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第6回
アート業界で働く第一歩は、
検索から!?
アートが好きになると、それを仕事にしたいと考える人もいるかもしれません。今回は僕がどうやって今の仕事に就いたか、これからアートに関する仕事に就きたい人は何をすればいいかについてのお話です。
アカデミックな場所に在籍していたので、そのコネクションで今のポジションに就いたと思われることもあるんですけど、僕は圧倒的に現場からですね! 最初にアートに関する仕事をしたのは、いわゆるバイトサイトで「アート」で検索して出てきた仕事です。検索してみてください、本当にいっぱい出てくるので(笑)。美術館やアートイベントで作品を見守る監視員のバイトでした。監視員は一番作品の近くにいるから、観に来た人に作品のことをいろいろ聞かれるんですよ。それに答えることに存在意義を感じて楽しかった。学部時代にパリに留学してフランス語ができたので、現場では通訳としても働きました。
大きな転機になったのは、2015年にKYOTOGRAPHIEというイベントでアシスタントをしたこと。これも最初は友人から募集を教えてもらって、「なんでもやります!」ってめちゃ働いていたら、いろんなことを経験させてもらえた。そこで初めて展覧会全体を見てキュレーションすることの面白さを知り、東京藝大でキュレーションを学ぶことに決めたんです。
学部や院で美術史を専攻することが、この業界で働くことにマストかというとそんなことはありません。現場から学べることはたくさんあるし、キュレーターになるのに必要な資格はありません。学芸員資格はあれば働きやすい側面はあるけど、なくてもアート業界の一線で活躍している人はたくさんいる。でも、同じことに興味を持つ同志にたくさん会えたという意味では、本当に行ってよかったと思います。院で(金沢21世紀美術館館長の)長谷川祐子さんの研究室に入ったことが、今の職場で働くことになった大きなきっかけでもあります。
東京に来てからは、人とのつながりで仕事をすることが増えました。作品の記録をするフォトグラファーやビデオグラファー、アーティストにインタビューしたり作品についての原稿を書くライター、展覧会設営など、やれる仕事はなんでもやりました。その中でThe 5th Floorというアートスペースを仲間とともに立ち上げることになり、作家と協働して展覧会を開催していくキュレーターという道を選んだんです。
多くの職種で言えることですが、自分の好きなことを仕事にするには、実践的な場で経験を積むことも重要です。アート系で働きたいけどどうしていいかわからないときは、まずサイトで出てきたアート関連のバイトをするのはおすすめ。外国語ができたら、強みになります。僕の場合は、フランスのアートが好きでフランス語を習得したんですが、自分の好きなアーティストに、その人の国の言葉でリスペクトを伝えられるのは、すごくうれしいことです!
今年の春から、若い子たちがアートの現場に触れるきっかけとして、10代が実践的なキュレーションに触れるためのクラス「CO-CURATING」を担当しています。これをきっかけにアートに興味を持ってくれる仲間が増えたらいいなと思っています。
アート業界で働くのに向いているのは、リスペクトを持ちつつ積極的に動ける人。まずはとにかく展示を観に行きましょう。あとは個性がある人。自分らしい道を歩むことが重要なので、誰かのマネではなく自分がいいと思うように動けたら最高ですね!
東京・渋谷PARCO 9階の10代の学び舎(や)・GAKUにて開講している「CO-CURATING」では、実践的にアートやキュレーションを学ぶ授業を実施。
詳細はhttps://gaku.school/class/cocurating/
画像提供:GAKU
髙木 遊
1994年、京都府生まれ。京都大学卒業、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floorキュレーターおよび金沢21世紀美術館アシスタントキュレーター。実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。
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キュレーター髙木遊のアートってサイコー!!