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第1回
マティスが晩年期に夢中になった
「切り紙絵」作品が日本初公開!
\ここに注目!!/
国立新美術館
「マティス 自由なフォルム」
集大成「切り紙絵」は圧巻! 展覧会メインビジュアルでもある《ブルー・ヌード IV》はニースから、他連作はスイスとパリに所蔵のものを一堂に!
展覧会メインビジュアル
色の魔術師が教えてくれる
「心」でみるアートの魅力
はじめまして。倉田佳子です。この連載では、展覧会の紹介を通して、皆さんに少しでもアートに興味を持っていただけたらうれしいです。
平凡な家庭で育った私がアートと出会ったきっかけは、祖父の存在。ファッションにもアートにも造詣が深かった彼のおかげで、幼少期から、感性と好奇心の大切さを教えられたと思います。けれど、大人になるにつれてSNSも相まって、そうした自身の直感が世の中の声から容易にかき消されるようになったなぁ、なんて感じます。そんなときに展覧会に行くと、われにかえる瞬間があります。
展覧会に行って、「かわいい」「かっこいい」「変なの」と素直な感覚から作家に興味が湧く方もいると思います。そこからもう一歩踏み込んで、感覚をたよりに深掘りすればするほど、ひとつの展覧会や作品が自分にとってより一層特別なものになることも。
時を遡(さかのぼ)ること1905年。ジョルジュ・ルオーやパブロ・ピカソが生きていた時代に36歳でブレイクを果たした、アンリ・マティス。21歳で画家人生をスタートしたマティスは、古典的な絵画技法である静止画からピカソをはじめ前衛的な画家と出会い、しだいに皆さんが知っているような鮮やかな「色」を放つ作品を30代で発表して、成功をつかんだ20世紀最大の巨匠のひとりです。目で見えるものではなく、自分の心が捉えた「色」を描いた作品群は、昨年、上野「東京都美術館」にも来日し、来場者数も30万人を超えるほど話題に。
2月14日から国立新美術館で開催している展覧会「マティス 自由なフォルム」は、絵画作品群ではなく「切り紙絵」に焦点を当てた日本初の展覧会! 切り紙絵の重要なコレクションを誇るフランスのニース市マティス美術館の全面協力を得て、日本初公開の作品も登場するそうです。
誰もが小さい頃にやったことのある「切り紙絵」。「それをなんで巨匠が?」なんて思うかもしれませんが、なんとマティスが切り紙絵に夢中になったのは作家人生晩年の70歳頃から…! 一貫して「色」と「線」を追求してきたマティスは、もちろん絵画作品を残し続けてきたわけですが、制作の裏側ではストイックすぎるあまりに、描くうちに「もっといい線がある」とひらめき⇄消すを繰り返していたそう。一方で幼少期から病弱だったこともあり、年を重ねて70歳で絵を描くこともままならなくなります。そんなときに出会った技法が「切り紙絵」。(作品を作り続ける意欲が本当にすごい…)
制作方法としてはただ単にカラーペーパーをくりぬくのではなく、アシスタントにグアッシュと呼ばれる水性絵の具で紙に色づけさせるところからスタート。切り取り、ピンで仮のレイアウトを見てトレースした後に取りつけるという工程で完成します。
そうした地道な制作過程を通して発表された最も大きな作品のひとつともいわれる、4m×8mの大作《花と果実》が本展で日本初公開! ニース市マティス美術館のメインホールで普段は展示してある本作品は、2021年に修復を経て本展に来日します。また、最晩年に切り紙絵の手法を応用した集大成作品としてマティスが残したヴァンスのロザリオ礼拝堂を体感できる空間も会場内に再現。一見、誰でもできそうな手法なのに、意外と間近で作品を見るとその絶妙な曲線美と色のバランスに圧倒されるはず。
自分の直感に耳を澄ませながら、ぜひ色づく春の季節にぴったりな展覧会を体感してください。
「マティス 自由なフォルム」
国立新美術館にて、2月14日~5月27日まで開催。20世紀最大の巨匠のひとり、アンリ・マティスの切り紙絵を中心に彫刻や絵画など圧巻の展示。港区六本木7の22の2 毎週火曜休館(ただし4月30日は開館)
倉田佳子
アーティストコーディネーター、ファッションライター。大学卒業後、独学で編集・執筆業を始め、現在は国内外のブランドやメディア、アーティストと仕事をする。
Instagramは@yoshiko_kurata
Title logo:Midori Kawano
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