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同じ種類の沼にハマっていても、楽しみ方は人それぞれ。今回は、幼少の頃よりどっぷり鉄道沼にハマり、いまは「乗り鉄」と「廃線鉄」という別の嗜好(しこう)をもつ2人から、それぞれが思う魅力を語ってもらった!
乗り鉄沼
乗り慣れた鉄道も
視点を変えるだけで
風景が新鮮に!
鉄道YouTuber ひろきさん
YouTubeチャンネル「鉄道Channel」を運営。「幼少期の頃から大好きな鉄道の魅力をいろいろと共有したい!」という思いで、自身が気になる情報やチャレンジ企画、「鉄道オタクあるある」などを配信している。
YouTube動画を撮影するビデオカメラと、路線検索などスマホも多用するためモバイルバッテリーは欠かせない。幼稚園児の頃から鉄道情報を書き込んでいたノートや青春18きっぷなど紙のチケットもいい思い出だ。
ひろきさんのベスト鉄道
根室本線〈落石(おちいし)~別当賀(べっとが)〉
海岸沿いの丘に1本線路が通っていて、片側に水平線、もう片側に平野が見渡せるんです。線路の先に夕日が沈んでいく美しい光景は感動ものです!
廃線鉄沼
廃線に至るまでの
歴史にも大きな
ドラマを感じる!
鉄道ブロガー パスケースさん
全国を股にかけ、鉄道に関するあらゆる情報を発信するサイト「Pass-case.com」を主宰。「廃線を巡る旅は、鉄道に取って代わったバスなどで巡るので大変だけど、たどり着いたときの達成感と充実感はすごい!」
廃線を訪れる際に重要なバスの運行情報も載っている『JTB小さな時刻表』は毎年購入。鉄道に乗りながらひざの上でタイピングしやすい小型キーボードも必携。有志でつくられる廃線の記念切符は大事に保管している。
パスケースさんのベスト鉄道
根室本線〈厚岸(あっけし)~茶内(ちゃない)〉
落石も美しいですが、別寒辺牛(べかんべうし)川と別寒辺牛湿原を望み、より水辺を走る感覚を味わえるこの区間が好き。冬は氷結して違った顔を見せてくれます。
いろいろな“なぜ”を掘るほど鉄道の歴史にワクワクする
鉄道に乗ることを楽しむ「乗り鉄」である鉄道YouTuberのひろきさんと、廃止された路線を愛(め)でる「廃線鉄」である鉄道ブロガーのパスケースさん。彼らの対話を通して、多くの人がハマる鉄道沼の奥深さだけではなく、人が沼にハマるワケも見えてきた!
ひろき 「乗り鉄」って、ふだん通勤や通学で利用する現役の鉄道に乗って楽しめるから、手軽だし、誰でもすぐに始められる。何げなく見ている日常の風景も、“なぜここに線路が通っているのか”と思って調べたりすると、見方が変わって楽しい。
パスケース そうだよね。鉄道沼にハマる人はいろいろな切り口で楽しんでいるけど、「廃線鉄」を含めてだいたい乗り鉄から始まるからね。だから、結構本質は似ていて、単純に「鉄道カッコいい!」って好きになっても、しだいにいろいろな“なぜ”が出てきて、気になり始めちゃうんだよね。
ひろき 自分が好きなのは、神田駅の“空中走行”。あのあたりは建物が密集している関係で線路を横ではなく縦に広げて、新幹線の上を在来線が通る2段の高架になってる。ここは眺めが楽しい! これを見たとき「なぜこの路線が生まれたか」が気になって調べたもん。
パスケース うんうん、それと同じで、廃線も「なぜこの路線はなくなったのか」を考えるんだ。そうしたら、土地の歴史をどんどん調べたくなる。
ひろき 例えば、2019年に廃止された(JR石勝線)夕張支線はかなり話題になったよね。
パスケース 北海道は特に廃線が増えていて、もともと明治時代に開拓した際に線路を広げ、石炭の運搬に活用していたけど、石炭の利用が減り、産業がなくなり、人も去った時代の流れに端を発していて。そこには、かつての人の営みと歴史が絡み合っていて大きな物語がある。廃線の危機にある路線は、肌で空気を感じに行きたいな。
ひろき 鉄道沼とは「あの時代に生きていればあれに乗れたのに」って懐古しながら生きるものだと思うんだ。いま乗れる鉄道に心から感謝して、これからも乗りまくろうと思う!
パスケース うんうん、鉄道は規模も技術もどんどん変わっていくから、さっきひろきくんが言ったとおり、乗れば乗るほど知識が増えて、さらに知りたいことが増えていく。
ひろき 鉄道沼の魅力は“知らない体験を知る楽しさ”にあるんだろうね。
パスケース 沼ってそういうものだね。
Photos:Kanta Matsubayashi Composition & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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