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【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.34】共感することばかり! ダンス映画の先駆け的青春映画の傑作『フェーム』

【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.34】共感することばかり! ダンス映画の先駆け的青春映画の傑作『フェーム』

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鈴鹿央士 連載 鈴鹿央士の偏愛映画喫茶 
発表

 

この映画は、実は存在を全く知らなかったのですが、先日まで撮影していた作品の監督さんに、“大傑作だよ!”と勧めていただいて、宿に帰ってすぐに観たんです。だから事前情報としては、“芸術学校の人たちのお話”ってことだけ。そうしたら、なんかスゴイなって思うことの連続で、とても面白かったです。

鈴鹿央士 おすすめ 映画

『フェーム』(1980 アメリカ)
ブルーレイ2,619 円(税込)DVD1,572 円(税込)発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
©1980 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

エンタメに青春をかける学生みんなが主役の、ステップアップストーリー

 ただ、ストーリーは説明しにくい(笑)。誰が主人公ということもなく、とある芸術学校に通う複数の生徒たちの姿や経験を、並行して映し出していくんです。「結末」的なものもなく、どことなくドキュメンタリーのようなリアル感がかっこいいんです。冒頭はその学校の入学オーディションの場面が続くんですが、僕はしばらくカメラに向かって喋る形式のドキュメンタリーかと思いながら観ていました。そしたらある生徒が言葉に詰まったところで先生が映って、あ、ドキュメンタリーじゃないのか、と。でも、その最初のところで既に“いい映画”な予感がしました。


 主にダンス、演技、音楽の3つの学科に分かれていて、オーディションに始まり1年目、2年目、3年目、4年目と何人かの生徒たちの姿を追っていくので、彼らの変化や成長を見ることができるんです。当然、受かる人もいれば落ちる人もいる。そういう厳しい現実みたいな描写もちゃんとありつつ、エンターテインメントとしても楽しめる映画になっています。

 面白いのは、割に「こりゃダメだ」みたいに見えた人たちが「え、受かるんだ!?」って驚きもあったりしたこと(笑)。そんな風に、すごく個性の強い人たちが集まっているとも言えますよね。モデルにした学校(ハイスクール・オブ・パフォーミング・アーツ)は実際にニューヨークにあって、アル・パチーノさんも通っていたそうです。そういうことを知ると、余計に興味深くて面白かったです。

 オーディションで自分的に1番印象に残ったのは、リロイという黒人の青年。彼のダンスを見て、わお~ってなりました。でも彼はそれまでちゃんとした教育を受けていなくて、字があまり読めないんですよ。そんな彼にキツくあたる女の先生がいるのですが、確かにダンス学科に入ったからと言って、ダンスだけ出来ればいいというわけではないんですよね。何を専攻するにしても、やっぱり教養が必要だと先生は強く言うのですが、僕も“うんうん、そうだよな”と思いながら観ていました。

    

即興感が最高にかっこいい、音楽とダンスの生まれる瞬間!

 やっぱり芸術学校だと実感させられて最高なのが前半の食堂のシーン。最初は大勢がワイワイガヤガヤ騒がしいだけなんだけれど、誰かが弾いたのか歌ったのか、一つのリズムやメロディーにみんなが乗っかりはじめて、弾く人、歌う人、踊る人と、大勢が一体化していくんです。みんなの中から音楽が段々と生まれていく、みたいな。なんかもうズルいぐらいかっこいい! 芸術学校だからこそのシーンであり、本当にスゴイな、青春だなって思わされて僕も興奮しました。

その輪に「ちょっと強烈過ぎて……」と入れない、おどおどしたドリスと精神科に通っているモンゴメリーの2人は可愛かったですね。モンゴメリーは親が俳優というサラブレッド。ドリスの母親は過保護でかなり強烈、2人とも親の影響下から抜け出せず、胸に色々抱えていますが、映画の中で成長していきます。

 僕が一番好きだったのは、素晴らしい曲を作るブルーノ。お父さんがタクシー運転手で、息子に無断で学校の前にやって来て、息子が作った曲をスピーカーでかけるシーンも最高でした。その曲を聞いた生徒たちが一斉に外にバーッと出てきて、学校前の路上でみんな踊り出すんです。学生たちのエネルギーとパワーが爆発していて、なんてエネルギッシュなんだって、すごく観ていて楽しくて、最初の食堂のシーンと合わせて大好きなシーンです。


 拳銃自殺をしてしまった俳優を崇拝している演劇科のラルフが、舞台上で大失敗してしまう後半のエピソードも色々と考えさせられました。それまでもずっとラルフは、彼のような俳優になりたいと言い続けていたんです。もちろん誰かを目指すのもいいけれど、やっぱり自分自身を確立することが大事なんじゃないかなって。自分の芸術を高めることこそが大事だし、やっぱりモノマネではダメなんだな、と痛感しました。

     

俳優・鈴鹿央士も共感した“エンタメの世界で必要なこと”とは?

 最近、ちょうどそんな話を俳優の友だちとしていたんですよ。“こういう時は、こういうお芝居になる”という基本的な形ってやっぱりあるわけですが、色んな方々が色んな作品で演じてきて、そういうテクニックを学ぶことも、もちろん必要なんですよね。でも、それだけだと誰かがやってきたことの単なる繰り返し。自分固有の何かを出していかないと、それ以上前に進まないというか。

 例えばこういう時は、「あっ」と手を口に添えれば、言ってはダメなことをつい言っちゃった、ということを伝えられますよね。でもその仕草をメチャクチャ強そうな人物はしない。逆にヤクザっぽい人がやったら、むしろ面白いとか急に可愛らしくなるかも、とか、定型の仕草や形はあるけれど、技としてあるものと、役として考えるものには違いがあります。

 だから、憧れの役者のイメージはあっても、そうではなくて自分自身を持つ、自分自身で作るものが大事なんだよな、と。ラルフと友達の会話を聞いて、僕も友だちと話したばかりだったので、余計に強く印象に残りました。

 また演技の先生が、役者が売れるには才能だけじゃダメなんだ、必要なのはテクニック、いいエージェント、そして面の皮の厚さだ、と言うんです。確かにその通りかもしれないなって(笑)。テクニックに関しては、さっきの話と重なりますが、お芝居を知るという意味においては、やっぱり基礎としてすごく大事だと僕も思います。テクニックが身につくと、変に浪費しなくなるんですよ。無理な発電をしなくて済むようになるというか。ただ身についたことを繰り返すだけじゃなく、自分の心の動きなどを使いながら新しい何かを生み出せるのもテクニックというか。それが、引き出しが増えるということにも繋がるんですよね。


 いいエージェントというのも、すごく大事だと思います。やっぱり最初は仕事選びも事務所の方針に拠りますから。それにのっとって謙虚に1つ1つ進む姿勢は大切だけど、同時にそれで満足したり貪欲さがなくなったら、その先の成長はないんですよね。一番近くにいるマネージャーさんはそういう変化をいちばんわかっていて、俳優の気持ちに合わせて次にステップアップできるような仕事選びをするかどうか考えていると聞いたことがって、すごく面白いなって思いました。僕自身は今のままでいいという考えはないので、そういう仕事選びでよかったな、と思って。

 僕はスカウトされて、何も分からないまま現場に出てお芝居を始めてしまったのもあって、もっと勉強しなければって思うことがよくあるんです。韓国の俳優さんたちはみなさん、ちゃんと俳優学校みたいなのを出てから、作品に出演される人が多いんですよね。しかも、その後、また新しく学び直しが出来ると聞きました。例えば、最近はこういう映像の撮り方をするとか、こういう編集をするとか、それに対応できるような芝居の新しい表現方法や表現手法を再履修できる環境が整えられていると聞いて、本当にスゴイな、いいなぁって。

    

人生の迷いも芸術の厳しさも…一人一人の悩みがみんなに共通する青春物語

 でも本作を観ながら、芸術を極めるってやっぱり孤独ではあるなと思いました。ミュージシャンも絵を描く人も、自分の中から思ったものが出て来ないときもあるだろうし、みんな色んなことで悩むと思います。この映画でも、セクシャリティや親子関係や家庭環境も含めて、自分の中で生まれる葛藤や悩みが描かれています。いろんな性格の人がいて、裕福な子もいれば、毒親や貧困で苦しんでいる子もいる。もちろん芸術を極めようとしている人に限りませんが、みんな色んなものと戦っている。これから社会に出る年代、自分の人生や自分自身を見つめようとする時に、みんなが抱える共通する悩みや葛藤だと感じました。

 だからこの映画は、若い人、学生さんに見て欲しいです。文化祭や体育祭、競技大会などの学校行事でみんなとの一体感や青春を感じられると思うので、思いっきり楽しんでもらいたいなって。その上で自分のやりたいことや夢に向かって行く時に、この映画を観て欲しい。僕自身、この映画を観て、なんか頑張ろうってなれました。

 やっぱり最初の食堂のシーンや、中盤の道路に出てみんなで躍るシーン、そして最後の卒業公演のシーンなど、若者たちのハツラツとしたエネルギーがほとばしる瞬間が最高なんです。しかもよく考えると、段々と音楽が出来て、みんなのリズムが合っていくシーンって、即興的でかっこいいんだけど、実はものすごく作り込まれたシーンじゃないかな、と。撮るのは、絶対にすごく大変だったハズですよね。音楽やダンスがみんなで自然発生的に生まれていく、その楽しさでワーって盛り上がるように作られているので、そんな興奮も味わって欲しいです。


 ちょっとくだらないシーンですが(笑)、彼らが2年生ぐらいの時に、数人の男子生徒が男子トイレから女子更衣室を覗いてるシーンがあるんです。それから学年が上がると、人数が増えていて(笑)。最後には、かなり大柄な生徒が「俺にも見せろ」と参加してきて、天井のはりみたいのが崩れちゃって大騒ぎになるんです。

彼らが下に落ちると、人が上から落ちて来たのに、便座に座ったまま、ずっとホルンを吹き続けている人がいて(笑)。おかしくて笑っちゃいました。重要なシーンではないけれど、若者の愚かさや純粋さみたいなものが面白いなって。可愛いなって。あれ、僕、何度か彼らを「可愛い」って言ってますね。同世代として同じ目線で見るのではなくて、若い子を見て可愛いと思ってしまっている!! そんな自分に今、衝撃を受けています(笑)。僕もここ数年で、きっと変わったんですね(しみじみ)。

CERTIFIED COPY, (aka COPIE CONFORME), from left: William Shimell, Juliette Binoche, 2010. ph: Laurent Thurin Nal/©IFC Films/Courtesy Everett Collection

『フェーム』(1980年 アメリカ)
ニューヨークのパフォーミング・アーツ学校に通うダンサー、ミュージシャン、俳優を目指して日々奮闘する若者たちの姿を活写する。80年代の『フラッシュダンス』などをはじめとするダンス映画の先駆けとして人気を博した。歌手を目指すココ役を演じたアイリーン・キャラが歌う主題歌も大ヒット。キャラは後に『フラッシュダンス』の主題歌も歌い、グラミー賞を受賞する。本作はアカデミー賞で作曲賞、主題歌賞に2曲が同時ノミネートされた。監督は、『ミッドナイト・エクスプレス』(78)、『バーディ』(84)、『エビータ』(96)などで知られるアラン・パーカー。

また1つ作品の撮影が終わりました。最近は、また写真撮影にハマっています。ソール・ライターさんと、ヴィヴィアン・マイヤーさんっていう2人のカメラマンさんが撮る写真がなんか好きで。ストリートというかスナップ系の写真を撮る方たちなんですが、2人の写真集を買って読んだりしているところです。僕もマニュアルのフィルムで、試行錯誤しながら撮っています。

Text:Chizuko Orita

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