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いつもテレビで、動画配信サービスでアニメを楽しみながら、ふと思う。ハイクオリティな作品は、どんな人たちがつくってくれているのか。今回注目を集めるプロダクション「ぴえろ」を突撃し、制作現場のリアルな声を聞いてみると、そこにはチャレンジを続けるクリエイターの姿があった。
高品質の人気作を続々発表する、
制作会社を取材!
進化する「ぴえろ」
株式会社ぴえろ
Pierrot Co.,Ltd.
1979年に設立。主な作品は『NARUTO -ナルト-』(2002〜07年)、『BLEACH』(2004〜12年)、『キングダム』(2012年〜)など。
アニメプロデューサー
富永禎彦
2013年にぴえろに入社。現在、『BLEACH 千年血戦篇』のプロデューサーを務める。
アクションからギャグまで
高い志で長期シリーズを手がける
「メンズノンノで大きな特集が組まれるという時点で、若い方の中でアニメが盛り上がっているんだと確信できてうれしかったです(笑)。正直、私が業界に入った頃は、アニメはまだコアなファンのものという認識で、アニメに関わる仕事と言っても周りは『?』でしたから」
そう語るのは、近年話題作でプロデューサーを務める富永禎彦。設立45周年を迎えるぴえろは、これまで手がけてきた多彩な作品群を見ると、まさに“信頼と実績”という言葉が似合う。1981年放送のアニメ『うる星やつら』をはじめ、『魔法の天使 クリィミーマミ』『NARUTO -ナルト-』『BLEACH』『おそ松さん』など、アニメ史を描きながら少年少女の心をつかむ作品を多数手がけてきている。また、アニメ制作だけでなく、商品化窓口など権利窓口取得に業界でいち早く取り組み、ファンダム形成に大きく寄与してきた。そんな老舗の制作会社が今考えていること、取り組んでいることとは──。
「アニメのように絵を扱う仕事は、気持ちが作画の細部に影響を及ぼし、それができあがってくる映像に如実に表れるんです。自分も含め、関わっていただくスタッフに『とにかく気持ちいい作品をつくりたい』や『ハイクオリティなものを生み出したい』といった、誰にも負けないような個々の思いを実現できるよう心がけています」
その中で富永にとって大きな挑戦となった作品が『おそ松さん』だ。『機動戦士ガンダム』シリーズをつくる制作会社「サンライズ」出身で、「これまで硬派な内容の作品が多かった」という彼が手がけた結果…爆発的人気を集めた。
「2015年に赤塚不二夫先生の生誕80周年作品として始まった『おそ松さん』を手がけ、シリーズの社会現象的な大ヒットを目の当たりにしたときは、正直、自分の仕事だというのが信じられないほどでした。ぴえろは『幽☆遊☆白書』や『NARUTO -ナルト-』『東京喰種 トーキョーグール』など、各時代の人気原作と組ませていただき技術を磨きながら、近年は『BLEACH』や『キングダム』で培った、その力を発揮しています。もしかしたら、ドラマやアクションを主とした作品が得意というイメージがあるかもしれませんね」
原作/冨樫義博「幽☆遊☆白書」
(集英社「ジャンプコミックス」刊)
©Yoshihiro Togashi 1990年-1994年 ©ぴえろ/集英社
「一方で、もともと『天才バカボン』や『おそ松くん』というコメディ作品の実績もあります。その土壌を生かした『おそ松さん』でしたが、試行錯誤の繰り返しでした。アニメではキャラクターに声優さんの声が入り、性格や人間性が立つので、キャラクターを好きになって観続けてくださることが多い。作品を好きになってもらえるように、赤塚作品にリスペクトを持ちながら、サンライズの同期で『銀魂』の監督を務めた藤田(陽一)監督とシリーズ構成の松原(秀)さんの多大なる力をお借りして、6人のキャラクターづくりやギャグをつくり上げていきました。この原作、このスタッフで突き抜けたことをできたのは、ぴえろだからですね」
幅広い作品を扱うぴえろの柔軟性を生かした本作が見事成功を収めた。が、それと同時に、『おそ松さん』とは立ち位置もターゲットも異なる『BLEACH 千年血戦篇』について考えたとき、おのずと新しい視座に立つことになった。
「近年、他のプロダクションでは、放送するシーズンを区切りながら、ものすごく高いクオリティのアニメを制作する流れが生まれてきました。ぴえろは歴史があり、安定して高い質の作品を世に送り出している点で評価していただいている半面、“長期シリーズ専門の会社”というふうにも見られていると思います。もちろん2〜3年という長期にわたって、途切れることなくアニメを楽しんでいただくことにも価値があるわけですが、『呪術廻戦』のような、ハイクオリティの作品を短期間で一気につくることは得意としていません。求められる高い質の作品を途切れずにつくり続けることが難しくなっている今の時勢を鑑みて、制作会社の在り方や体制を考えるときがきていると思っています。ぴえろとしては長期シリーズの制作をこれまで同様大事にしつつ、短期でハイクオリティの作品を生み出すという強みも両立させていくべきだと考えていて。そのための会社のブランディングにも力を入れたいんです」
そのために、富永は新たに「PIERROT FILMS」を設立した。
「このスタジオでは大人向けの漫画を原作とする作品や、オリジナル作品を手がけていきます。『BLEACH 千年血戦篇』の次のシリーズも、『PIERROT FILMS』で制作する予定です。本作は、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』を観ている方に向けていく作品だと思っているので、スタジオのブランド力をしっかり高めながら、短期間で質の高い絵と物語を提供していくのが目標ですね」
Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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