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漫画の恐怖表現は進化が続くけど、原点に立ち返って古い作品に触れるのも面白い。その道のプロに聞いた、最恐作品が夏の夜をぐっと涼しくする!
本当に怖い
クラシックホラー漫画
漫画のプロ、書店員はながすすめる、今すぐ読むべき傑作3選!
漫画紹介
TikToker 書店員はなさん
とある書店本部に勤務するたたき上げの書店員さん。漫画作品の魅力を短く&濃く紹介するTikTokアカウントのフォロワー数は15万超え。少年コミックからホラーまで守備範囲は広い。
基本は1話完結。だからスキマ時間ですぐ寒け!
「古い漫画作品は、総じてすべてが過激。現在なら刷れないような残酷なシーンのオンパレード。映像作品ではないけど、作家さんの筆が乗っているコマや1枚絵は、もうそこから飛び出してきそうな勢いがあります。ホラー漫画の作家さんは、独特なタッチの人が多いから、特にそう感じますね。それに1990年代までの作品は1話ごとが短いのも特徴。10分もあれば、寒けがしてきますよ」(はなさん)
死んでなお蘇り、分裂し
増殖していく狂気!
『富江』
(1987)/伊藤潤二
©ジェイアイ/朝日新聞出版
『月刊ハロウィン』や『ネムキ』などで発表された伊藤潤二の代表作「富江」シリーズを上下巻にまとめたコミックス。妖艶すぎる富江に、男たちの愛憎が爆発する。
「この物語は美しくも妖しい美女、富江の死から始まります。しかし、彼女は何度でも蘇る。そんな最強生物の富江ですが、その子細を作中で一切明かさないのも面白い。僕らが読んで、富江とは何者か、と考察するのも漫画の醍醐味(だいごみ)。彼女の美貌に魅了され、狂っていく男の好意はすぐに殺意へと変わり、最後には富江が殺されてしまう。作品はこのループで構成されています。が、その変貌していくレパートリーが多すぎて、いつ読んでも新鮮なんです」(はなさん)
とんでもない不条理が
ある日突然やってくる!
『惨劇館』
(1977)/御茶漬海苔
©御茶漬海苔/グループ・ゼロ
ホラー漫画誌『月刊ハロウィン』に連載された『惨劇館』の短編集。1話完結型のオムニバスホラーで読みやすく、初心者にももってこい。徹底的な残酷描写に定評あり。
「作者自身が案内人となり、怖い話を展開していく本作。恐怖の対象が人間の場合もあれば、強すぎる悪霊、異形の魔物というパターンもある。ジャンルの縛りなく、繰り返される惨劇。現代のホラーだと、幽霊や怪物にもバックグラウンドがあり、感情移入できるところもあったりします。しかし、この作品はそういった部分をすべて取っ払っていて。抵抗の術なく女性が斬殺されたり、普通の子どもが突如怪物になってしまったり……ただただ降りかかる不条理。その瞬間の壮絶な描写は、脳裏に焼きついて離れません」(はなさん)
整合性の取れた戦慄!
少女漫画と侮るなかれ
『ゴーストハント』
(1998)/いなだ詩穂 原作・小野不由美
©いなだ詩穂・小野不由美/講談社
高校生が率いる心霊現象調査事務所「渋谷サイキック・リサーチ」が心霊現象に立ち向かう物語。不可思議な事件を心霊科学の分析と霊能力者たちの力で究明する。
「小説家の小野不由美先生のホラー小説『悪霊』シリーズが原作ということもあり、ストーリーの組み立てがとてもロジカル。主人公たちが対峙(たいじ)する霊がなぜ悪さをするようになったのか、どういう経緯で霊障を起こすのか。バックボーンがあって、伏線が回収されていく気持ちよさもある。そしていなだ詩穂先生の描く漫画の中に、突如現れる悪霊がしっかり恐ろしいのにも感服です」(はなさん)
Composition & Text:Kanta Hisajima
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