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タワーレコード、ゼクシィ、パルコなど、既存の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がける「箭内道彦」にインタビュー!

タワーレコード、ゼクシィ、パルコなど、既存の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がける「箭内道彦」にインタビュー!

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タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、ゼクシィ「Get Old with Me.」、パルコ「SPECIAL IN YOU.」など、既存の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がけるクリエイティブディレクター。さらに、フリーペーパー『月刊 風とロック』の発行人、東京藝術大学の教授、風とロック芋煮会の実行委員長としての顔も持つ。トレードマークは金髪と派手な服装。今年還暦を迎え、常に目標は「世界平和の実現」と話すこの人にインタビュー。

CREATIVE DIRECTOR/箭内道彦さん
COMPOSER, MUSICIANCOMPOSER, MUSICIANCOMPOSER, MUSICIAN

 

重みのない60歳という
パターンもあるんだな

――還暦記念ということで企画された「風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ」(3月30日、31日にさいたまスーパーアリーナで開催)が無事に終わりました。一大イベントをやり終えて、今はどういう日々を過ごしていますか?

箭内 僕は、もともと空っぽな人間なんですけど、一度大規模に空っぽにしたいなと思って、半ば衝動的にさいたまスーパーアリーナを借りました。今できることのすべてをやり切っていったんゼロにすると、新しくまたやりたいことが生まれる、その状態をつくりたかったんですね。今はまだ終わったばかりなので、具体的に何がというよりも、自分の中に次にやりたくて仕方なくなるものってなんだろうという期待が猛烈にある状態です。もしかしたらまた同じことをやりたくなるかもしれないし、どうなるかわからない自分が面白いなという状態で毎日を過ごしている感じですね。

――還暦を迎えて何か心境の変化みたいなものはありましたか?

箭内 僕、忌野清志郎さんのことがすごく好きで、清志郎さんは58歳で旅立たれて、その年齢を超えたあたりから、憧れているだけじゃダメだぞと言われているような気がしてたんです。なので、自分がどんな60歳になるのかなというのは、楽しみでもあったし、不安でもありました。やっぱり60歳というと、なかなか重みのある年齢じゃないですか。でも、実際になってみたら、そうでもないパターンもあるんだなって。若い頃は大人が嫌いで、大人ってつまらないなと思っていたんです。そんな中で清志郎さんを見て、大人になるのも怖くないかなと思えるようになった。だから、「あんな感じでも許されるんだ」「あんな感じでも大人と言っていいんだ」みたいなひとつのパターンを自分がやりきっていくことも必要なんじゃないかなとは思っています。

――それはすばらしいです!

箭内 清志郎さんは、自分の心のままに生きてきただけで、そんなつもりはなかっただろうから、こんなことを考えちゃっている時点で、自分は小さいなって思いますけどね(笑)。

 

あるとき言ってくれたひと言が
一生のヒントになったりする

――では、これまでの歩みを振り返って、どんな人生だったと思いますか?

箭内 最初の大きい出来事は3浪したことですね。東京藝大に入りたくて。足踏みしたし、たくさんの人にもうやめなさいと言われたし、あの経験は大きかったなと思います。あと、表面上はうまくできるんですけど、心の底から腹を割って友人と語り合うみたいなことがなかったんです。それで、30代後半のときに、雑誌のインタビューで「自分には友達がいないんだ」というようなことを答えちゃったことがあって。そうしたら何人かに「俺は友達じゃないの?」って言われて、そのときから友達ということを意識し始めたんですよ。

――何か青春ですね!

箭内 そうなんです。40歳になって自分は青春が始まったと思っていて。やりたいことがやれることが青春とは限らないんですけど、中学の頃に欲しかったけど買うことすら想像できなかったギターを買ったり、自分のやりたいことをやりたいようにやれるようになってきたのが40代でしたね。だいぶ遅れて青春がやってきました(笑)。で、50代はこういう50代がいてもいいんだって思える50代になれればいいと思えたので、すごく気持ちがラクになったんですよ。ただ、ちょっと面倒くさかったのは、勝手に巨匠扱いとかされちゃって、「あの人に頼むと怖いんじゃないか」とか「値段が高いんじゃないか」とか、そういう居心地の悪さを感じることはありましたね。

――本人は何も変わってないのに、周りが勝手にそう思っちゃうんですよね。

箭内 そうです。だったら、自分で自分に発注をしちゃおうと思って、その最たるものが、この間のさいたまスーパーアリーナだったんです。「60歳の誕生パーティをあんな会場でやるんですね」と笑っていた人もいたけど、僕は誕生パーティだと思ってなくて。還暦を口実にすれば、みんな断りづらいかなと(笑)。お祝いだからGLAYが「出ますよ」と言ってくれたり、お祝いだからサンボマスターと乃木坂46が対バンしてくれたり、普段だったらなかなかできないことができた。どこかの企業に頼まれてやったイベントだったら絶対に違うものになっていたでしょうね。もちろん、そういうビジネスも大事です。でも、今回は自分の還暦を利用して、結果、個人がやりたいことをいろいろな人の力を借りながらやるという、ひとつのモデルになったかなと思います。

――箭内さんは広告をつくるクリエイティブディレクターとしての仕事に加えて、2016年からは東京藝大で教鞭(きょうべん)も執っています。教える、あるいは伝えることを考えるようになったのはなぜですか?

箭内 教育しているという意識は自分の中にはなくて、「どうしたらこの学生が輝くのか」といったことを一緒に考えているという感じです。そういう意味では、パルコのポスターをつくったり、タワーレコードの広告をつくったりするのと何ら変わりません。教えることを考えるようになったのは、50代になってからですね。20代は自分のやり方を何とか見つけようとして、30代でだんだんそれができるようになって、40代でようやく確立できた。自宅に一匹狼(おおかみ)と書かれた書があるんですけど、それまでは誰も自分のこの特殊なやり方は再現できないと思ってやっていました。かなり特殊なやり方だったし、それを誰かに伝授する時間もない。でも、50歳を過ぎて、たぶん人生の残りが無限ではないということを実感する機会が増えて、自分が見つけ出した特別なやり方にフィットする若い人がいるのであれば、その人にそれを手渡してから去っていきたいなというふうに思い始めたんです。

――バトンを渡すということですね。

箭内 はい。マネしたくないという人はいるし、やろうとしてもできないという人もいると思うんですけど、僕のやり方を見て、「自由になれた」とか「何かを見つけられた」という人がひとりでもいるのであれば、やる価値はあるだろうなと思いながらやっています。僕自身も、広告代理店にいたときに、誰か先生がいたわけではありませんでした。でも、自分の中で先生みたいに思っていた人がいて、それがこの本(『雲と虹 僕が出会った人と言葉』)の表紙にもなっている写真家の篠山紀信さんと、本には出ていないですけど、アートディレクターの井上嗣也さんでした。だからといって、年がら年中一緒にいて何かを教えてくれたということではなくて、あるとき話してくれたエピソードとか、あるとき言ってくれたひと言なんですよね。それが一生のヒントになったりする。なので、もし僕が自分より若い誰かに対してそういう存在になれるのであったら、同じことをしてあげたいなと思うんです。


箭内道彦さん

「すべては世界の幸せと笑顔を
実現するための手段」

 

わざと大きい声で
好きと言ってみる

――箭内さんのクリエイティブの原動力は、とにかく好きなことをやり続けることだとおっしゃっています。その部分は変わっていないですか?

箭内 変わってないですね。ただ、恵まれた環境が続くと、今あるものが当たり前になってきて、好きなものが何だかよくわからなくなっちゃうので、そこは気をつけないといけないですよね。一生好きでいられるものを見つけるのはけっこう大変だと思います。誰かがこの前ラジオで「恋はするものじゃなくて落ちるものです」と言っていましたけど、好きなものを頑張って探さなきゃならない状態はしんどいですよ。だから、ちょっと好きだなと思ったものでいいから、わざと大きい声で好きと言ってみるのはありだと思います。しっくりきたらもっと好きになるだろうし、何か違うなと思ったらまた別のものを好きと言えばいいんです。それくらい好きに対して責任を持たなくていいと思うんですよね。

――もっとカジュアルに好きと言っていいんですね。

箭内 僕は会社のマークをイチゴにしているんですけど、この前、弟と話したら、「兄ちゃん、そんなにイチゴ好きだったっけ?」と言われて(笑)。最初は軽い感じでイチゴが好きだと言っていて、そうしたらみんながイチゴをくれるようになったりして、そのうち本当にイチゴが好きになっていったんじゃないかなと思うんですよね。派手な服が好きだと言って、派手な格好を何回かしていたら、「お前、派手だな」と言われて、次の日ちょっと地味な格好をしていたら、寂しがられちゃって、「これはいけねぇ」と思って、また派手な服を買うみたいな。そのくらいいいかげんでいいんですよ。「確固たる信念を持って派手な服を着続けています」とかじゃなくて、少し肩の力を抜いたほうが人生は楽しくなるんじゃないかなと思います。

――冒頭のお話で、いったんすべてを吐き出したから、今は具体的にやりたいことがあるわけではないとおっしゃっていましたが、こうなっていたいみたいなビジョンはないんですか?

箭内 そういうのはないですね。まぁ、でも、やっぱりみんなで笑っていたり、幸せだったりというのはしていきたいですし、それを実現するためのツールが広告だったり、音楽だったり、イベントだったりというのはこの先も変わらないんだろうなって思います。それこそ「風とロック芋煮会」(今年は9月7・8日に福島県郡山市の開成山公園にて開催)というイベントを毎年やっていて、今もその準備で追い詰められているんですけど、これはずっと続けたいかな。どんどん大きくしていきたいとかじゃなくて、どんなに小さくなっても集まってくれる人と最大限楽しめる形でやり続けたいです。今は1,000人単位の規模でやっていて、この間のさいたまスーパーアリーナは1万人単位でしたけど、10年後に20人とかでやっていたとしてもそれはそれですごく幸せなんだろうなと思います。

――みんなが笑っている状況をこの先もずっとつくり続けていきたいということですね。

箭内 話していて思いましたけど、僕の人生の最終目標は「世界平和」なんです。広告もイベントも大学も音楽も、世界の幸せと笑顔を実現するための手段。なので、これから次にやることも「世界平和を実現するために必要となること」になるんだと思います。人々が驚いたり、固定観念が塗り替えられたり、できっこないと思われたことを実行することで新しい勇気が湧いてきたり、そんなふうにして何かを形にしていきたいですね。アウトプットのスタイルはそのつど湧きあがるままなので、次は例えば絵本を描くかもしれないし、施設建築をつくるかもしれない。そこはまだまだ無限です。

 

『雲と虹 僕が出会った人と言葉』

『雲と虹 僕が出会った人と言葉』

箭内道彦[著]
¥2,420/玄光社

 

コマーシャル・フォトの人気連載が書籍化。俳優、ミュージシャン、写真家、アートディレクター、アーティストなど、仕事で出会った55名の人との交流の記録を写真と言葉でつづるほか、撮影時のエピソードやそのときに生まれた仕事のビジュアルといった詳細な情報も紹介する。特別対談(吉高由里子・宮﨑あおい)も掲載。

CREATIVE DIRECTOR / MICHIHIKO YANAI
箭内道彦

1964年、福島県郡山市生まれ。90年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒。博報堂を経て、2003年に「風とロック」設立。代表的な仕事に、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、資生堂「uno」、サントリー「ほろよい」、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロなど。東京藝術大学美術学部デザイン科教授、フリーペーパー『月刊 風とロック』発行人・編集長、福島県クリエイティブディレクター、猪苗代湖ズのギタリストでもある。今年9月7日(土)、8日(日)に 福島県郡山市の開成山公園にて「風とロック芋煮会 2024 イモニーシンフォニー “FURUSATO”」が開催される。

Photos:Go Tanabe Composition & Text:Masayuki Sawada

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