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世界中で人気を博している「少年ジャンプ+」連載中の『怪獣8号』が、待望のアニメ化を果たす。さらに、制作会社Production I.G × スタジオカラーのタッグやXでの世界同時配信など気になる話題も山盛り! アニメーションプロデューサー・大平将史さんの証言をたどりながら、いろいろな“新しい”を詰め込んだ本作の魅力を深掘りしていく。
“最強”を詰め込んだアニメのつくり方
作品制作の指揮をとるアニメーションプロデューサーが思い描く、最適なアニメ化とは。制作の舞台裏をひもとく。
アニメーションプロデューサー
大平将史
2014年にProduction I.Gに入社。制作進行を経て、現職に。手がけた作品は、『憂国のモリアーティ』や『天国大魔境』など。
全クリエイターの強みを生かして
怪獣と戦う世界を現実にする
アニメ制作会社Production I.Gのアニメーションプロデューサー・大平将史が、アニメ『怪獣8号』を制作するにあたり、初めにやったことは「どういう絵をめざしていくか指針を示す」ことだ。
「どの作品でもやっていることですが、まずはめざしたい絵づくりのために、キャラクターデザインや美術、音響まわりなど、各セクションに最適な人材を決めていきました。『怪獣8号』は幅広いファンを持ち、映像化に大きな期待が集まる作品なので、それに負けないように、『誰がどう見ても強いスタッフをそろえたい』と最初に思って」
カフカをはじめ登場人物のデザインを担ったのは、Production I.G所属で『NARUTO -ナルト-』シリーズや『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』のキャラクターデザインを手がけた西尾鉄也。怪獣と激闘を繰り広げる日本防衛隊の隊員たちが、画面の中でダイナミックに躍動する。
「西尾さんが描くキャラクターデザインは線量や描き込みが多いわけではないのですが、立体感は失われていない。つまり、人物を魅力的に表現しながら、アニメーターが描きやすく、動かしやすいデザインでもあるんです。アクションとドラマをシームレスにするためには絶対必要なバランス感覚だと思います。西尾さんには人間以外の8号や9号といった人型怪獣のデザインや、総作画監督もお願いしています」
そして、怪獣の造形・意匠を担う怪獣デザインを、『シン・ゴジラ』のゴジライメージデザインや『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の監督を務めたスタジオカラーの前田真宏が担当し、“怪獣がいる世界”に奥行きを加えている。
「今回の企画は、Production I.Gがアニメーション制作をし、スタジオカラーさんに怪獣まわりを担っていただくというところからスタートしました。前田さんには設定だけでは補えない、例えば戦闘の際にあらわになる怪獣の骨などの内部構造や、寄ったときのディテールの描き込みなど、本編カットにも手を入れていただいています。どの怪獣も本作の世界の中に存在させるために、海外のモンスターのような完全な異物ではなく、身近なものに感じられるようにつくられています。デザインをつぶさに見ていくと、自然に組み込まれた他の動物のパーツや、それによるどこかなじみのある動きを感じられるんです。また、ビジュアル面でいうと、怪獣のいる世界、壊される街の描写に説得力が欲しいと考え、美術監督を木村真二さんにお願いしました」
第1話に出てくるオレンジの怪獣のシーンは、怪獣デザインの前田真宏がイメージコンテも担当。「動きによって見える爪や口の中など必要なディテールや設定を詰めました。怪獣がどんなふうに発生して襲ってくるのか、制作初期に具体的な絵があったのはスタッフの意識共有を図るうえでも大きかった」
『鉄コン筋クリート』『海獣の子供』『ドロヘドロ』など、多くの作品で世界観をつくりあげているのが美術監督の木村。本作では怪獣のいる世界を圧倒的な説得力で描く一方、カフカたち登場人物の日常に差し込まれるギャグカットでは、一風変わったイメージ背景が作品のエッセンスとなっている。
「イメージ背景って実景ではないのでフワッとしたものが多いのですが、そんな僕の概念を覆す奇抜なものがあがってきたんです。話数を重ねてイメージ背景が出てくるたびに、作品の印象を豊かにする“色”になっていて、これは『怪獣8号』をつくる中で予想外だったけど、うれしい誤算でした」
また本読み(脚本会議)では、世界観を練りあげていくために、かなり話し合ったという。
「本読みの段階で怪獣のいる世界観や設定についてたくさん話し合いをして、怪獣出現のアラートを出す4つ目の信号や対怪獣専用道路をつくったり。この世界に説得力が出るよう強化しているので、細部まで注目してほしいです」
Photos:Norito Ohazama Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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