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『素晴らしき哉、人生!』は本当に大好きで、もう3回くらい観ている映画なんです。初めて見たのは2018~19年、確か上京したての冬、レンタルショップに行ってDVDを借りて観ました。今回また観直しても、やっぱりステキでした! 今年のクリスマスに、もう一回観ようと思っているくらい。何度観ても新しい発見があるし、何度でも感動してしまう映画なんです。
『素晴らしき哉、人生!』デジタル・リマスター版
4K Ultra HD+ブルーレイ: 6,589円 (税込み)
Blu-ray: 2,075 円 (税込み)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
一気に惹き込まれるファンタジー設定。自殺しそうな主人公を救えるか?
最初の始まり方から面白いんです。星空だと思って見ていると、星同士がしゃべっていて、実はその星たちは天使なんです。天使の上司なのかな(笑)、さらに上の位の天使から、まさに今、自殺しようとしている人を救う、という課題を言い渡されて、天使が地上に降りてくるという始まりなんです。その視点が、まず面白かったです。
そして死のうとしていた男・ジョージのこれまでの人生が、少年時代から映し出されていきます。腕白坊主の少年時代、ジョージは雪の湖に落ちて弟を助けて、自分は片方の耳が聴こえなくなってしまいます。
また、少年時代から薬屋さんでアルバイトしているのですが、ある日、店主のお爺さんに誤解されて、ジョージが平手打ちされるんです。これらのエピソードはすべて、大人になってからのクライマックスの伏線になっていて、すべてが計算されていて、すごく上手いなと思いました。今の時代からすると、店主に平手打ちでパシ~ンと強く叩かれるシーンは、ちょっと衝撃でした。
誰かのために夢をあきらめる、優しすぎるジョージの人生は幸せなのか?
青年に成長したジョージは、小さな町で住宅金融会社を営む父をすごく尊敬しているけれど、もっと広い世界に出たいとも思っていて、お父さんの方も長男のジョージを町から出してあげたくて、都会の大学に進学することになるんです。その辺りの父・息子関係も、すごくリスペクトがあって素敵だなと思いました。でも、なぜかいつも町を出ようとすると、ジョージは何かとの板挟みになってしまって実現できないんです。
真面目だけれど堅物というわけではなくて、ちょっと可愛いジョークを仕掛けたりするのも面白いんです。例えば、メアリーという女性と恋に落ちるんですが、ちょっとしたいたずらをしたり、パーティのダンスのシーンも仕掛けがあってハラハラしちゃう。ユーモアがあって楽しいんです。
メアリーが好きだとハッキリ気づくシーンも、面白い。メアリーの家に立ち寄った時に、ニューヨークにいるお金持ちの友だちから、メアリーに電話がかかって来るんですよ。メアリーのお母さんはメアリーに裕福なその友だちと付き合って欲しいから、ジョージとメアリーをメチャクチャ邪魔する(笑)。2人が電話に耳をそばだてて、顔がすっごい近づいてドキドキして……というシーンも可愛かったです。
そして2人は結婚して新婚旅行に行こうとするんだけれど、またも大変な事態が。その日は、世界恐慌で銀行が閉鎖されたと騒ぎになって、町のみんながジョージの住宅金融会社に集まってくるんです。それで顧客に「200ドル解約させてくれ、今すぐ金をよこせ」とか言われちゃって。もう、無視して新婚旅行に行っちゃいなよ、と思ったけれど、ジョージはまたも板挟みになって出発できないんです。
大勢の人に押しかけられてジョージが困っていると、なんとメアリーが新婚旅行代を「ここに2000ドルあるから使って」と差し出すんです。それもスゴイなって思ったけど、町の人もまた「今どうしても必要なのは20ドルだ」「私は17ドル50セント」って、ジョージのためにできるだけ小さい金額を言うシーンも、すごくいいんですよ。
街の人のために新婚旅行に行けなくても、理解してくれる妻と友がいる
その晩、旅行には行けなくなったけど、メアリーは、内緒で手に入れた思い出の空き家で、ジョージのためにサプライズ・パーティを企画しているんです。もう完璧じゃないですか! きっとジョージの昔からの友だちの警官やタクシー運転手も一緒に手伝ったんだろうな。腕白少年たちが大人になって、職業もみんなバラバラだけど、地元の友だちとずっと仲がいいままっていうのがすごく温かくて。
ジョージは終盤で、天使に「自分がいない世界」を見せられるんですけど、この温かさがあるからこそ、友達だったはずの町の人々に「あんた誰?」みたいなことを言われるのが衝撃的で、それも上手いなって思いました。
ジョージがお父さんの住宅金融会社を継いで、町をどんどん住みやすく開拓しているのが、すごく夢ある仕事だなと思ったし、それが人のためになっているのがいいなぁ、って。何度も板挟みにあって色んなことをあきらめてきたけれど、そうして人のために働いてきたことが巡り巡って、いつしか自分の人生が豊かになっているということに最後に気づくんですよね。その描き方がすごくいいんです。あぁ、本当にいい映画だなぁ(笑)。
今こそ天使の出番、人生最大ピンチのクリスマス!
そんなジョージと真逆の悪役、高利貸しの富豪が本当にヒドイ。ジョージとメアリーには4人の子供が生まれて、新婚の頃の空き家をきれいに直して幸せに暮らしているんだけど、クリスマスの晩、その悪徳な富豪によって倒産に追い込まれてしまうんです。色々奔走するけれど、どうにもならなくて絶望して、橋の上で命を断とうとしている――という冒頭につながります。
そこで天使が登場して、ジョージを「ジョージがいない世界」に連れ出します。ジョージがいない町は、その富豪に支配されて、みんな金の亡者みたいになって荒んでいて、もちろん弟はいないし、薬屋のお爺さんも、酷い運命になっていることが分かります。
その時、天使がジョージに「一人の人間の人生は、大勢の人生に影響を与えてるんだよ」って言うんです。本当にその通りだな、と。ちょうど僕、ひとりの人間が身の回りの10人くらいに影響を与える、というのを何かで読んでいたんです。10人って少なく感じるかもしれないけれど、その影響を受けた10人から、また影響が広がっていくことを考えると、ひとりの人生、ひとつの命って本当に大きな影響力があるんだな、と思います。だから天使の言葉の意味を余計に重く感じました。
観れば幸せに、そして“いい人”になれるハッピーな作品です!
このあとのラストシーンがとにかく最高。人とのつながりが温かくて、ひとりひとりの表情がすごくいい。あぁ、こういう生き方ができたらいいよなって、本気で思いました。やっぱり人ですよね、大切なのは人とのつながりですよね。
この作品は、以前紹介した『天使のくれた時間』にも影響を与えたそうなんです。やっぱり僕、クリスマス・ファンタジーが好きなんだな(笑)。今年のクリスマスもキャンドルをつけて、この映画を観てホカホカしたい。観ると前向きになれるし、身近な人のことを大切にしなきゃいけないな、と思わせてくれる、すごく優しい映画です。ホッコリするだけじゃなく、自分の人生によりプラスなものを与えてくれる映画だと思います。
絶対、観る前より観た後の方が、いい人になれていると思う(笑)。ラストシーンで、ジョージの小さな末の娘が言うセリフも、僕好きでした。応えるジョージの言葉もよくて。それも楽しみに観て欲しいです。みなさんも、ステキなクリスマスを!
新婚旅行をあきらめて帰った、まだボロボロの状態の家で、奥さんがささやかなサプライズ・パーティを準備しているんです。レコードプレイヤーの回転台の支柱と暖炉の火の上の棒をベルトで繋いで、チキンを回しながら焼いているんですよ(笑)。うわ、その発想スゴイなって。そのハンドメイド感が温かかったし、ユーモアや面白さも感じられて、すごくロマンチックで。
その時の撮り方も、外から影が見えていたり、すごくよかったですね。そのシーンがあったからこそ、会社が倒産してピンチなクリスマスとの対比も効果的に感じられます。でもやっぱりレコードを回してチキンを焼く発想に、かなりツボりましたね(笑)。
『素晴らしき哉、人生!』(1946/アメリカ)
少年時代より頭がよく周りに頼られてきたジョージは、小さな町を出て念願の旅行と大学進学の夢を叶えることに。ところがその矢先、住宅金融会社を営む父が急死。悩みながらもジョージは父の会社を継ぎ、町の困った人たちを助けることにする。そんな彼をずっと思い続けて来たメアリーと再会したジョージは、ようやく自分も愛していたことに気付き、2人は結婚。新婚旅行に旅立つ日、今度は世界恐慌の煽りを受け、銀行からお金をおろせなくなった人々がジョージの会社に殺到し……。アカデミー賞3度受賞の巨匠フランク・キャプラによる不朽の名作。出演はジェームズ・スチュワート、ドナ・リードほか。
今年は僕、クリスマスツリーを買いました! ちゃんとオーナメントもつけて部屋に飾っています。LED電球を巻きつけてピカピカしながら、そこで台本を読んでいます(笑)。というのも、まさに今、来月からのドラマ『闇バイト家族』の撮影をしているので。撮影は走るシーンが多く、毎日リアルに走っています。走っては足のマッサージをたくさんして、日々頑張ってます!
Text:Chizuko Orita
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