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第3回
「エスパス ルイ・ヴィトン東京」
ってご存じですか?
\ここに注目!!/
ルイ・ヴィトン 表参道店7階
「エスパス ルイ・ヴィトン東京:
FIORUCCI MADE ME HARDCORE
FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」
表参道でのお出かけの途中に寄れるアートスポット。ネット台頭以前の70〜90年代の英アンダーグラウンドカルチャーを感じられる映像作品は必見!
Courtesy of the artist and Foundation Louis Vuitton, Paris ©Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
フィリックス・ザ・キャットが
見下ろす、マーク・レッキーに
よる日本初個展!
皆さん、表参道のルイ・ヴィトンの7階にギャラリースペースがあるのはご存じですか? 2011年に誕生したコンテンポラリー・アートスペースである「エスパス ルイ・ヴィトン東京」ではこれまでに、ヴァージル・アブローがキュレーションしたグループ展、ダン・フレイヴィン、ヴォルフガング・ティルマンスなど、世界的に注目を集めるアーティストたちの個展を発表してきました。なかなかルイ・ヴィトンの店舗に立ち寄りがたい……と思っても、だいたいドアマンの方が気がついて、7階へとスムーズに案内してくれるので安心してください。
そんな「エスパス ルイ・ヴィトン東京」では8月18日まで、アーティストのマーク・レッキーによる個展「FIORUCCI MADE ME HARDCORE FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」が開催されています。1964年にイギリス・リバプール郊外のバーケンヘッドに生まれたマーク・レッキーは、労働者階級の家庭で育ったこともあり、フーリガンの存在は身近にありました。彼が10代の頃にフーリガンの傍らで、サブカルチャーのひとつとして生まれたファッションスタイルが「カジュアルズ」です。STONE ISLANDやFRED PERRYをはじめとするブランドが生まれたそのスタイルに彼も傾倒。その後、美術大学を卒業後に1997年にロンドンへ拠点を移します。まさに本展のメインを飾る『Fiorucci Made Me Hardcore』は、70〜90年代にかけてイギリスのアンダーグラウンドシーンを凝縮させた15分の映像作品。1999年に発表した本作品は、インターネット以前の世界に彼が独自に全世界から入手した数々の映像の断片を組み合わせてひとつにまとめ上げられた、モンタージュという映像技法で制作されています(ちなみに2014年にJamie xxがリリースした「All Under One Roof Raving」では本映像作品の一部がサンプリングで使われています)。
この映像作品は、実はマーク・レッキーのオフィシャルアカウントのもと、YouTubeでも観ることができます。でも、会場で映像の音を流す巨大なスピーカー「SoundSystems」とセットになった「FIORUCCI MADE ME HARDCORE WITH SOUNDSYSTEM(10周年記念リマスター版)」(1999-2003-2010年)で体感することで、彼らと一緒に踊りたくなるような、親しみを感じる、ある種の臨場感に入り込めます。一方で同時に、途中途中で目の合う登場人物との妙な距離感によって、もう今や存在し得ない幽霊化してしまったダンスフロアやカルチャーに対してどこか不思議と冷静な距離も感じます。そしてスピーカーの頭上には、誰もが見たことのある黒猫のキャラクターのフィリックス・ザ・キャットをモチーフとしたバルーン作品「Felix the Cat」(2013年)がだらっと横たわっています。
イギリスではアートに限らず、音楽やファッションにおいてもパンクやモッズをはじめとする労働者階級から数々のカウンターカルチャーが誕生しました。今となっては、メインカルチャーに対するカウンターカルチャーは名前がつけられるほどの形にならずにインターネットの海へと流れていきます。そんな現代に本作品を観る感覚は、ただ単純に過去のカルチャーにノスタルジーを感じるのではなく、今まさに、無数に生まれるカルチャーの数年後の姿をも想像させるような未来的なものだったように思いました。
PORTRAIT OF MARK LECKEY AT ESPACE LOUIS VUITTON TOKYO, 2024
©Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
「エスパス ルイ・ヴィトン東京:
FIORUCCI MADE ME HARDCORE
FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」
マーク・レッキーはイギリスの名誉ある現代美術賞として知られる「ターナー賞」を2008年に受賞。今までに「横浜トリエンナーレ 2008」に参加したことがあるが、日本での個展は初めて。
倉田佳子
大学卒業後、独学で編集・執筆業を始める。その後、5年間会社員と副業で編集・執筆業を並行し、2022年に独立。国内外のブランドやメディア、アーティストと仕事をする。
Instagram:@yoshiko_kurata
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