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編集部が気になる人に会いに行く連載「WEEKEND INTERVIEWS」。第27週は、俳優の森七菜さんが登場! 6月23月に公開する映画『君は放課後インソムニア』で、不眠症に悩む女子高生・曲伊咲(まがりいさき)を演じる。石川県七尾市を舞台に、高校生の友情や青春、戸惑いを描いた本作で、森さんは魅力的な主人公をみずみずしく熱演。そんな彼女に、注目の『君ソム』の魅力や気になるオフの日について聞いた。
役と自分を区別するために
漫画のコマを台本に貼っていた
──もともと、漫画家のオジロマコトさんが描く原作漫画の大ファンとお聞きしました。本作のどんなところに惹かれていますか?
物語の中に嘘がないところが好きなんです。物語はフィクションですが、「そんなことある!?」というツッコミどころが一つもない。「自分の隣の席に座っている子は、もしかしたらこういう経験をしていたかもしれない」くらいの近い距離感で見られるんです。「私にもありえたかも」と、自分のもう一つの高校生活を見ているような感覚で、楽しんで読んでいます。
──リアルな高校生活にすごくグッときました。森さん自身、思い入れの強い作品の映像化ですが、映画の台本やストーリーを読んだとき、どんな感想を持ちましたか?
コミックス10巻分くらいを2時間に収めるので、『君ソム』すべての物語や要素を取り揃えるのは難しいかもしれないと思っていました。でも台本を読むと、先ほど言った読者との距離感や伊咲や(奥平大兼さんが演じる中見)丸太(がんた)との雰囲気、会話といった『君ソム』らしさがしっかり感じられました。
しかも、伊咲と丸太のこれからも想像させるような物語になっていたので、すごくうれしかった。原作漫画が好きな方は、実写化ってドキドキしますよね。自分が演じるんですけど、私はすごく楽しみになりました。
──高校生の生活を切り取ったような、等身大の青春群像劇に引き込まれました。伊咲を演じる上で大事にしたことは?
原作をたくさん読んでいたので、演じているシーンに当たる原作のコマが頭に浮かんで、どうしても客観的な視点が勝っちゃう瞬間もあって。でも、お芝居するときは、やっぱりその人物の100%主観でいたいと思っているので、そこにたどり着くまでにちょっと時間がかかりました。原作の伊咲の仕草を取り入れていたのですが、そのコマを目指しすぎると踊りの振り付けみたいになって、生きている人にならないので、気をつけていました。
──原作を好きがゆえの苦労ですね。“生きている伊咲”にするために、撮影期間中にやっていたことはありますか?
自分と伊咲を区別するという意味でも、漫画のコマを印刷したものをチョキチョキと切って、台本に貼っていました。そのときも、“漫画で感じた伊咲らしさ”と“人として生きている伊咲らしさ”のバランスを考えながら見ないとなって思って貼っていて。とはいえ、何度も読んでいた漫画だったので、伊咲もシーンもいろんなことが頭にこびりついちゃっていて(笑)、それを捨てるのに時間がかかりましたね。
──そんなバランスを考える中で、森さんが共感できた部分はありましたか?
私も悩みを人にあまり言わないタイプ、だと思います。別に言いたくないわけではないけれど、どう対応していいかわからない悩みもあるし、誰に言うべきかもわからないっていう悩みもあって。伊咲も少ながらずそういった悩みを持っていたので、すぐに理解はできました。
仲良く、そして切磋琢磨できた
大切な同年代の共演者たち
──同じ悩みを持っていて、自分を飾らずに寄り添ってくれる丸太みたいな存在が近くいると、救われますよね。
そう思います。何を言ってもたぶん受け入れて、許してくれる。だから、そばにいてすごく安心しますし、ありのままの自分でいられるから、きっとこの二人はこれからもずっと一緒にいるんだろうなって思います。
──奥平さんをはじめ、同世代の俳優との共演は新鮮でしたか?
『3年A組』(ドラマ『3年A組─今から皆さんは、人質です─』)で共演したみなさんは、少しお姉さんお兄さんたちでしたし、これだけ同年代の人たちとご一緒するのは、なかなかなかったです。奥平くんも二歳しか変わらないし、クラスメートたちも歳が近い。現場の雰囲気づくりを積極的にやらなきゃと思っていたけど、みんな自然に仲良くなっていて。
そこで改めて、現場の雰囲気の大切さや共演者同士の関係の大事さがわかった気がしました。同い年のみんなで仲良く、切磋琢磨していた感じがあったので、『君ソム』の撮影は私にとって大きい経験になりました。
──W主演を務めた、中見丸太役の奥平さんとは、物語や役について何か話しましたか?
役について話すことも、「こう演じよう!」といった熱い演技論を交わしたこともなくて、ただ隙間があればずっと他愛もない話をしゃべっていて(笑)。撮影もほぼ順撮りしてもらったので──私、人見知りなのですが──お互いに仲良くなろうと努力して、どんどん近づいていっている実際の距離感が、リアルに物語に反映されているかもしれません。
──森さんの中で、奥平さんと距離が縮まったと感じたシーンはありましたか?
雨の中で伊咲が自分のあることを告白する雨のシーンで、私が思うようにできないときがあったんです。自分が漫画を読んでいたから理想がありすぎて、ずっと気持ちが固まっちゃって動けなくなってしまって、池田(千尋)監督と話して何回もやらせてもらっていました。その間、奥平くんはずっとびしょ濡れで、ブルブル震えて、本当に申し訳なくて…。
でも、私が何度もセリフを繰り返す中で、奥平くんは私のためにつねにお芝居を変えてくれたんです。誰に言われたわけでもなく、自分でそうやって行動しているっていうことに、感謝の気持ちとうれしさと衝撃と安心感が芽生えたんです。
──素敵なお話ですね。森さんが言う、“仲良く、切磋琢磨した”という言葉を理解しました。共演者のみなさんとは和気藹々(あいあい)としていらしたんですね。
序盤から和やかな雰囲気でした。原作で、クラスメートのカニ(蟹川モトコ)の実家として、「平野屋」というお好み焼き屋さんが出てくるのですが、実際に七尾にあるんです。本編ではクラスメートみんなで行けなかったので、ある日の撮影終わりにみんなで食べに行きました。カニ役の永瀬莉子ちゃんが本当に焼いてくれて、すごく楽しかったです。
七尾市の大自然と街並みが
役づくりに大きな力をくれた
──本編では、みずみずしい人間ドラマの間に七尾市をはじめ、石川県の美しい景色が映ります。原作と同じ石川県の空気を感じることは、伊咲を演じる上で助けになりましたか?
すごくなりました。私は田舎で育ったので、上京をして、東京の高校生と一緒にお仕事をしたり話をしたりするときも、田舎と都会で違う感覚があるなと思いました。もちろん、いい悪いは関係なくて、ただ違うと感じて。
なので、『君ソム』にある“田舎のおおらかさ”と“現地の高校生っぽさ”を意識しようと思っていたのですが、やっぱり七尾市で撮ることで、あの空気や景色にすごく助けられました。これだけ大自然の中にいると、みんなではしゃぎたくなるし(笑)、本当に七尾市の豊かな自然や街並み、自由な空気があったからこそ、伊咲を演じられたと思います。
また撮影した場所は、いい意味で何もないところ。東京みたいにいろいろなネオンが光っていなくて、一つの街灯の灯りで1本道を照らしている感じ。だけど、”何もない”があるおかげで、お互いのことを一番面白がって接しあえましたし、すごく作品に集中できました。
──原作者のオジロマコト先生が、「『君ソム』を実写化するなら、伊咲役は森さんに」というコメントをされています。それは聞いたときは、どんな気持ちでしたか?
本当にびっくりしました。私が『君ソム』を好きということまで知ってくださっていて、嬉しかったです。でも、撮影が始まったときはまだオジロ先生のコメントは知らず、ちょっとしてからお会いしたのですが、初日とかに聞いていなくてよかったと思いました…。このお話を聞くたびに、今でも本当に緊張しちゃうので(笑)。
──森さんが思う『君ソム』の見どころや、おすすめの見方を教えてください。
最初にも言ったのですが、伊咲も含めて登場人物は誰も嘘を言ってないところがすごく好きです。厳密に言えば、“セリフを話して演じる”という意味でフィクションという嘘はあるんですけど、俳優はみんな演じる人物の言葉を本心から言っていて、まさに漫画をそのまま現実の生活にしたような映画になっています。しかも、家族関係や恋愛、友情、先輩後輩との交流など、繊細なドラマが描かれています。なので、観てくださる人みんなに、自分が当てはまる場所をきっと見つけられると思っています。
車の中でゆっくり寝ると
心も体もすっきりリフレッシュ!
──ここからは、森さんのオフの日やプライベートについてお聞きしていきます。最近のマイブームは?
──お休みの日は、一人焼肉によく行きますね。いまから行けるお店を調べて、ふらっと。食べるのも好きですし、元気も出るし、気分転換にもなります。焼肉を食べていると、モヤモヤした気持ちも晴れるような気がするんです。
──焼肉の中でも好きなメニューは?
サンチュにタンとキムチを巻いて、ご飯と一緒に食べるのが…もう食べたくなってきました!(笑)。
──オンとオフのスイッチはありますか?
基本的にオフなので、切り替えたりしないかもしれないですね。お芝居をしているときも、わりとフラットです。
──森さんならではのリラックス方法は?
車の中で寝るのが大好きなんです(笑)。撮影期間中は、自宅のベッドだとなかなか寝られないときもあるけど、車の中だと落ち着いて寝られるんです。『君ソム』の撮影期間中もうまく寝られなかった日があって、私のマネージャーさんがホテルに帰りながら1時間半くらい私を乗せて観光をしてくれて。私はその間ゆっくり寝入って、そのあともちゃんと眠れました。
──週末のように、近々続いたお休みがあったら、どこに行って何をしたいですか?
旅行に行きたいです! ゴールデンウィークに行こうと思ったんですけど、新幹線が取れなくて…。ドラマで共演した出口夏希ちゃんと京都に行こうと話していたんですが、混んでいるみたいなので、改めて新しい企画を立てようと思っています!
森七菜|NANA MORI
2001年8月31日生まれ、大分県出身。17年公開の映画『心が叫びたがってるんだ』で映画初出演を果たす。19年に公開された新海誠監督の映画『天気の子』、20年の岩井俊二監督の『ラストレター』と立て続けに大作に抜擢され、注目を集める。映画是枝裕和監督が演出・脚本を担当、出口夏希とW主演を務めるNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」が配信中。7月に放送がスタートするドラマ『真夏のシンデレラ』で、主役の蒼井夏海を演じる。
公式Twitter:https://twitter.com/morinanamusic
公式Instagram:https://instagram.com/nana_mori_official/
『君は放課後インソムニア』
監督:池田千尋
出演:森七菜、奥平大兼、桜井ユキ、萩原みのり、工藤遥、田畑智子、斉藤陽一郎、上村海成、安斉星来、永瀬莉子、川﨑帆々花、でんでん、MEGUMI、萩原聖人
●6月23日より全国公開
©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会
公式HP:https://kimisomu-movie.com/
石川県七尾市に住む高校一年生の中見丸太(奥平大兼)は、不眠症のことを誰にも相談することもできず、ひとり憂鬱で孤独な日々を送っていた。そんなある日、丸太は学校で使われていない天文台の中で、偶然にも同じ悩みを持つクラスメートの曲伊咲(森七菜)と出会い、その秘密を共有する。ひょんなことから、二人が勝手に天文台を使っていることがバレてしまうが、心の平安を保つ場所である天文台を諦められず、丸太と伊咲は休部となっている天文部を復活させようと決意する。
Photos:Teppei Hoshida Hair & Make-up:Ai Miyamoto[yosine.] Stylist:Kaho Yamaguchi Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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