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第4回
わからなくて当たり前?
アートの楽しみ方
音楽や映画に比べると、アートってハードルが高いですよね。そもそもアートって、作家のバックグラウンドや時代性も込みで理解するものもあり、パッと見てわかるものではないんです。僕が出会っても「わからん」と思う作品もいっぱいあります(笑)。だからひと目見て“難しい”とあきらめてしまうのはもったいない。
今回は、アートの中でも特に現代美術について考えたいと思います。現代美術の定義はいろいろありますが、現存する作家による作品は少なくとも「現代美術」だと僕は考えています。今生きている作家によるものはどこかに必ず同時代のエッセンスが入っているからです。
その現代美術を楽しむために、まずおすすめなのが特定の美術館に通うこと。美術館にはそのコレクションに方針がありますし、ひととおり見ればその作品の背景にどんなことがあったかわかるようになっています。アートを楽しむにあたって、視覚ベースなのはもちろんですが、その場の雰囲気も含め全身で感じることがすごく大切。
ただ、現代美術に特化した美術館って日本にあまり多くはないんですよね。僕が勤めている金沢21世紀美術館や、東京でも公設だと東京都現代美術館とか、数がだいぶ限られています。
どうしても美術館へ行くのが難しい場合、ほかのメディアの中に含まれたアートの要素に触れるのも楽しいかもしれません。僕はジブリが大好きで、宮崎駿は現代で最も優れたアーティストのひとりだと思っています。『風の谷のナウシカ』は「人間と自然の共存」というコンセプトが現代的かつ表現も領域横断的で、間違いなくアートだと言えます。いつか実力をつけて彼の展示をキュレーションできたら最高です!
美術館に限らず言うなら、今僕がアートを楽しみたい方にぜひおすすめしたい場所は、山梨県にあるGASBON METABOLISM(ガスボン メタボリズム)です。去年の夏にオープンしたとてもオルタナティブなアートインスティチュートで、アーティストが住み込んで作品を制作していたり、大きすぎて作家が管理できない作品を管理・展示したり、現代アートの問題を解決する意欲的な試みを多く行っている場所です。現代に生きている作家たちの非常に大きな作品を、自然の多い特異かつおおらかな場で感じることができるという点が唯一無二。次のアートの中心地として、ぜひ足を運んでみてほしいです。
美術史を学ぶことはアートを楽しむうえで、マストではありません。でも、知っていたら「過去にこんな作品があった流れでこういう作品ができたんだ」「こういう流れがあるから未来はこうなりそう」など、より作品を見る解像度が上がって楽しいですよ!
アートを楽しむのにいちばん大切なのは、リラックスすること。まずは体をほぐして、力を抜いて、自分の感覚を信じてアートに触れてみてください。世界をこんなふうに捉える人もいるんだって、新しい発見ができるかも。
敷地面積1,000㎡以上の広さを持つ巨大工場跡地をリノベーションし、アーティストレジデンシー、展示スペースのほか、作品を保管できるウエアハウスや撮影スタジオスペースなど多彩な機能を備えた多目的施設。
米林雄一「微宇音/微宙音」
YOSHIROTTEN「SUN」
Takahiro Miyahara「missing matter」
GASBON METABOLISM
住所
山梨県北杜市明野町浅尾新田12
開館時間
11:00〜17:00
休館日
火〜木曜(アポイントメント制で営業)
Instagram:@gasbon_gasbook
http://studio.gasbook.net/
撮影/岡口 巽
髙木 遊
1994年、京都府生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floorキュレーターおよび金沢21世紀美術館アシスタントキュレーター。実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。
Instagram:@yuu_takagi
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キュレーター髙木遊のアートってサイコー!!