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『東京卍リベンジャーズ』のヒットで再び脚光を浴びることになった「ヤンキー漫画」。80年代に始まり、現在まで脈々と続いている、このジャンルはなぜ人気を得てきたのか。その名作の数々を通じて、ヤンキー漫画の魅力を探る!
名作とともにひもとく!
ヤンキー漫画年代記
2000年代以降のヒット作を一挙紹介!
2000年代以降
東京卍リベンジャーズ
和久井 健/講談社
フリーターとしてしがない生活を送る主人公は、ニュースで昔の恋人が殺されたことを知り自分の人生の最良の時間を取り戻そうとする。ヤンキー漫画の王道に加えて、タイムリープなどSFの要素が複雑に絡み合い物語は進んでいく。映画も大ヒット。
ナニワトモアレ
南 勝久/講談社
モテたいがために車を改造した主人公と、環状線を暴走する「環状族」の若者たちの日常や抗争を描く。作者自身も元環状族で、走り屋ならではの改造車のディテールや何げない会話がリアルに描かれている。
ナンバMG5
小沢としお/秋田書店
筋金入りのヤンキー一家に生まれたエリートが、普通の青春に憧れ、家族に内緒で特攻服を脱ぎ、正体を隠して真面目な高校に通う。だが、腕っ節の強さから気がついたら学校をしめてしまう。2022年春にドラマ化され話題になった。
ナインピークス
平川哲弘/秋田書店
父親の通夜の晩に海に落ちて22年前にタイムリープした主人公。彼を助けたのは、彼と同い年の実の父だった。一緒の学校に通うことになった主人公は父と街の頂点をめざす。2023年現在、週刊少年誌で連載が続く唯一のヤンキー漫画である。
ヤンキー漫画は社会を映す鏡
ヤンキー漫画とは80年代に始まった学園を舞台にした一連の作品を指します。誰もが知る共有風景として選ばれた学園生活の中で、ケンカ・友情・恋愛など小さな事件がいくつも起こり物語は展開していきます。
80年代後半の『ビー・バップ・ハイスクール』『湘南爆走族』のヒットを受けて、主要な登場人物のアイコンは「リーゼント」や「学ラン」で固定されていきました。「バイク」というアイテムもそのひとつです。
当時はヤンキーになることは学校で目立つための有効な手段でしたが、時代とともにヤンキー文化は廃れます。しかし、その後もヤンキー漫画が途絶えなかったのは、「リーゼント」と「学ラン」がわかりやすいモチーフとしてあったからです。
漫画の中のヤンキーは基本的に「硬派」で「純粋」。それゆえ、照れ隠しを多分に含んだ異性への興味もしっかりと描かれます。80年代に確立されたこの様式が、以降のヤンキー漫画のひな型となりました。
そもそも不良がかっこいいとされたのは、70年代の学生運動やロックンロールなど反体制への憧れから。ヤンキー漫画の主人公たちにとって制約が多い学生生活もある意味で卒業までのモラトリアムでした。
ヤンキー漫画は80年代になると、平穏な日常生活や、90年代のバブル崩壊後の虚無感も描いています。90年代後半からは、不良をそのまま半グレの道へと進ませないこと、つまり「更生」が大事なテーマとなります。例えば『東京卍リベンジャーズ』は、第1部は死んだ恋人を助ける物語ですが、第2部では裏社会の住人となったマイキーを更生させることに主題が移ります。不良とともに歩んできたヤンキー漫画は世の中を映し続けてきたと言えるでしょう。
ヤンキー漫画年代記
監修
森田真功さん
ヤンキー漫画研究家
1974年生まれ。ライター。ヤンキー漫画研究の第一人者として、ヤンキー漫画論を執筆。『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社)、『ヤンキーマンガ ガイドブック 文化系のためのヤンキーマンガ入門』(DU BOOKS)などにも寄稿している。
Composition & Text:Masataka Kin
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