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第9回
展示はキュレーターなくして語れない!
10月7日から金沢21世紀美術館で、僕もキュレーターとして参加している「DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)―次のインターフェースへ」展が始まります! 今回はその展示と、美術館の企画展ができるまでをお話しします。
展示の大枠が決まったのは、2021年に現在の長谷川館長が就任したとき。4か年計画で2023年のテーマは「アート&テクノロジー」に決まりました。その中で今回の展覧会が決まったのは、約1年前。館長主導のもと、4名のキュレーターでそれぞれ作家を担当してひとつの企画展をつくることになったんです。
デジタル技術の見本市ではなく、身近なこととして体感してもらえるように、衣食住におけるデジタルはどういうものなのかを感じられる展示をつくりたい。「デジタルの惑星における生き方」を探求する展覧会をイメージし、このタイトルになりました。
キュレーターが企画展で担う役割は多岐にわたります。まずはアーティストリサーチを行い、この企画でどんな作家に出展してほしいかを調べ、プレゼン。展示全体の中でどんな役割を果たすのかバランスを見ながら考え、リサーチと並行してオファーを進め、さらにお金の交渉も。出展作家が決まり始めたら、プラン策定です。プラン策定とは、作品をどのように展示するかを計画すること。キャプション(作品の解説の文言)、ハンドアウト(展示会場で配布する解説書)の作成も行います。現代美術の場合、作家に新作の制作を依頼することも多いので、その場合はファンディング(資金調達)を考えるのも重要な仕事。展示の内容が固まり始めたら、Webやフライヤーのデザイン、関連のワークショップの企画など広報について考えます。その次は、設営の準備です。アーティストのアテンドやオープニングイベントの準備など。
そしていよいよ会期スタート! 始まってからは、来場者の方が安全に快適に観覧できるようアップデートしていきます。例えば、ものすごい行列ができてしまうときはどうオペレーションすればいいか、作品をどう守っていけばいいのかなどを考え実行します。展覧会はできたら終わりではなく、より理解して鑑賞してもらいたいので、トークショーなどさまざまなイベントも開催していくんです。
これらの仕事は、他の美術館スタッフや外部の方との連携が不可欠。広報や経理は美術館の他部署の力を借りますし、監視や翻訳は外部の専門の方に依頼します。設営はインストーラーと呼ばれる設営業者の方と相談しながら進めます。そのすべての人と関わり合い、考えるのがキュレーターの仕事。作品のよさを伝える、作家の代弁者になるということが一番の仕事なので、大変でもきちんとコミュニケーションを取るようにしています。
特に思い入れがあるのはオーストラリアの作家、ジョナサン・ザワダの作品(下)。
一見風景画ですが、人間の染色体情報を変換して描かれています。この絵画から展開される新作インスタレーションは必見。もうひと組は日本の映像コレクティブ・MANTLE(マントル)の作品(下)で、これも新作。
落雷の自動生成シミュレーション映像を展示する予定で、最終的な結果は誰にも予想できません。
もちろん多くの人に展示を見てもらえたらうれしいですが、それよりも来た人にしっかりと何かを持ち帰ってほしいという気持ちのほうが僕は強いですね。今回キュレーターも作家も80年代以降生まれと、若いチームによる、型破りな展示になっています。ぜひ体感しに来てください!
DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)―次のインターフェースへ
身体と一体化するテクノロジーを体感できる展示。他の展示作家は、アンリアレイジ、河野富広など。
期間:10月7日〜2024年3月17日 10:00〜18:00(金・土曜〜20:00)
休館:月曜・年末年始
料金:一般¥1,200(¥1,000)、大学生¥800(¥600) ※( )内はWeb販売料金
髙木 遊
1994年、京都府生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floorキュレーターおよび金沢21世紀美術館アシスタントキュレーター。実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。
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キュレーター髙木遊のアートってサイコー!!