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跳ねるシャッフルがアイデンティティ。ギターとスネアが裏リズムでシンクロして、ベースがバンドをぐいぐい引っ張り、細かいテクニックが絶妙にきいている高度なサウンド。「チェリー」は16ビートの憎いヤツ、すごくウキウキするんだよね~。歌詞を深く読むと、好きなものに手を出せずに悶々とした日々を送ってる青春ソング、僕はこんなふうに感じてます。
シンガーソングライターの草野正宗さんの、弱々しくて、星ばっかり見ている少年のようなムードがさりげなく薫る楽曲は、ご本人いわく「何かから抜け出し、早く出発したい」というイメージらしい。ヘアスタイルとスタイリングにも甘酸っぱさを出してるのは多少の作為が匂うけど(失礼!)自分の身をさらけ出したからこそ、説得力が今でも一貫している。まぁ人間なら誰もが持つ恋する気持ちを軽やかに体現しているのだから、そりゃあ国民的人気を得て当然だよね。今や売れる作風のある種のお手本にもなってるしね。しかも96年はまだまだタイアップ曲全盛期、それはもうヒットのパスポートみたいなものでさ、持ってないとオリコンチャートに行けないし行っちゃいけないの。でもこの楽曲はノンタイアップながら発売4週目でオリコン1位。実力のみでミリオンセラーって、J-POPの文脈から見ても相当力があるんだよ。人生に空白をつくらず、ゆっくりだけど走り続ける草野さん、アンタ天才。
ATSUSHI MOMIYAMA
ヘアメイクアップアーティスト、代官山の理髪店『BARBER BOYS』主宰。1990年代を彩ったJ-POPを丹念に再評価していくシリーズ。メンズノンノウェブではプレイリストも公開中!
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