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海外ドラマのニュー・ウェーブとして注目されるタイドラマ。ブームの発端となったBL作品の人気は凄まじく、X(旧Twitter)の世界トレンドを席巻している。
端麗な俳優陣に、観光大国として人気を誇るタイの街並み、なめらかなリズムが心地よいタイ語の音色など、数多とある魅力の一つは、社会問題を色濃く投影したストーリーだ。
今年ヒットした『A Boss and a Babe』は、ゲーム制作会社の社長とインターンのラブストーリーを軸に、同性愛に対する偏見や、過度な上下関係、職場でのコミュニケーション、仕事のストレスによるメンタルヘルスの不調、性暴力など、さまざまな問題を提起する。
本作でダブル主演を飾った俳優のForce(フォース/ジラチャポン・シーセーン)とBook(ブック/カシデート・プルークポン)のインタビュー後編となる今回は、二人の仕事観や、社会問題に対する考えを深掘り。音楽レーベルの練習生&アイドルだった過去から、心から楽しめる演技を仕事にするまでの道のり、自分にとっての正解の見つけ方までを聞いた。
SPECIAL INTERVIEW
ーー大学では、Forceさんはデジタルマーケティング、Bookさんは化学工学を専攻していたそうですね。大学での学びは、現在お仕事をする中で活きていますか?
Book 全く活きていません!
Force 工学部だもんね(笑)。
Book 化学工学の勉強は、とにかく計算が多い。計算の知識は使えないけど…仕事をする上での心の持ち方や、モチベーションを維持するという意味では、少し影響しているかもしれません。
Force デジタルマーケティング部では、ブランディングや商品開発などを学びました。それらの知識は使えていないけれど、新しい情報を求めてアップデートしていく能力は、役に立っているかな。世界がスピーディに変化する中で、どんな場面においても順応できます。
ーーお二人が芸能界を目指したのは、いつですか? また、その理由も教えてください。
Force 初めて意識したのは、15歳か16歳のときです。ごく普通の人生を歩んでいたのですが、あるとき突然、ファッション撮影の仕事に誘われたんです。参加してみたら、たった少しの撮影で約5,000バーツ(現在のレートで約20,000円)もくれて、びっくり。「1度にこれだけもらえたら、たくさんお金が稼げるな」と感じて、芸能界に入りたいと思うようになりました。実際に入ってみると、全く簡単な仕事ではないと、すぐに気づきましたが(笑)。
Book 僕は、大学を卒業する前か、卒業した直後か…という時期だったと思います。もともと自分にあまり自信がないタイプで、芸能界で働こうなんて夢にも思っていなかった。むしろ、長く続けられる堅い仕事をしたほうが自分のためになると信じていました。でも、たまたま素敵な機会に誘われて、せっかくだからと試してみたら、すごく楽しかった! 大学の授業のように、悩みながら計算しなくていいし(笑)。心を解放できたような感覚があり、素直に楽しめたんです。
ーーForceさんは俳優としてデビュー後、レコードレーベルの練習生に。BookさんはアイドルグループCute Chefのメンバーとしてデビューしました。お二人とも、以前は歌手志望だったのでしょうか?
Force & Book (ともに手で×サインを作って)いえ、違います。
Force 練習生になったのは、事務所の先輩から誘われたから。もともと役者になりたかったんですけど、何事も試してみないと相性はわからないので挑戦してみたんです。1年ほど続けてみたものの、歌やダンスの練習を全く楽しめない自分がいて…「先輩ごめんなさい。ここは僕の居場所じゃない」と謝って、歌手デビューがかかったファイナルテストを辞退しました。
Book 僕も、歌手になりたいとは全く思っていなくて。そもそも芸能界に強い思い入れがなかったから、アルバイト感覚で活動していました。自分は何が好きで、何が得意なのかを探せたらいいな、と。色々と挑戦した方が、人生は豊かになりますから。でも実際に参加してみると、芸能の仕事は想像以上に楽しかった! アイドル活動も嫌いじゃなかったけれど、ダンスが苦手で…。とりあえず歌手はやめておこうと思いました(笑)。
Force 続かなかったとしても、試すことが大事だよね。僕も歌やダンスの練習を楽しめないと知ったおかげで、俳優やモデルの仕事をより好きになれた。役を演じているときはもちろん、CM撮影やファッション撮影などで表現をしているときは、心から楽しい!と思えるんです。
ーー真逆の人生を送ってきたお二人ですが、チャレンジ精神の強さが共通していますね! ではこれから、お二人にとって2つ目の共演作となった『A Boss and a Babe』にちなんだ質問をさせてください。
同作でForceさんが演じた上司・Gun(ガン)は、無口で厳しく、部下から恐れられる存在。対してBookさんが演じたインターン生・Cher(チェー)は、おしゃべりで天真爛漫な愛されキャラ。それぞれ、演じたキャラクターとご自身に共通点はありますか?
Force 似ているようで似ていない、と言えるかな。似ているところは、無口なところ。プライベートでは静かに過ごしたいタイプで、出かけるときも一人です。だけど仕事モードに入ると、みんなにハッピーになってもらうために、盛り上げ役になることが多い。とくにファンミーティングでは、ファンの方に幸せになってほしいので。
Book 僕もForceと同じく、似ている点もあれば、似ていない点もあります。例えば、友人グループといると思い切りふざけるところは、似ている点の一つ。Cherを演じる際、そんな自分の一面を反映させました。一方で、ひとりで過ごす休日は静かだし、1日中寝ていることもあります。
ーー本作では、部下に対しても敬語で接することで一定の距離を保とうとするGunと、年齢や立場を気にせずにコミュニケーションを取ろうとするCherという、対照的な社会人としてのあり方が描かれています。職場での人間関係を築く上で、どんなことが大切だと思いますか?
Book 丁寧な言葉づかいです。職場は仕事に集中する場だし、仕事を的確にこなすことが最重要。そんな環境を作るためにも、人間関係をないがしろにしてはいけないし、きちんとコミュニケーションを取ることは必要不可欠だと思います。
Force 僕はGunよりも、Cherのように思いやりのある人間が好きです。上司に対しては、もう少し敬意を払うべきだとも思うけど(笑)。Gunみたいなボスは、あまり良くないんじゃないかな。部下ときちんと話をして、彼らの意見を取り入れられる余白のある人間こそが、優れたリーダーだと思う。しかも、Gunは冷徹だし…。
Book Gunが部下を叱るときのような、ひどい言葉は絶対に言っちゃダメ! 僕もたまに人から感情をぶつけられると、すごく嫌な気持ちになる。感情をコントロールするのは難しいけれど、自分がされて嫌なことは人にもしない!と、強い意志で制御しています。
ーー紆余曲折を経て、恋愛関係となるGunとCher。同性と初めて恋に落ちたCherは、Gunに対して「どうやって自分にとっての正解を見つけたのか」と、男性が好きだと気づいたきっかけをたずねます。
恋愛に限らず、「自分にとっての正解」を判断して選択するのは、とても難しいことだと感じます。お二人は、「自分にとっての正解」をどのように判断していますか?
Force 恋愛は、とても美しいもの。二人がハッピーで、お互いに対して真剣であれば、意見される筋合いはないし、言われたとしても気にする必要はありません。もちろん、それぞれが属する環境によって、そう思うことが難しいこともわかりますが……自分を信じるしかない。二人が愛し合い、お互いを信用していれば、どんな障害も乗り越えられると思います。
Book 誰かにとっての正解は、本人以外の誰にも決められません。たとえ世間的な正解や基準があったとしても、そこからはみ出したっていい。恋愛とは、お互いに愛し合い、与え合いたいと感じ、お互いを幸せにしたいと思うこと。それらの感情に、性別や年齢は関係ありません。恋愛に限らず、世の中には様々な考え方があり、一つの正しい答えなんて決められないし、決めなくていいと思う。
FORCE & BOOK PROFILE
Jiratchapong Srisang
(ジラチャポン・シーセーン)
1997年3月9日生まれ、タイ・バンコク出身。Force(フォース)の愛称で知られるタイの俳優。ドラマ『That time.. Not forget』で俳優デビュー。その後、レコードレーベルの練習生として活動するもアーティストは向いていないと自覚し、俳優の道へ。2022年にドラマ『Enchanté』で主役に抜擢され、幼馴染のBookとダブル主演を果たす。同作のヒットとともに名コンビとして人気を集め、2023年に再び、ドラマ『A Boss and a Babe』でBookとダブル主演。現在、Bookと三度目の共演となったドラマ『Only Friends』が放送中。
Kasidet Plookphol
(カシデート・プルークポン)
1996年10月25日生まれ、タイ・バンコク出身。Book(ブック)の愛称で知られるタイの俳優。アイドルグループCute Chefのメンバーとしてデビュー。俳優としては『Friend Forever』などを経て、2022年に幼馴染のForceとともに、ドラマ『Enchanté』ダブル主演に抜擢される。同作のヒットとともに名コンビとして人気を集め、2023年に再び、ドラマ『A Boss and a Babe』でForceとダブル主演。現在放送中のドラマ『Only Friends』では、Forceとの再共演に加えて、First & Khaotung、Neo & Mark、といった人気コンビとの共演も話題に。
【Forceさん】ジャケット¥59,400・中に着たシャツ¥30,800/ネオンサイン[TEL:03-6447-0709] パンツ(ワコマリア)¥44,000/パラダイス トウキョウ[TEL:03-5708-5277] 靴(サンダース × コンフェクト)¥68,200/コンフェクト 表参道店[TEL:03-6438-0717]
【Bookさん】ジャケット(ウジョー)¥86,900/エム[TEL:03-6721-0406] デニムジャケット¥33,000・ジーンズ¥26,400(ともにセブンバイセブン)/サカス ピーアール[TEL:03-6447-2762] シャツ¥33,000/ギャルリー ・ヴィー 丸の内店[TEL:03-5224-8677] 靴/スタイリスト私物
Photos : Teppei Hoshida Stylist : Yoshiaki Komatsu Interpretation : Miwa Takasugi Interview & Text : Ayano Nakanishi
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