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『東京卍リベンジャーズ』のヒットで再び脚光を浴びることになった「ヤンキー漫画」。80年代に始まり、現在まで脈々と続いている、このジャンルはなぜ人気を得てきたのか。漫画家・大橋裕之さんへのインタビューを通じて、ヤンキー漫画の魅力を探る!
俺たちのバイブルがここにある!
あの人が語る、ヤンキー漫画愛
ヤンキー漫画に教わったのは人生観や処世術? 第一線で活躍する漫画家・大橋裕之さんは、どんな影響を受けたのか。これまで読んだ中で特に思い出に残った作品と、その好きなシーンを紹介してもらった。
漫画家
大橋裕之さん
1980年生まれ。代表作に『シティライツ』『ゾッキ』『音楽 完全版』『太郎は水になりたかった』などがある。高校時代から格闘技全般を愛し、授業中は格闘シーンの落書きばかり描いていた。
ゴリラーマン
ハロルド作石/講談社
ゴリラのような風貌を持つ寡黙な男子生徒ゴリラーマンが、ヤンキー集団と学園生活を送りながら大活躍するギャグ満載の人気漫画。
こんなに上手に「痛み」を描ける
漫画家は他にいない
作者のハロルド作石先生は僕と同じ愛知県出身ということもあり、登場するヤンキーだけでなく、小さな街で暮らす人物たちの描き方がすごくリアルだなと感じていました。
特に引き込まれたのがケンカの描写です。取っ組み合いのときの相手のつかみ方なんかは、本当にリアルそのものでしたし、格闘漫画を含めてこんなに上手に痛みを表現した漫画は他にないと思っています。例えば藤本がケンカしているシーンで、やられた相手が後ろに倒れるんですが、机に後頭部をぶつける瞬間、やられた相手ではなく、蹴った藤本の「うわっ」という表情で痛みを表現している。なんとも映画的な演出なんですが、それがすごいと思いました。このコマのつなぎ方が、とにかく痛そうなんです。
物語の終盤で、ゴリラーマンと片桐が一生懸命戦っているときに、すでにケンカを終えた下っ端たちが「あそこの喫茶店知ってる?」ってなんとなく緩んだ雰囲気の中で自然に会話が始まるのも、すごくわかるなって思うんですよね。
あとは独特の間でしょうか。編集者から「いらないんじゃない」って言われそうなコマがたくさんあるけど、今でも僕の心に強く残っているから、きっと必要なものだったんでしょう。こういうのは自分も入れがちなので共感しますし、この作品から影響を受けたところです。
漫画なのにとてもリアルで、自分もこの漫画のどこかにいるかもしれないと思わせてくれる。そんな作品はなかなかないですよね。自分もいつかこんな漫画が描けたらいいですね。
©ハロルド作石/講談社
高校を仕切る藤本の得意技は、「二段蹴り」と「ゆうれい自転車」。物語は藤本の視点で進行することが多く、事実上の主人公とも言える。友情に厚くゴリラーマンの名づけ親でもある。
Composition & Text:Masataka Kin
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