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第1回
アートって、キュレーターって、
一体なに?
はじめまして。金沢21世紀美術館でアシスタントキュレーターをしている髙木遊です。この連載では、アート、とりわけ現代美術の楽しみ方を皆さんと一緒に考えていきたいです。
アートは難しい、わからない、という方もいらっしゃると思うんですが、僕も「わからん!」と思うことはたくさんあります(笑)。そんな僕がなぜ、こんなにアートにハマったのか。
最初のアートとの出会いは、小学生のとき。家にあった伊藤若冲の鶏の絵(もちろん偽物)があまりにカッコよくて、写して描いたことです。次に印象的なのは、中2の頃、家族旅行で行ったパリでオルセー美術館を観たこと。美術館って面白い!って強く思いました。
大学に進学するときに理系と文系科目の両方を学ぶため、いずれも学べる京都大学に進学しました。そこでフランスへ交換留学し、そのときに出会ったのが2015年にパレ・ド・トーキョーで開催していた「インサイド」展でした(下写真)。これが現代美術との出会い。
「ばらばらの作品をいろんな文脈・解釈でひとつのテーマにまとめて見せていくキュレーションの仕方に衝撃を受けた思い出の展示。現代美術に興味を持ったきっかけのひとつです」
Numen,Tape Melbourne.
Photo : Numen.
戻ってからは現代美術を学ぶ! と決めて東京藝術大学大学院に進学。(キュレーターの)長谷川祐子さんの下でプロジェクトを手伝いつつ、自分でアートスペースを立ち上げ、キュレーターとして活動を始めました。院を卒業後は外部のギャラリーで働きながら、自分のスペースでの展示も20本以上やって。やりきったと思ったときに“いつか自分の美術館を作るために一度は美術館で働こう”と金沢へ来たんです。
一般的にキュレーターって作品を集めて展示をつくる人をイメージするのでしょうか。ひと言でキュレーターといっても、どこで、どんな目的でそれをするかによって、仕事の内容は大きく変わります。僕はこの仕事を、アートを媒介して場を変え、そこにいる人をも変化させることと考えています。金沢21世紀美術館での仕事が今までと一番違うのは、市民に開かれた美術館だということ。今までは自分の見たいものを優先してつくってきたけれど、広く多くの人に届くようにと考え始めました。
だけど、どこでキュレーターをしても、オーディエンスのことを考え、作家と同じ目線で言葉を交わして場をつくり、観客の心を変化させるというのは変わりません。僕が考えるアートの楽しさは、作品を通してアーティストが見ている世界に触れられるということ。新しい、まだ知らない世界を見てみたい人にはたまらんと思う。わからんこともたくさんあるけど、知的好奇心を常に刺激し続けてくれて、「アートってサイコー!!」やなと心から思います。
髙木 遊
1994年、京都生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floorキュレーターおよび金沢21世紀美術館アシスタントキュレーター。実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。
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キュレーター髙木遊のアートってサイコー!!