「衣服からの身体の解放」というテーマのもと、木綿でゆったりとした着やすさ重視の服作りを打ち出したのも彼がもたらした革命でした。それも着物や各国の民族衣装に共通する、四角い平面と直線裁ちがインスピレーション源になっていたそう。
ほかにもショーに初めてBGM──しかもにぎやかなディスコミュージック──を使うなど、今となってこそファッションの世界で当たり前と思っていることを先駆者として挑戦して開拓していったエピソードは数えきれないほど。無一文でパリに挑戦し、まずファッション雑誌に絵を売り込むところからスタートしたという情熱もすごい。そんな彼が残した色鮮やかな軌跡と偉業の数々を、東京オペラシティ アートギャラリーで開催する大規模回顧展「高田賢三 夢をかける」でぜひ堪能しよう!
1982年秋冬のショーに登場したマリエ(ウエディングドレス)。20年間にわたって集めたリボンで制作した大作は、99年に発表されたショー「30ans(トランタン)」で日本を代表するモデル・山口小夜子が着用したことで知られています。
「高田賢三 夢をかける」
7月6日(土)から9月16日(月)まで開催。新宿区西新宿3の20の2 開館時間:11:00〜19:00(入場は18:30まで)
倉田佳子
アーティストコーディネーター、ファッションライター。大学卒業後、独学で編集・執筆業を始め、現在は国内外のブランドやメディア、アーティストと仕事をする。
Instagram:@yoshiko_kurata
Title logo:Midori Kawano
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