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本誌で「骨まで染みる怖い漫画」について語っているTaiTanさんが、サマームービー特集にも登場! 画面を飛び出して実社会をも脅かす、危険な「骨染映画」を語り尽くす。
ホラー映画はあらゆる角度から
僕たちの恐怖心をあおってくる
メンズノンノで「骨染」という漫画のコラムを担当しているTaiTanです。今回はその出張版として「骨染映画」を紹介したいと思います。
今回お話しするテーマは、「社会に介入してくるホラー映画の怖さ」です。時としてホラー映画はスクリーンを超え、僕たちが生活する社会にも介入してくることがあるんです。
「プロモーション」という形で社会に介入してきた作品が『SMILE/スマイル』です。そもそも、笑顔が感染して死んでしまうという映画の設定が秀逸なのですが、それに輪をかけて注目を集めたのが独自のプロモーション戦略でした。製作会社が実践したのは、不気味な笑顔を浮かべた出演者を、世界中のどこにでもあるカメラに映り込ませるという方法だったんです。野球の試合中継の客席や情報番組の背景で、笑顔のまま微動だにせずカメラを見つめるその表情は大きな話題を呼びました。この戦略がすごいのは、映画内の世界が、実社会の延長線上にあるのではないかと思わせる効果を生んだことです。プロモーションまで含めて作品を設計しているところが新しいですね。
『SMILE/スマイル』
©2022 PARAMOUNT PLAYERS, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES
怪奇事件の目撃者となった医師の女性。その日を境に彼女の周りで説明不可能な出来事が次々と起こる。発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント Blu-ray¥5,280[7月12日発売]
続いて『アングスト/不安』という映画です。実話をもとにしたというそのストーリーもさることながら、それ以上に興味を引かれたのが「世界各国上映禁止」という謳い文句でした。そこまで言われると、どんな恐怖が描かれているのか気になりますよね。「上映禁止」という実社会の動きが、作品の怖さを引き立てている。そういう意味で、社会へと侵食している映画なんです。ただ、最近調べてみると、配信サイトで簡単に観られるようになっていました。そのときはさすがに「観られるんかい!」と叫んじゃいましたよ(笑)。
『アングスト/不安』
©1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion
1980年にオーストリアで実際に起こった一家惨殺事件に基づいた作品。殺人鬼の異様な行動と心理状態を冷酷非情なタッチで描写した実録映画。発売・販売元:キングレコード DVD¥2,090
最後にお話しするのが『仄暗い水の底から』です。この映画はお風呂から大量の汚水が出てくるなど、とにかく水の描写が恐ろしい作品です。水は人間にとって欠かせない存在。しかし、この映画の手にかかれば、それすらも恐怖の対象になってしまうんです。普段は何げなく使っている水なのに、蛇口の奥に対する不信感をあおられてしまう。この生理的な気持ち悪さを一度でもインストールされると、もう元には戻れないんですよね。
『仄暗い水の底から』
©2002「仄暗い水の底から」製作委員会
あるマンションに引っ越した親子が不可解な足音や水漏れに悩まされ、真相に迫るうちに恐怖の渦にのみ込まれていく。監督は中田秀夫。発売元:KADOKAWA 販売元:バップ DVD¥5,170
現実社会へ恐怖が染み込んでくる「骨染映画」、気になったらぜひこの夏に観てみてください。
ラッパー
TaiTan
ヒップホップグループDos Monosのメンバー。Podcast番組「奇奇怪怪」、TBSラジオ『脳盗』のパーソナリティを務める。実はホラー映画が苦手で、怖さで涼をとる行為には懐疑的。それでもつい観たくなる作品を探している。
Photos:Kyouhei Yamamoto Illustrations:Shigeo Okada Text:Kohei Hara Shunsuke Kamigaito
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