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メンズノンノウェブ限定の新連載「ウィークエンド・インタビューズ」がスタート! 編集部がいま気になる人に会いに行き、仕事からプライベートまでじっくりインタビュー。第一回は、劇場アニメ『夏へのトンネル、さよならの出口』に出演する俳優の飯豊まりえさんが登場!
物語の中で変化する彼女に
合わせて声を変えたかった
──本作は、欲しいものがなんでも手に入る“ウラシマトンネル”をめぐり、高校生の塔野カオルと花城あんずの交流を描く青春ストーリーです。最初に物語を読んだときの感想は?
塔野くんとあんずは、ウラシマトンネルで「何かを得るために、何かの代償を払う」ことを知ります。それぞれ欲しいもの求める二人は協力関係を結んでトンネルを調査していき、ある真実に辿り着きます。設定はファンタジーだけど、二人のやりとりや葛藤は現実離れしていなくて、むしろ共感できるところばかり。高校生が主人公の青春物語として、すごくすてきだと思いました。
──飯豊さんは今回、「絶対やりたい作品」としてオーディションを受けられたとうかがいました。
声優のお仕事にずっと憧れを持っていて、原作も知っていたので、どんな役でもやってみたかったんです。オーディションでいただいたセリフが少なかったのですが、自分が出せる声の中で、あんずのイメージに近いお芝居をボイスメモに録って送ってというやりとりを何回かさせていただきました。
──いろいろな声を試されたんですね。最終的にあんずの声は、どのように決まったのですか?
あんずの声は私の地声ではなく、自分が思うあんずの好きなセリフを台本を見て選びました。直前まで悩んでいたけど、あんずの「どいてくれる?」や「世界は断絶されてるんだ」というちょっと冷たいセリフをどういうテンションで言うのが、彼女のかわいい顔に合うのかなと考えて。また、彼女が物語の中で変化していくにつれて、声を変えていきたかったので、シーンごとにチューニングしているんです。クールに見えて、繊細な心をもつあんずは、自分とは違うキャラクターなので演じやすかったです。
──飄々とした性格で、実はここに傷を抱える塔野カオルを演じた鈴鹿央士くんとの共演はいかがでしたか?
穏やかな雰囲気の中、収録できました。そして、不思議な方だなって思いました(笑)。「衣装着てないから、気持ちをつくるのがむずかしいかも〜」と言っていたり、思ったことを口にする人で、彼もまた演じる塔野くんとは違う性格でおもしろいなって(笑)。
──カオルとあんずのやりとりの中で、印象に残っているシーンやセリフは?
遠野くんに床ドンをして「あなたが見てる世界を私にも見せてよ」って言って、彼に「味気ない世界だよ」って言われるところ。すごく好き! 本作は二人の世界がメインになっていて、これが恋なのか友情なのかわからないけど、きっとお互い忘れることができない思い出を共有しているんだなって。いましかできないことを二人でやっているという青春を感じますね。
聞く人が“心に汗をかける”
魅力的な声の持ち主に憧れる
──二人の心がつながりかけた、観ている方もドキッとするシーンでした。カオルとあんずはそれぞれ自分にとっての壁にぶつかり、現状を打開したいという思いを持っています。それを共通点としてウラシマトンネルの調査に乗り出します。これまで飯豊さんが壁にぶつかった経験はありますか? また、どうやってその壁を乗り越えましたか?
とある映画で演じることが、ちょっと怖くなってしまう出来事がありました。お芝居することが向いてないのかなと思ったりして。けれど、そのあとに「不便な便利屋」というコメディドラマに出逢って、自由にお芝居を先輩方とさせていただくうちにまた自分はお芝居が好きだ、楽しいなと再び思えることができました。そうやって乗り越えられたのは、やはり人との出会いがあったからじゃないかなと思いました。
──体を使う実写作品でのお芝居と声だけを使うアニメのお芝居の違いや難しさは?
ドラマが映画での演技では表情で伝えられる部分があります。セリフがなくても目の動かし方や間で感情が伝わるけど、声でしか表現できないので簡単ではありません。普段やっているアプローチと全然ちがいますよね。その違いも面白かったし、自分の顔の先入観なしに見られるので、顔を気にせずに思い切って笑ったり泣いたり演じられるところも楽しいんです。
『頭の中の消しゴム』という朗読劇で声優の梶裕貴さんと共演させていただいて、座ったままで2時間演じたのですが、梶さんの言葉からいろいろなことがすごく伝わってきたんです。言葉の抑揚がナチュラルで、耳にすっと入ってきて、自然と感情が動いて涙が出たんです。 “その人の声を聞くと、心に汗をかける”感覚を与えられる声優さんってすごいなと思いました。これからももっともっと声優さんをやってみたい。
──あんず役が飯豊さんだと聞かなければ、わからなかったかもしれません。声の演技をされる作品をもっと拝見したいです。これまでも声のお仕事をされていますが、声優としての軸はありますか?
これまでポケモンやポケモンマスター、年上の女性の声、海外の女優さんの吹き替えなどを、いろいろな役をいただけて、コレという得意なものがまだわからない状態です。なので、いまはとにかくいろいろな役に挑戦したくて、作品のオーディションを受けています。今回は初めて高校生の役で、また新しいお芝居ができた楽しかったです。
アニメは、そのキャラクターと私の声質が合うかのマッチングでもあると思います。学生の頃、ドラマや映画のオーディションに落ちると、「何が悪かったんだろう、身長が高いせいかな、顔が役のイメージと合わなかったからかな」と悩むこともあったけど、声はキャラクターに合わなかったんだと素直に受け止められるんです。私がもともとプロの声優ではないのもあると思いますが、公平に審査されていると感じられるのも、アニメに挑戦したくなる理由のひとつですね。
【後編につづく】
飯豊まりえ MARIE IITOYO
1998年1月5日生まれ、千葉県出身。2012年の女優デビュー以降、映画、ドラマ、CMなど数々の話題作に出演する。近年の代表作に、ドラマ『岸辺露伴は動かない』シリーズ、『君と世界が終わる日に』シリーズ、映画『シライサン』、『くれなずめ』などがある。現在、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK・月〜金曜8時〜)、ドラマ『オクトー 〜感情捜査官 心野朱梨〜』(日本テレビ系・毎週木曜23時59分〜)に出演中。
公式Twitter:https://twitter.com/marieiitoyo
公式Instagram:https://www.instagram.com/marie_iitoyo/
『夏へのトンネル、さよならの出口』
監督・脚本:田口智久
出演:鈴鹿央士、飯豊まりえ、畠中 祐、小宮有紗、照井春佳、小山力也、小林星蘭
●9月9日より、全国公開
公式HP:https://natsuton.com/
©2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会
噂に聞く“ウラシマトンネル“。そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。ただし、それと引き換えに…。掴みどころのない性格のように見えて、過去の事故を心の傷として抱える塔野カオル(鈴鹿央士)と、真の通った態度の裏で自分のもつ理想像との違いに悩む花城あんず(飯豊まりえ)。二人は不思議なトンネルを調査し、欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。
Photos:Teppei Hoshida Hair & Make-up:Akihiro Motooka Stylist:Yusuke Arimoto[NANAKAINOURA] Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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