▼ 広告枠 : front-page archive singular : header ▼

池松壮亮と若葉竜也。1歳違いの役者どうし、愛と仕事とラーメンの話。【映画『愛にイナズマ』スペシャル対談】

池松壮亮と若葉竜也。1歳違いの役者どうし、愛と仕事とラーメンの話。【映画『愛にイナズマ』スペシャル対談】

▼ 広告枠 : singular : article-top ▼

▼ WPの本文 ▼

10月27日(金)に公開される映画『愛にイナズマ』。『舟を編む』『映画 夜空は最高密度の青色だ』などを手掛ける石井裕也監督のオリジナル作品となる本作は、アフターコロナの理不尽な現代を舞台に“愛”と“正義”と“絆”のイナズマで社会をぶった斬る物語。

社会派でありながらラブストーリーや家族の絆、ユーモアが散りばめられた、本当の意味で“笑って泣ける”この映画で、兄弟役を務めているのが池松壮亮さんと若葉竜也さんだ。

映画界屈指の実力俳優ふたりだが実は本作が初共演。年齢も1歳違いで、年下の池松さんが兄役を演じているのも興味深い。初対面の印象から撮影中のエピソード、互いの魅力について真正面から語ってもらった。

SPECIAL INTERVIEW

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の池松壮亮さんと若葉竜也さん1

近いところにいるようだけど、これまではタイミングが合わなかった

——まずはお互いの第一印象を教えてください。

若葉 こんなに穏やかな人だと思わなかったですね。僕の勝手なイメージですけど鋭利なイメージ。でも実際は全然違って。穏やかで現場の音を敏感に聞いている人でした。

池松 なぜかいつもそう言われます。頑固ではあると思いますが(笑)。若葉くんは、これまで作品を通してさまざま観てきましたが、非常に心が柔らかくて、その場の風景を背負うことができるような数少ない俳優さんだと感じていました。お互いに若い頃から長く俳優をしているけれど、これまでなかなか出会う機会がありませんでした。

若葉 共通の知人はいましたけどね。

池松 近いところにいるようだけどタイミングが合わなくて。今回初共演で兄弟となって、ぐっとご縁を感じています。


若葉 一度だけ、(『愛にイナズマ』の)撮影の後に偶然会ったことがあったよね。僕が表参道で車の駐車料金を払っている時に、見覚えがある車が通って。「あ、池松くんだ!」って、手を振ってね。

池松 そうそう(笑)。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の池松壮亮さん1

第一印象「池松くんはとにかくチャーミング」「若葉くんはとてもクレバー」

——撮影を経て、お互いの印象に変化はありましたか。

若葉 とにかくチャーミングです。 誰よりも映画に対して、作品に対して、映画の未来に対して思いがある。怒りももちろんある。僕のまわりには池松くんのことが好きな人がいっぱいいるんです。仲野太賀もそう。みんなが池松壮亮という男に熱狂しているのはすごく理解できます。

池松 若葉くんは、とてもクレバーな人です。喋っていても頭の回転が早く感度の高さを感じます。お芝居をやるとそれがさらに分かるし、お芝居もすこぶるうまいなと感じます。一緒にやっていて日々面白いなと思っていました。

——今回は兄弟役で、父親が佐藤浩一さん、妹が松岡茉優さん。その恋人を窪田正孝さんが演じています。兄弟、家族を演じる上で、事前に話したことはありましたか。

若葉 最初に話したのは、僕と池松くんが兄弟に見えるかな、ってことくらいかな。池松くんが「お兄ちゃんに見えるかな」って言ってて。僕の方が年齢がひとつ上なんだけど、モニターに写っている様子が大丈夫そうだったんで、「大丈夫そうだよ」って話しましたね。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の若葉竜也さん1

——お二人が登場するのは映画の後半部分、松岡さん演じる主人公・花子の背景をたどる家族のシーンです。長いセリフや呼吸を合わせないとできない掛け合いも多く、苦労したのではないでしょうか。

池松 終わってみればすべて幸せな時間でした。10年ぶりに家族が一堂に会(かい)すわけですから、すべてが重要なシーンで、カロリーが高いシーンも多かったので大変は大変でしたが。初日から、10年ぶりに家族を思い出していく作業が始まりました。現場で何か打ち合わせをしたということは特になく、なんとなくカメラが回っている時もいない時も同じ場所で同じ時間を過ごすことで、互いの存在を認識していくようなプロセスがありました。物語内での家族行事を一つ一つみんなで経験し、家族のようなものになっていく。ドライブやケンカ、晩ご飯。壊れていた家族を取り戻すことで、それぞれが自分自身をも取り戻していく。この世界で消えゆく尊厳や、何にも証明できない存在というものを、家族がまるごと肯定していく。そんなかけがえのないものを取り戻していくこの家族の物語が、言いようもなく好きでした。

若葉 僕もそうですね。石井さん(監督)の書くセリフって、すごく魅力的で独特な硬さ、力を持っている。だからそれを崩さないようにしたいなと思っていたので、神経は使いましたね。正直言えば、楽なシーンはなかった気がするな。


調子乗りの兄と、ストレスを溜めた弟。人間くさい家族から見える主人公の肖像

——特に若葉さん演じる雄二はセリフが少なく、表情だけで見せるシーンが多かったですよね。それぞれご自身が演じた役、池松さんは長男の誠一、若葉さんは次男・雄二について教えてください。

池松 とても魅力的な役をいただきました。石井裕也作品にはこれまでも駄目なお兄ちゃんがよく登場します。誠一は外の世界では若社長の秘書で、社会の俗物に染まりながらヘコヘコしている。あとは恐竜マニアです(笑)。馬鹿でどうしようもないけれど、10年ぶりに戻ってきた長男として、家族のため、妹のために奮闘する誠一というキャラクターが心底好きでした。恐竜の話とか、電波の話とか、本当に面白い(笑)。

若葉 「お兄ちゃん、恐竜の弁が開いた」って言ってましたね(笑)。

池松 そうそう、弁が開くと止まらなくなるんです(笑)。この物語において誠一の役割はさまざまありましたが、一つは、主人公である妹・花子という人間がどう形成されてきたのか、家族や兄弟が出てくることで花子というキャラクターの造形をもうひとつ深めることができると思いました。この家族の中でも誠一と花子は似ていて、すこぶる口が悪くて、激情型です。

弟の雄二と父親は、どちらかというと冷静かつ駄目な人で、違ったチャーミングさがあります。信仰があって目が真っ直ぐでピュアで。雄二はこの家族において母の役割を負ってきたような雰囲気がありました。一方、花子や誠一の直情的なエネルギーには、なき母の面影を感じます。外の世界では皆誰かを演じ、嘘にまみれてそれぞれが迷子になってしまっている家族でしたが、本当に大切なひとかけらを手放していない。みんななんとか正しく生きようともがいていて、どうしようもなく愛おしい家族でした。

若葉 池松くんが全部言ってくれましたね(笑)。それでお願いします。

©︎2023「愛にイナズマ」製作委員会

——若葉さんが演じた弟・雄二は、聖職者でありながら素直に感情や欲望に流されていましたよね。ケンカに加勢していくシーンの「僕も行きます!」、停電した時にこっそりビールを飲んでしまったシーンの「怖かったから」というセリフは、笑ってしまうほど愛らしかったです。

若葉 「なんでこんなことをしたんだろう」という匂いが雄二という人間にもあったらいいなと思って演じたので、意識的なものではありません。品行方正で真面目、全てが理屈どうり、そんな人では決してない。信仰に救われてきたこともあるけれど、信仰に封じ込められた部分もあったはずで、その中でノイズとか理屈じゃない言葉や行動が出たらいいなと思って演じました。


子役から活躍している二人。役者という仕事への考え方、意識の違い

——劇中では、布マスクが登場します。窪田さん演じる正夫が、国から配られた布マスクを大事につけ、それを誠一や雄二もつけて、いざという時の覆面的役割になっているのが面白かったです。

若葉 池松くんのマスク姿、最高でしたよね。撮影中は、自分もマスクをつけているからそうでもなかったんですけど、試写で見た時、すごく滑稽で面白かったです。マスクから顔がほとんど出ちゃってて(笑)。マスクを微調整する池松くんのシーンを観て久しぶりに映画館で声を出して笑いました。

池松 (笑)。でももうみんな忘れかけてますよね、マスクを付けていたあの頃のこと。あの時確かにあった悲しみとか、悔しさとか、やるせなさとか、怒りとか。コロナをともに経験しこの同時代をともに生きる、あの時マスクをつけていたすべての方へのラブレターのような映画になったのではないかと思っています。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の池松壮亮さんと若葉竜也さん2

——英語の題名が『Masked Hearts』ですから納得です。お二人は子役から俳優として活動していますが、互いに何かシンパシーを感じるところはありますか。若葉さんは以前、役者の仕事を「ちゃんと仕事をしないと、ごはんが食べられなくなる」と言っていたのが印象的でした。

若葉 役者という仕事は特別ではないと思っています。朝起きて、仕事に行って、ちゃんと疲れて帰ってくる。生活をすることに身を置いていたいんです。特別ではないという思いは、実は池松くんにも感じていて。“自分は特別”と思っている人のムードを感じないというか、どうですか?

池松 どの職業も同じだと思いますが、俳優も続けることが大変です。ともに長くこの世界にいることのシンパシーはありますが、いざ作品に向かえば、経験値の大小は全く関係ありません。僕は自分が特別かどうかは普段全く考えませんが、今若葉くんが言ったことに関しては、若葉くんが圧倒的に優れているところだと思います。きちんと俳優をやってきた人にしか出ないムード、俳優としての細やかな感性、そういうものを持ちながら、生活者であり続けること。暮らしとか人間的なものに反応してきたからこそ手に入れている表現が間違いなくあると思います。なんというか、ちゃんと俳優という仕事と呼吸をしてきた人。他の俳優が真似してみたり、数年やそこらで到底到達できないところにいると思います。あとは家庭的にも独特ですよね。大衆演劇をやられてきた家庭で育っているので、普通の俳優には想像できない演じることとの距離感があったのではないかと思います。

若葉 今日の芝居がダメだったらごはん抜き、みたいなこともあった変な家だったんです。「ダメだったらごはん抜きか…」っていう考えが今も根付いているのかもしれない。だからあくまで「俳優=仕事」という認識です。それが他者から見た時にちょっとドライに見えるかもしれないですね。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の池松壮亮さん2

——池松さんは「役者」という仕事を、どう捉えていますか。

池松 僕は、ライフワークのようなものだと捉えています。生きることと直結してしまっていると思います。

——他者を生きることで自分を生きる、ような。

池松 もちろんそういうことでもあるし、自分を生きることが他者を生きるということなのかもしれません。あとは創作です。日々創作している、それがあまりにも生きることと直結している。仕事の感覚があるのは今日みたいに取材の時ぐらいです(笑)。僕の仕事は俳優ですけど、世の中の仕事の感覚とはちょっと違うのかもしれないなと思います。

もともと11歳でたまたま俳優を始めて、長いこと片足を突っ込んでいて、ちゃんとやっていこうと決めたのが高校を卒業する18歳の時。そこから20代を経て、30を超えた今は、また少し感覚が変わってきていると感じています。一貫していると言えることは、1本1本の作品に向き合うこと。対作品と対観客と、対社会と対自分と。それをどれくらいの強度でやっていけるかだと日々思います。


ラーメン好きの若葉さんに池松さんが質問。「今、おすすめのラーメン屋は?」

——ではちょっと気分を変えますが、お互いに改めて聞いてみたいことはありますか? 映画でもそれ以外のことでも。

池松 若葉くん、めっちゃラーメンに詳しいんですよ。最近いいところありました?

若葉 蒲田にいいところがあるんですよ。

池松 別の作品で冬に北海道で撮影をしていたんですけど、「一番おいしい味噌ラーメンを教えて」って、言ったら東京だったんです(笑)。

若葉 北海道ラーメンで一番おいしいのは、東京にあります。でも教えて混んじゃったら嫌だな。

池松 じゃあ、3位くらいはどう? 半年に1回しか行かないところを教えて。

若葉 ちょっと待ってね……。これ映画の質問と同じくらい悩みますよね。

池松 一旦持ち帰って後日回答にしますか。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の若葉竜也さん2

若葉 一番好きな映画を教えてください、と同じくらい悩みますよね。

池松 でもみんなラーメン好きですよね。今この記事を読んでる方も映画よりラーメンのほうが気になってしまっているかもしれない。

若葉 じゃあ、一軒目は野方にある『味噌麺処 花道庵』。めちゃくちゃおいしいです。

池松 もし若葉くんがお店にいても、横目で見るだけにしてあげてください。

若葉 店主にも気づかれたくないですから。

池松 アイコンタクトまではOKにしましょう。

若葉 いや、ダメでしょそれも(笑)。できれば会釈でお願いします。そういえば、前に北海道でおすすめのラーメンを池松くんに紹介したら、ちょっと濃くて胃がもたれた、って言ってたよね。

映画『愛にイナズマ』について語る俳優の池松壮亮さんと若葉竜也さん3

池松 そうだった、お腹がびっくりしちゃったんです(笑)。若葉くんに、北海道で別の日に食べたラーメンの話をしたんです。麺が見えないくらいコーンがいっぱい乗っていておいしかったって。そうしたら「それは北海道のラーメンじゃない」って言われて、教えてくれたお店に行ったら、強すぎてびっくりしちゃって。でも、すごいおいしかったんです。

若葉 そこは2口目までが最高なんですよね。こってり系よりもあっさり系がいいとか、事前に知っていたら全然違うところ紹介したのにな。『らーめん みかん』は行きたかったよね。いつか食べに行こうって言っていて、行列してたので結局は行けなかったんだけど。


——もっと聞きたいところですが(笑)。最後にメッセージをお願いします。

池松 やっぱり『味噌麺処 花道庵』ですか?

若葉 先ほど言ったことと重複しちゃうんですけど、『味噌麺処 花道庵』に行ってほしいなと思います、って(笑)。

池松 じゃあ『愛にイナズマ』を観てもらって、味噌ラーメンの流れでお願いしましょう。

若葉 ですね、そこで感想を言い合ったり、好きなシーンについて話してくれれば嬉しいです。それで映画に真剣に向き合ってくれたことが伝わります。

FILM INFORMATION

©︎2023「愛にイナズマ」製作委員会

『愛にイナズマ』
監督:石井裕也
出演:松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市
●2023年10月27日(金)全国ロードショー
https://ainiinazuma.jp/

PROFILE

池松壮亮(いけまつ そうすけ)


1990年7月9日福岡県生まれ。03年『ラスト サムライ』で映画デビューし、以降数多くの映画に出演し、主演男優賞、助演男優賞など、多数の映画賞を受賞。主な出演作に、『紙の月』『ぼくたちの家族』(14年)、『劇場版MOZU』(15年)、『セトウツミ』『海よりもまだ深く』『デスノート Light up the NEW world』(16年)、『映画 夜空は最高密度の青色だ』(17年)、『斬、』『万引き家族』(18年)、『宮本から君へ』(19年)、『アジアの天使』(21年)、『ちょっと思い出しただけ』(22年)、『シン・仮面ライダー』『せかいのおきく』(23年)。『白鍵と黒鍵の間に』は現在公開中。
https://www.sosukeikematsu.info/

若葉竜也(わかば りゅうや)


1989年6月10日東京都生まれ。2016年『葛城事件』でTAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。2020年NHK連続テレビ小説『おちょやん』に出演し、話題を集める。人間のにおいを感じさせる豊かな演技で数多くの作品に出演。『街の上で』(21年)で映画初主演を果たす。主な出演作に『サラバ静寂』『パンク侍、斬られて候』(18年)、『愛がなんだ』『台風家族』(19年)、『生きちゃった』『AWAKE』(20年)、『あの頃。』『くれなずめ』(21年)、『前科者』『神は見返りを求める』『窓辺にて』『ちひろさん』(22年)など。公開待機作に『市子』(23年12月8日公開)、『ペナルティループ』(24年3月公開)。
https://noraweb.jp/actors/ryuya-wakaba/

Photos : Yukiko Sugawara Hair&Make-up : Fujiu Jimi
Styling : Toshio Takeda Interview&Text : Yukiko Takeda

(若葉さん) シャツ(08サーカス)/08ブック パンツ/ネオンサイン 靴(ペダラ)/アシックスジャパン
08ブック TEL:03-5329-0801
ネオンサイン TEL:03-6447-0709
アシックスジャパン お役様相談室 TEL:0120-068-806

▲ WPの本文 ▲

▼ 広告枠 : singular : article ▼

▼ 広告枠 : singular : article-center ▼

▼ 広告枠 : singular : article-bottom ▼

RECOMMEND

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-cxense-recommend ( trigs ) ▼

FEATURE

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-feature ▼

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-popin-recommend ▼

MOVIE

MEN’S NON-NO CHANNEL

YouTubeでもっと見る

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-movie ▼

REGULAR

連載一覧を見る

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-special ▼

▼ 広告枠 : front-page archive singular : fixed-bottom ▼