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「愛」について考えてみる?映画監督 今泉力哉さんリコメンド。この冬観ておきたい恋愛映画3選

「愛」について考えてみる?映画監督 今泉力哉さんリコメンド。この冬観ておきたい恋愛映画3選

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君のお気に入りが見つかるかも。本誌連載『映画監督 今泉力哉の[オフビート映画に惹かれて]』より、「愛」について考えさせてくれる恋愛映画をピックアップ。

教えてくれたのは…

今泉力哉

今泉力哉

1981年生まれ。2010年『たまの映画』で長編監督デビュー。2019年『愛がなんだ』が話題に。その他作品に『his』『あの頃。』『かそけきサンカヨウ』『街の上で』『猫は逃げた』『窓辺にて』『ちひろさん』など。最新作は豊田徹也原作、真木よう子主演の『アンダーカレント』。

①井口奈己
『人のセックスを笑うな』

『人のセックスを笑うな』

©2008「人のセックスを笑うな」製作委員会

監督/井口奈己 出演/永作博美、松山ケンイチ、蒼井 優、忍成修吾、市川実和子ほか 販売元:ハピネット・メディアマーケティング Blu-ray¥4,290

山崎ナオコーラのデビュー作である同名小説を『犬猫』『ニシノユキヒコの恋と冒険』の井口奈己が映画化。美大に通う19歳のみるめ(松山ケンイチ)は、ある日20歳年上の講師ユリ(永作博美)に絵のモデルを頼まれ、彼女の自由奔放さに吸い込まれるように恋に落ちる。しかしユリは既婚者で、みるめは楽しいほどに切なさも覚えていく。みるめの友人・えんちゃん役を蒼井優が、堂本役を忍成修吾が演じている。

恋愛映画で描かれる
ひとりの時間の尊さ

2008年の公開当時、渋谷にあったシネセゾンという映画館で観た、瑞々(みずみず)しくて酸っぱくてとにかくおしゃれな恋愛映画です。黄色い風船。ロバ。バイク(スクータータイプ)。フィッシュマンズ。グレーのダッフルコート。松山ケンイチ。蒼井優。そして永作博美。永作博美。永作博美。大好きです。

永作さんをはじめ、俳優の生っぽいお芝居と画(え)のゆるやかな切り取り方がとにかく心地いい。想っている側の“受け身な人たち”で構成されていて、主人公のみるめやえんちゃんは突然現れたユリの存在にどんどん巻き込まれて気持ちが翻弄(ほんろう)されてゆく。「好きな人には好きな人がいる」という片想い映画の王道の関係性であるのに、なぜこんなにもずっと楽しいのだろう。

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②デヴィッド・ロウリー
『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』

『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』

©2017 Scared Sheetless, LLC. All Rights Reserved.

監督/デヴィッド・ロウリー 出演/ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ、リズ・カーデナス・フランクほか 販売元:ハピネット・メディアマーケティング Blu-ray¥5,280

『セインツ-約束の果て-』『ピートと秘密の友達』『グリーン・ナイト』などのデヴィッド・ロウリーによる92分のファンタジー映画。田舎町の一軒家で暮らす若い夫婦、CとM。ある日、Cが交通事故で急逝してしまう。病院でCの死体をひと目見て、シーツをかぶせて家に帰るM。すると死んだはずのCはシーツをかぶった幽霊となり、自宅へと帰ってきてしまう…。超小規模かつ即興的な体制でつくられたという美しい作品。

誰も見ることはないけど
確かに存在しているもの

主人公が寡黙な映画を撮ってみたい。『街の上で』のときにそう思っていたのに、結局主人公はおしゃべりな人物になってしまいました。今度こそ寡黙な映画をつくるんだ! と意気込み、思考する中で〈主人公が死んでいたらいいのでは〉という考えに至りました。そしたら物理的に他の登場人物との会話が成立しないじゃないですか。そんなことを考えながら『ア・ゴースト・ストーリー』を見返しました。

この映画は、事故で死んでしまった夫が幽霊となって妻を見守り続ける姿を描いたファンタジーです。亡くなった夫(ケイシー・アフレック)はもちろん、妻(ルーニー・マーラ)も夫の死以降はまったくといっていいほどセリフがなく、展開もとても少ないので、どこか絵本のようなかわいさとシンプルさと怖さを持った作品です。

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③ギヨーム・ブラック
『女っ気なし』

『女っ気なし』

©︎Année Zéro – Nonon Films – Emmanuelle Michaka

監督/ギヨーム・ブラック 出演/ヴァンサン・マケーニュ、ロール・カラミー、コンスタンス・ルソー 販売元:エタンチェ DVD¥3,300

フランス北部のオルトという小さな町を舞台に、地元に住むシルヴァンとバカンスにやってきた母娘の交流が描かれる。明るく奔放な母と少し内気な娘。3人は仲よく過ごしていたが、やがてバカンスには終わりが近づき…。『7月の物語』や『みんなのヴァカンス』など、開放的なバカンスの戯れと恋の駆け引きの中に、笑いや切なさを誘うシチュエーションを織り込むギヨーム・ブラック監督の劇場デビュー作。

人の感情やドラマに
大きいも小さいもない

お笑いコンビAマッソの第9回単独ライヴ「与、坐さうず」で見た「芽生え」というコントのことをずっと憶(おぼ)えている。50代間近のスーパーのパートのおばはんに扮(ふん)したAマッソがこれまた50代のイソヤマのおっさんという従業員に対してのグチを休憩時間に喫茶店で言い合っているのだが、途中で片方のおばはんが実は最近イソヤマと「やったんや」――つまり体の関係を持ったと告白、そこから謎にマウントを取り始めるというコント。匿名性のあった「おばはん」が一夜だけ「シバタエツコ」になったというネタ。これが本当に笑えて感動する市井の人々の話なんです。

誰かにとってはめちゃくちゃどうでもいい葛藤の話。でも実はこの世界って、ほとんどがこういう取るに足らないような会話や悩み、葛藤でできていると思うんです。そうした小さな出来事をコントや映画で描くことで、この世界がとっても愛らしくなるということが実際にあると思います。

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Photo:Masahiro Nishimura(for Mr.Imaizumi) Composition:Kohei Hara

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