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コミケをはじめとしたイベント出演や写真集の販売で驚異的な人気を誇り、これまで趣味と考えられていたコスプレを職業にした。その活躍ぶりはすさまじく、2021年、2022年と2年連続でカバーガール大賞を受賞するなど、今や誰もが認める日本一のコスプレイヤーである。今年6月に発売されたメジャー第2弾となる写真集『えなこ cosplayer 2』が現在大ヒット中。「コスプレイヤーの地位を上げたい」「コスプレイヤーがまだやったことがないことに挑戦したい」。そう語るこの人にインタビュー。
えなこさん
COSPLAYER / ENAKO
1月22日生まれ、愛知県出身。中学2年のときに、コスプレの楽しさに目覚める。
現在はグラビアだけでなく、タレント、歌手、声優としても活躍。2020年、内閣府より「クールジャパン・アンバサダー」に任命。
趣味はコスプレ、カラオケ、アニメ観賞、音ゲー。SNSの合計フォロワー数は500万超。
文化放送 超!A&G+『えなこの○○ラジオ』(毎週日曜15時〜)に出演中。
キャラクターの解釈は人それぞれ。
だから、コスプレに正解はない
―『えなこ cosplayer 2』が絶賛発売中です! 今回は12作品14キャラクターのコスプレを披露していますが、見どころはどこですか?
えなこ 私の仕事のスタイルとして、餅は餅屋だと思っているので、グラビアとかの仕事のときは基本的にすべてお任せしています。「これがいい」とかそういうことは本当に思わないんですけど、趣味でコスプレの写真集もつくっていて、そっちは自分で編集やレタッチも全部やっているんですね。今回の『2』も、本来なら餅は餅屋スタイルでやるはずなんですが、やっぱり私はコスプレイヤーなので、前作よりももっとコスプレイヤーとして関わっていきたいなと思って、目や髪の毛のレタッチ作業とかけっこう参加させていただきました。そこはこだわりというか、見てもらえたらうれしいです。
―大変だったんじゃないですか?
えなこ 締め切りが明日までというときもあって、朝からテレビのロケをやって、夜には長野に行かないといけないから、合間の数時間で大急ぎで作業したこともありました。あのときはめちゃめちゃ大変でしたね(笑)。
―実際のコスプレで大変だったキャラクターって何だったんですか?
えなこ どれも大変だったんですが、いちばん難しかったのは『ワンピース』のハンコックですかね。そもそも私の顔的に大人美人というのが得意じゃなくて、しかもハンコックって身長が191㎝あってめちゃめちゃ高いじゃないですか。私は154㎝なので、そこをカバーするのに撮影方法とか、カメラの位置とか、とにかくいろいろと表現を工夫しました。
―コスプレって難しいんですか?
えなこ 難しいです。コスプレって元の作品はあるんですけど、正解ってないんですよ。全員が共感してくれるキャラクターのコスプレってなかなかなくて、それこそ人によってキャラクターの解釈って全然違うので。例えば、同じ金髪のキャラでもちょっと黄色めの金髪をイメージしているのか、オレンジめをイメージしているのかで違ってきますし、100人いたら100通りのキャラクターの解釈があります。今回の写真集でも、ウィッグは自分でメーカーとか色とかすべて指定してやったんですけど、私の中では「うん、これがこのキャラクターだ」と思っても、見ている人によっては「いや、このキャラクターの髪の毛ってこうだよね」というのは絶対あるので、そこはちょっとドキドキです(笑)。
―作品のファンが多ければ多いほど、それぞれのイメージするキャラクター像もいっぱいありますからね。
えなこ そうなんです。だから、「このキャラってもっとこうじゃないの?」とか言われると、「うわーっ」となったりすることもあります。けど、コスプレって最終的には自己満足の世界だと思っているので、たとえそんなふうに言われても、「でも私は、このキャラクターはこうだと思っている」という感じで自分が満足していればそれでいいと思うんです。とはいっても、やっぱりその作品の作者さんに褒めてもらえたらコスプレイヤーとしてはすごくうれしいです。「神様に褒められたー!」って思います(笑)。
自分と同じ仲間がいて、
自分をさらけ出すことができる
―ところで、えなこさんがコスプレを好きになったきっかけは何だったんですか?
えなこ 中学生のときにアニメとかマンガが好きになって、そのときにたまたま中学の友達が先にコスプレとかもしているオタクちゃんで、その子に誘われたのがきっかけです。
―初めてのコスプレは覚えてます?
えなこ 覚えてます。初めてやったのは、『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒです。宅コスっていうんですけど、家でひとりでやりました。
―そのときの写真とかって残っているんですか?
えなこ ないんですよ。当時は写真を撮るという概念を知らなかったんです。大好きなキャラクターの衣装を着て、そのキャラっぽくなっていることに十分満足しちゃって。
―初めてコスプレをしたときの感情とか感覚ってどんな感じでした?
えなこ 不思議な感覚でしたね。子どもの頃、ハロウィンでお姫さまのドレスを着させてもらったことがあるんですけど、そのとき以来の感じというか。うれしいんだけど、恥ずかしいという感覚がありましたね。
―そこから一気にコスプレの世界にハマっていったんですか?
えなこ そのときは全然で。徐々に友達に誘われて一緒にイベントに行くようになってハマっていった感じです。今もそうですけど、私はすごく人見知りで恥ずかしがり屋で、それこそ授業中に先生に当てられるだけで顔が真っ赤になるぐらいでした。でも、イベントに連れていかれるうちにそういう恥ずかしさとかがなくなって。あの頃は今以上にコスプレに対して偏見があった時代で、私もコスプレをやっていることは隠していましたが、イベントに行くと自分と同じ仲間がいて、そこでは自分をさらけ出すことができる。楽しいと思える居場所ができて、どんどんのめり込んでいきましたね。
「自分でやるということを
面倒くさいと思うようになったら終わり」
―コスプレイヤーとして生きていくと決めたのはいつ頃なんですか?
えなこ 「これで生きていくぞ」とか「仕事にしよう」と思ったことは本当にないんですよ。ただ、転機でいうと、5~6年前に今の事務所の社長の乾(曜子)さんと出会ったのが大きいです。その時期は普通に就職しようと考えていたので、本当にすごいタイミングでいい出会いがあったなと思います。
―コスプレイヤーとしての自分の強みって何だと思いますか?
えなこ 全然そんな強みとかないと思うんですけど、強いて言うのであれば自分でやるということですかね。衣装も自分でつくっていましたし、ウィッグも自分で選んでいますし、メイクも自分でやっています。私の場合、自分でやるということが大事だと思っていて、そこをおろそかにしたり、面倒くさいと思うようになったら終わりだなと思います。
―チャンスがあればやってみたいことって何かありますか?
えなこ 私、動物が好きなんです。いつか動物と一緒にグラビアをやれたらいいなと思っているんですけど、だからといって無理やりやらせるようなことは絶対にしたくないので、難しいですよね。
―一緒にグラビアをやりたい動物は何ですか?
えなこ カワウソです。ファンの方に、「えなこちゃんってカワウソに似ているよね」と言われてから、すごく好きになって、いつか共演できたらうれしいです(笑)。
実際に会って話をすると
「全然印象違うね」って言われる
―普段は何をしているときが楽しいですか?
えなこ こんなこと言うとあれですけど、仕事をしているときがいちばん楽しいです。本当に趣味が仕事になった感じで、毎日が土日みたいな感じなんですよ(笑)。仕事以外で言うなら休みの日にベッドで一日だらだら過ごすのが好きかな。ご飯もベッドで食べて、ベッドを出るのはトイレに行くときだけ。そういう何もしない過ごし方は好きですね。
―難しい質問だと思うんですけど、「実は私ってこうなんです」っていう部分があれば教えてください。
えなこ えー、何だろう。私、SNSでたまに反論したりすることもあって、そのせいもあると思いますが、「気が強いんだね」みたいなことを言われることが多いんです。でも、実際に会って話をすると「全然印象違うね」って言われます。「もっと怖い人だと思っていた」とか、私からしたら「えー!?」って感じで、めちゃめちゃ誤解されてるなって思います(笑)。あと、コスプレをしていると承認欲求が強いタイプと思われがちですけど、そこもちょっと違ってて。もちろん自分がすごく頑張ってコスプレしたので、それを見てほしいという気持ちはあります。ただ、それってイラストレーターさんがイラストを描いてアップするのと同じようなことだと思うんです。コスプレが好きで、いいコスプレができたから見てほしい。そこにヘンな承認欲求はなくて、もしあるなら起きてから寝るまで毎日写真を撮ってアップしていると思います(笑)。
―えなこさんの登場によってコスプレに注目が集まり、確実に裾野は広がったと思います。コスプレを職業とするプロコスプレイヤーとして意識していることや気をつけていることは何かありますか?
えなこ おかげさまで今でこそ毎日のように仕事がありますけど、コスプレイヤーとして活動を始めたときは全然仕事がなかったんです。それでも頑張ってちょっとずつ仕事をいただけるようになって、その中には初めて経験することもいろいろありました。そういう場面で私が何か失礼なことや失敗をしたら「やっぱりコスプレイヤーってダメだな」って思われちゃうわけです。私のせいでコスプレイヤーというジャンル自体に傷がついてしまうのは絶対にイヤなので、とにかく恥ずかしくないようにちゃんとしようっていうのはありますね。
―すばらしいですね! ちなみに、コスプレをやめようと思ったことはあるんですか?
えなこ ないです。年齢的な問題でいっても、私より年上でコスプレを楽しんでいる方はたくさんいらっしゃいますし、逆に年齢を重ねたほうがやりやすいキャラクターっていっぱいいるので、「コスプレがもう楽しくない」とか「もうオタクをやめた」とかでもない限りずっと続けていくと思います。
―野望みたいなものって何かあったりするんですか?
えなこ 私がコスプレ始めた頃って、コスプレの趣味をわかってもらえなかったり、偏見の目で見られたりしたことがありました。その頃と比べたらだいぶいい環境になってきたと思いますけど、私としてはもっとコスプレイヤーの地位を向上させたい。そのためには、コスプレイヤーがまだやったことがないことに挑戦したいなって思っています。そうすることで、コスプレイヤーの可能性をもっともっと広げていけたらなって。
『えなこ cosplayer 2』
数々の大人気マンガやアニメなどのコスプレのみで構成された1stメジャー写真集『えなこ cosplayer』から4年。待望の第2弾となる今作は、『銀魂』『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ドラゴンボール』『NARUTO』『ONE PIECE』など、12作品14キャラのコスプレを披露! まさにコスプレイヤー・えなこの本領発揮ともいえる1冊となっている。
撮影:桑島智輝
¥3,300/集英社
Photos:Teppei Hoshida
Composition & Text:Masayuki Sawada
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