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世界中で人気を博している「少年ジャンプ+」連載中の『怪獣8号』が、待望のアニメ化を果たす。さらに、制作会社Production I.G × スタジオカラーのタッグやXでの世界同時配信など気になる話題も山盛り! 原作・松本直也先生の証言をたどりながら、いろいろな“新しい”を詰め込んだ本作の魅力を深掘りしていく。
原作・松本直也先生がアニメ化に寄せる思い
2020年の連載開始当初から大きな話題となった『怪獣8号』。原作の松本直也先生が、原作者だからこその視点でアニメ化への思いや、見どころを語ってくれた。
松本直也先生
2006年、『赤マルジャンプ』に掲載された「ネコロマンサー」で漫画家デビュー。以降、『週刊少年ジャンプ』「少年ジャンプ+」で様々な作品を連載。
Q.01
アニメ化の知らせを聞いたときの気持ちを教えてください!
小学生の頃からの目標だったのですごくうれしかったです。半面、夢がかなわない下積み時代が長かったせいか、実感や現実味がなかなか湧かなかったのも覚えています。僕はアニメの中でもアクションシーンが好きなので、怪獣とのバトルシーンが楽しみです。
Q.02
スタジオカラーによる怪獣デザイン、洋楽の主題歌など、今回の試みについてどう思いますか?
僕の作品に関わってくれる人たちが、こんなことをやってみたいというアイデアやビジョンを持っているならば、できる限りそれをやってもらいたいと思っています。
「初の試み」にはリスクもつきものですが、この先のアニメやエンタメ作品のための布石となる可能性も秘めていると思うので、挑戦する価値があるはず。例えば今回のテーマ曲について。洋楽をアニメのテーマ曲とすること自体はいくつも例がありますが、新たに曲を書き下ろしてもらうのは珍しいことのようで、今後の日本のアニメと海外の楽曲の在り方をひとつ前に進めるような一例になれる可能性があるなと思います。僕の作品が何かひとつでもそういう役割を果たせたら光栄なことです。
Q.03
松本先生は今回のアニメ化にどのように関わっていますか?
基本的には監修として関わっています。脚本、デザイン画、コンテ、アフレコなど、様々な要素で原作者としての意見を言わせてもらっています。大切にしていることとしては、アニメと漫画は似ているようでまったく違うものなので、漫画の価値観を強要すると中途半端なものができあがってしまいます。そうならないよう、できるだけアニメとしての面白さや完成度が上がるよう、考えながら関わるようにしています。
僕自身が流れを止めてしまわないよう、ある部分で僕よりずっと優れた人たちの才能や能力が存分に生かされた「原作超え」な作品になったらうれしいなと思っています。
1話1ページ目。怪獣の迫力とリアルな市街地の描写は、冒頭から緊張感があり、ぐっと引き込まれる。スマホの画面で読んでいるのを忘れるほど、怪獣のダイナミックさが伝わってくる。
Q.04
実際にアフレコ現場もご覧になっているのですよね。現場はどうでしたか?
とにかく声優さんたちの声の演技が魅力的で、毎回感動させられています。皆さんしっかりと意図を持ってつくり込んで現場に臨んでいて、プロ意識の高さもすごいです。明るい役者さんが多く、殺伐としない和気あいあいとした現場の空気をつくってくださるのもありがたいです。
Q.05
声優さんとはどのように関わっていますか?
キャラクターの感情の具合やセリフのトーンなどを、強要しないようあくまで「原作ではこういう意図です」という形で共有させてもらっています。強要しないのは、「アニメーションとしては原作より強く感情を出したほうがいい場面」などがあり、その点についての経験値は声優さんたちや、アニメ制作陣の方々のほうが多く積んでいるからです。また、台本からだけでは読み取れない部分への質問などをしてもらったときには答えています。
Q.06
先生はもともと“怪獣”がお好きでしたか? 好きなポイントを教えてください!
子どもの頃ウルトラ怪獣やゴジラ作品に夢中になりました。大人になってからは興味が薄れていたんですが、映画『シン・ゴジラ』があらためてその面白さや魅力を教えてくれました。
怪獣の好きなところはカッコいいところです。敵として描かれることが多い怪獣ですが、多くは「悪」ではなく「脅威」として登場します。それがカッコよさや憎めなさを発生させるひとつの要因かなと思いますね。怪獣8号の「怪獣」は、海外の方や怪獣に興味がない人にも直感的に「怖さ」や「不気味さ」が伝わるようクリーチャー寄りにデザインしていますが、カッコよさ、憎めなさは共通項として忘れないようにしています。
カフカが怪獣をのみ込み、自らも怪獣となってしまうシーン。ギャグ要素もふんだんに盛り込まれる。
Q.07
松本先生が考える、アニメの見どころを教えてください。
道路に討伐専用レーンがあったりと、原作以上につくり込まれた世界観はひとつの見どころかと思います。それからやはり、実力高い制作陣でつくられたキャラクターたちのアクションシーンは見どころになると思っています。
アニメが好きなので動きを想像しながら描いた場面は多いですが、アニメ版のキャラクターは僕の絵とは違って180度どの角度からも成立するデザインになっています。なので様々な角度にカメラを動かしながらのぬるぬるアクションが可能なのです。
Q.08
作品の着想源はありますか?
幹としては当時の僕自身の人生です。なりたいものになれず、それに近い別のところで生きていた者の再出発の物語です。枝としての着想源は『シン・ゴジラ』や『パシフィック・リム』など、自分の好きな様々な作品があります。
Q.09
キャラクターたちの設定や人物像、関係性はどのように考えましたか?
序盤はカフカの物語に必要な人物たちを連想ゲームのように生み出し、相関図を広げていった感じです。もし支持を得られず打ち切りになった場合、この相関図だけで物語をまとめるつもりでした。
幸い打ち切られることなく話が進み、そうして生まれた各キャラクターを深掘りすることができるターンに入ってからは、ときにカフカの物語から離れ、おのおののキャラクターを中心に据えた別の相関図を連想ゲームのように発生させていきました。
かつてともに「日本防衛隊」になることを誓った幼なじみのミナと、対照的な自分に失望するカフカ。
Q.10
今後の『怪獣8号』(原作)について教えてください!
9号との戦いの中で、カフカとミナの物語だけでなく他のキャラクターたちの実現したいシーンもいくつかあるので、好きなキャラクターがいる読者の方々はいろんな妄想をしながら待ってもらえるとうれしいです。
Q.11
メンズノンノ読者へひと言お願いします。
皆さんそれぞれ大事な岐路に立たされたり、壁に当たったり、苦しい選択を迫られたりする場面があると思います。そんな中、怪獣8号がほんの少しでも、何かに向かって夢中になって努力したり挫折したりしている人たちを勇気づけられるような存在になれたらいいなと思います。
単行本は現在12巻まで大好評発売中!
「少年ジャンプ+」にて2020年7月より連載をスタートし、現在隔週金曜に更新中。休載日にアップされる同作のイラスト集「怪獣百景」も人気。「少年ジャンプ+」では初めて読む人は全話無料だから、まだの人は急げ!
©松本直也/集英社
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