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今回の『イージー★ライダー』は、メンズノンノの撮影で“ザ・バンド”の「ザ・ウェイト」という曲を流していたら、スタイリストの松川 総さんが、この映画で使われているよ、って教えてくれたんです。「すごくいい場面で使われているから観てみて」って。そしたら、大自然の中をハーレーで走っていて、楽しくなる本当にいいシーンでした。他にも「Born to be wild」とか知っている曲が色々と流れて来て、音楽がいいし、男2人のロードムービーで、すごくよかったです。
『イージー★ライダー』
デジタル配信中
Blu-ray 2,619円(税込)/DVD 1,551円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 1969, renewed 1997 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
ハーレーでアメリカを旅する男たちの文句なしのカッコよさ
主役は、ドラッグの取引で大金を手にした、キャプテン・アメリカというあだ名のワイアットとビリー。この2人が、ハーレーダビッドソンに乗って、L.A.からニューオーリンズを目指して旅をするロードムービーです。そこに、“自由”というものが大きなテーマになっていると思いました。ラストは衝撃的なんですが、カッコいいというか、すごくステキな映画でした。
旅の最初の頃は、農場でバイクの修理道具を貸してもらったり、昼ご飯をご馳走になったり、楽しそうな雰囲気で旅が続いていくんです。この映画を観るきっかけになった「ザ・ウェイト」という曲も、一人のヒッチハイカーを拾って、赤っぽい土の山が続く風景の中を走っていくシーンで流れるのですが、その曲調からも風景からも、心に余裕があることがわかります。すごく気持ちよさそうで「うわ~、めっちゃバイクに乗りたい~、旅に出たいな~」ってなりました。2人は、そのヒッチハイカーの目的地である、ヒッピーたちが暮らすコミューンに到着します。
少し荒涼としている風景を見て、思わずコーエン兄弟の『ノーカントリー』を思い出しちゃって、「ガスボンべで殺されそう」って一瞬怖くなりましたが(笑)、もちろんそういう展開にはならず、雄大な景色にとっても合う音楽に導かれながら旅は続いていきます。機会があったら、是非スクリーンで観たいなぁ。無骨なんだけど、どこかオシャレというか、自分たちが好きなものを好きに表現しているのを感じました。
自由を求める者を“拒絶”する社会
でも、映画が進めば進むほど、保守的な南部に近づいているということか、町も人々もどんどん閉鎖的になっていくんです。長髪でハーレーに乗って来るビリーとキャプテンは、モーテルでもカフェでも、どんどん受け入れてもらえなくなって、拘置所にまで入れられます。そこでジャック・ニコルソンが演じる弁護士に拘置所で出会って、彼の希望で、3人でニューオーリンズを目指すのですがーー。
ヒッピー全盛の時代の風俗が見られるのも面白いです。別に僕は“ヒッピー・ムーブメント”に対する憧れはないけれど、彼らの自由に生きてる感じとか、好きなものを追いかけ続けてる感じが、すごくいいなって。野宿したり、野生的な生活を送りたいわけじゃないですが(笑)、ちょっと羨ましい気持ちはあります。
ただ、そこからの展開が厳しいんです。2人は長髪だけど、本当に無害だし、いい人たちだし、とても平和的なのに、南部で遭遇する人たちは、どうしても彼らを許せず……。常識とか社会的な正しさを振りかざして、彼らに文句を言う側の人間の方が、よっぽど暴力的なんです。すごくヒステリックというか。それに対して、誰に何を言われても髪を切らない2人の姿、自分たちの生きたいように生きる姿は、やっぱりカッコいいと思いました。誰に危害を加えるでもなく、誰を傷つけるわけでもなく、生きたいように生きてるだけ、というその主張の仕方がいいなぁ、と。
でも、社会ってそういうものだよな、というのは、現代の状況を見ても感じるところがあります。“多様性を受け入れよう”とか言いながら、逆に“こういう人たちだ”って括りに入れてるようにも感じるんです。多様性という言葉によって、人を自分とは違うところに分類しているような。それって、受け入れるということとは全く違うな、と思ったりします。
本作は昔の映画ですが、今、観ても全然古くない。今の時代でも色々感じさせられる作品です。セリフにも“自由を主張することと、自由であることは全く違う”とありますが、我慢して好きなように生きられない人たちにとって、好きなことをして生きている人が脅威になってしまうんですね。きっと今ならSNSで暴言吐いたりして、人を攻撃するんだろうなって。そこにはきっと、妬みがありますよね。
求める“自由”を自由に描くから新鮮
本作は、ビリー役のデニス・ホッパーが監督、キャプテン役のピーター・フォンダがプロデューサーなんです。だから自分たちの好きなように作った作品なのかな、って。それも、すごいですよね。特に映像――街の撮り方というか切り取り方というか、ウォン・カーウァイにちょっと重なるカッコよさがあるんです。町を歩いている人たちにもカメラ目線の人がいたりする、そういうのも今観ても面白くて。
過去、現在、過去、現在みたいな同じカットが連続してパンパンパンと繰り返されたりして、最初はうちのWi-Fi環境が悪いのかと思いましたが(笑)、そういうのも遊び心なのかな。そんな映画の雰囲気も好きでした。特に終盤は、ドラッグの幻覚の表現もあって、映像の質も大きく変わるんです。とりとめなく映像がコラージュされていたりして。
終盤のその場面は、墓場が舞台になっていて、そういうのも“死”に向かっていく表現なのかな、と思いました。それも上手いというか、オシャレに見せてるのスゴイな、と。錯覚のようでもある、その映像表現の意味合いを、MEN’S NON-NO WEBで今泉監督に聞いてみたくなりました。
自由な国というイメージを持っていたアメリカですが、いろんな時代があり、いろんな問題を抱えているんだな、とも思いました。僕は日本という島国に生きていますが、もっと外の価値観を知りたくなり、海外に行きたい気持ちが強くなりました。周りの方々からも、海外に出た方がいいとよく勧められますが、外から見た日本というものを、自分の目で見て感じたいと思いました。
この映画はロードムービーの気持ちよさがあり、また歴史、文化、音楽、そしてファッションなどの要素も、みんな盛り込まれています。キャプテンを演じるピーター・フォンダがカッコ良くて、こんな変なサングラス似合うの、この人くらいしかいないよ、って(笑)。しかもお父さんが『十二人の怒れる男』や『荒野の決闘』のヘンリー・フォンダなんですね!!
好きなことをして生きているヒッピー男2人は、とっても若々しいし、いい加減そうに見えてその実、情の深さや厚さを感じたし、“人との関わりって大事だよな”とも思いました。この映画が醸すカッコ良さって、自由と反骨心から来ているのかもしれない。万人受けはしないかもしれないけれど……観て欲しいんですよね。この時代の、このカルチャーを、ぜひ感じてください!
やっぱり音楽です! バイクで走っていく背景にある景色との合わせ技で、本当に気持ち良いんです。「Born to be wild」や「ザ・ウェイト」、「ザ・プッシャー」とか、もう、この映画のサントラをかけながら、ドライブしたいですもん(笑)。どこかで聴いたことがある曲ばかりで、思わず旅に出たくなる。
“ザ・バンド”みたいな少し昔のバンドは、休日に音楽をかけっぱなしにしていて「あ、いいな」と出会うことが多いです。そこから“音楽が入口になって観た映画”も多いですね。
『イージー★ライダー』(1969年・米)
メキシコでコカインの密輸で大金を得たワイアット(キャプテン・アメリカ)とビリーは、その大金をフルカスタムしたハーレーダビッドソンのタンク内に隠す。そしてカリフォルニアを出発し、マルディグラ(謝肉祭)の行われるニューオーリンズを目指して、2人で旅に出るがーー。本作で俳優のデニス・ホッパーが監督デビュー。脚本を、プロデューサーのピーター・フォンダとデニス・ホッパー、テリー・サザーンの3人が担当している。反体制的な若者たちの心情や生態を綴った“アメリカンニューシネマ”の中でも金字塔的な代表作。
最近、寝る時に毛布がないと寝られなくなってきてしまって。寒くなってきたなぁと実感しています。お仕事も感覚的にブレないようにしようと、色々考えながら日々過ごしています。
ドラマ『silent』も今はだいぶ落ち着いて、終盤の撮影に臨んでいます。このあいだ、千鳥のお2人の「千鳥のクセがスゴいネタGP」というバラエティ番組に出させていただきました。実は僕、人生で初めてテレビに出たのが、同じ岡山県出身のお2人が僕のお婆ちゃんの家にロケに来た時なんです(笑)。その時に撮っていたビデオも、番組内で紹介したんですよ。
プライベートでは、いま再びノラ・ジョーンズにハマってます! 「silent」では、よくスピッツの曲が使われていますが、第5話で僕の役名と同じ「みなと」という曲が流れて、「みなと」も繰り返し聴いています。皆さんも体に気をつけて、冬を乗り切って下さい。
Text:Chizuko Orita
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