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第7回
今、世界を知るキーワードは
「コレクティブ」
アート・コレクティブという言葉、聞いたことがありますか? アーティストで形成された集団のことです。アーティストに限らず、キュレーターなどアートにまつわる多様な職能を持つ人たちの集まりを指すこともあります。日本では、Rhizomatiks、Chim↑Pomなどがよく知られています。国内外問わず、多種多様で魅力的なコレクティブが活動していますが、なぜ今、これほどに注目を集めているのでしょうか。
アーティストは新しい視座や、世界の見方を提示することを求められていますが、世界がどんどん複雑になる中でそれをひとりで行うことが難しくなっています。ひとりではこの世界に太刀打ちできない、だから集団でそれに向かおうという流れはコレクティブが存在感を増す理由のひとつだと思います。集団だからこそセンサーが増えて、関わる人間も増えて価値観も増える。それによってその時代の体温みたいなものをちゃんと察知して、表現とか潮流をつくっていける気がします。そしてコレクティブで培ったことを、個人の活動に還元していけるのも強みかと。
アーティストだけでなくキュレーターの場合も、同じことが言えます。今、本当にいろいろなアーティストが発信をしていて、僕個人としてはそれをひとりでは処理しきれないと感じているし、自分の価値観だけで選ぶのではなくていろんなアンテナを使って展覧会をつくる必要性も感じています。そのほうが展示に深みも生まれますしね。
僕もHB.というキュレートリアルコレクティブに所属しています。活動内容を具体的に言うなら「アートスペース運営」や「展覧会をつくること」。HB.で立ち上げ、運営などに関わったアートスペースはHB.Nezu、The 5th Floor、TOHとかなり多いと思います。なのでアートスペースのあり方には常にセンサーを張っているコレクティブだと自負しています。コレクティブによっては役割を分けて何かをつくることもあると思うのですが、僕たちの場合は普段個人としての特性とか役割からいったん解放されるみたいなところがあるので、各々(おのおの)が役割を毎回変えていることが多いです。アイデアがまとまらないタイプが集まっているので、いつもぐちゃぐちゃ言っている感はありますけど(笑)。
次に僕たちが手がけるのは、7月27日に東京・東銀座の歌舞伎座タワーにオープンする『マイナビアートスクエア』のこけら落としの展示です。タイトルは「Happy Birthday(仮)」。今回の展示コンセプトの出発点は、「ホワイトキューブを再考する」です。今、東京では新しいアートスペースが勃興、乱立しています。どのスペースの壁も白い。ひとまず壁が白ければいいだろう、それがアートスペースだろう、みたいな現状に問題意識があり、新しいスペースのこけら落としだからこそ、そこをじっくり考えたいです。インストーラー(作品の展示と施工を請け負う仕事)の会社・TRNKと一緒に展示を行うのですが、これもある種のコレクティブの協働が生み出す展示になりそう。HB.の名前の由来はHappy Birthday.の略。アートスペースを運営していた際、そこに人が住んだり、展示をしたり、作品が生まれたり、そんな出来事を祝福したいというのが由来なんです。だから今回も新たにできるスペースを祝福し、プレゼントを贈るような展示にしたいです。ぜひ観にきてください!
「うららか絵画祭」展示風景
作品:[左]小林正人[右]加藤 泉 Photo:Yuu TAKAGI
HB.が今年3月に企画した「うららか絵画祭」での様子。
僕が所属するコレクティブ、HB.です。メンバーは僕(左)、キュレーターの三宅敦大(中)、アーティストの立石従寛(右)、これに現在ライターの月嶋修平を加えて4人で活動しています。当初はスペース運営をするための雅号でしたが、現在はさまざまな職能を持つメンバーが共同でキュレーションを行っています。
髙木 遊
1994年、京都府生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floorキュレーターおよび金沢21世紀美術館アシスタントキュレーター。実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。
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キュレーター髙木遊のアートってサイコー!!