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アーティスティックな映像やポスター、時代を捉えたセンセーショナルなストーリー…最近気になる映画に枕ことばのようについている「A24」は、オシャレでイケてる作品を多数生み出す製作&配給会社だった! ファンも多いA24の魅力や秘密を深掘り!
映画好きから見る、
A24の魅力とは??
A24沼はけっこう深い。観客として作品の面白さはわかるけど、映画に携わるプロの目には、A24はどのように映っているのだろうか。A24作品を愛するグラフィックデザイナー・大島依提亜さんから見た魅力について聞いた!
Profile
グラフィックデザイナー 大島依提亜さん
映画のポスターやパンフレットのグラフィックを中心に、展覧会や書籍のデザインを手がける。A24作品の日本版デザインを担当することも多く、最新作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にも携わる。
新しい監督や映画の見方を
紹介してくれてありがとう!
A24が配給、製作している作品のうち日本で観られるものは、配信スルーを含めて100本ぐらいあります。人気作品が多いのですが、意外に網羅的、体系的に観た人がいないのではないかと思って、去年“A24マラソン”をして、サブスクを駆使して全作観ました。そこで感じたのは、2012年の創設以来ずっと、新たな可能性のある映画を作る、配給するという姿勢を貫いている気概です。
『ヘレディタリー/継承』(2018年製作)や『ミッドサマー』のアリ・アスターといった新人監督を多く起用したり、『ウィッチ』(2016年配給)や『ライトハウス』(2019年製作)のロバート・エガースのように配給した作品の監督をフックアップして、次のA24製作の映画につなげたりしています。その一方で、『魂のゆくえ』(2018年製作)のポール・シュレイダーのように、巨匠監督に若々しい作風の映画を撮らせたりする。
さらに、ケニアの国立公園で暮らす象を追いかけた『ゾウの女王:偉大な母の物語』(2018年製作)みたいなドキュメンタリーもあったり。一風変わったキャッチーな作品を多く手がけている=感度の高い若い人向けという印象があるかもしれないけれど、実はかなり広くターゲットを据えながら、各作品でいろいろなチャレンジをしているのがわかります。
A24の魅力っていろいろあって、なかでも“監督の発掘”と“映画の新しい見方”に注目しています。例えば、『ムーンライト』(2016年製作)のバリー・ジェンキンスを世界に紹介した功績は大きい。その後も『ビール・ストリートの恋人たち』や『地下鉄道〜自由への旅路〜』など傑作を監督しています。そして、自由な作品作りや自社のオリジナルグッズの販売などブランディングを通して、「映画を製作会社で観る」という新しい楽しみ方を提案してくれました。
お気に入りの監督で作品を探すと、ひとつの傾向が強い作品ばかりになってしまうし、なんとなく面白そうな作品を無作為で選ぼうとすると広すぎる。製作会社で探すというのは、新たな映画を探究するうえでちょうどいい。その意味で良作ぞろいの“A24作品しばり”で観るのは、とてもおすすめです。映画マニアではない人にも、映画の裾野を広げることになる。この相反する功績がA24ならではのすごさだと思うんですよね。
おすすめの一作
『アンカット・ダイヤモンド』
「ギャンブル依存症の宝石商のハワードが、借金を返すために一世一代の賭けに挑むクライム映画。物語はスリリングでもちろんすばらしく、バリー同様、サフディ兄弟の作品を観られるように製作してくれた功績に拍手!」
Photo:Teppei Hoshida Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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